策士と策士が出逢う
私立布英讃蓮洛字学園』山の中に広大な敷地を、有している由緒正しき男子校。
体育祭の夜に行なわれるキャンプファイヤー、そしてフォークダンス、そのラストオンリーワンの相手が偶然『想いを寄せる相手』だったら、願いが叶うという、倒錯世界万歳な伝説があった。
戦いすんで日が暮れて、日中の行事は怪我人もでずに、無事に終わり、今年の優勝旗は『東寮、青の青龍』が受け取った。ちなみにながちゃんの『西寮 白の白虎』は、応援合戦では、最優秀の栄冠を獲ったのは当然な事。
今年の彼の『少しエロい衣装のアリスちゃん』と、お付きの黒兎耳兄ちゃん達を引き連れた、ペーパークラフトでつくられた、薔薇の花舞う魅惑のダンスは、歴史に残る高得点を叩き出していたからだ。
それは昨年の『ミニスカ スノーホワイトと7人の犬耳兄ちゃん達』を遥かに凌ぐ点数だった。
夜が近づく、逢魔が時、キャンプファイヤーに、生徒会長の手により炎が点火がされる。そして賑やかに話しつつも燃え上がる色が持つ、どこか厳かなそれにあてられるのか、会場に残る昼間の興奮が落ち着いて行く。
そして前もってひゅう君が作っていた、メンバー割のプリントのおかげでスムーズに4つのサークルに別れる運動服の生徒達。
「行事なので、運動服必須、音響も生徒がする事」
過去に節度を持って、フリーダムと、生徒の要望を聞いて服装を自主性に任した結果、その年はハロウィン会場と化してしまったので、著しく学園長の反感買ったのは当然な結果、そして音響云々は………
「すまないな、ながちゃん」
「あ、いいですよ、去年グランマセンセーに、選ばれたし、スイッチ入れるだけだし、土ちゃん先輩」
「そうだったな。今年は、サークルの方は段取りがいいな、ひゅうもあれこれしてくれるから、助かっている」
君はここ、次はここ、書いてある通りに並んでくださいねーと、ひゅう君が采配をしている。それを助かるな、ありがとと、感謝の目で眺める生徒会長土ちゃん。
はーん、やっぱ暗号だったし、ふーん、そーゆー事と、冷ややかに眺める後輩、ながちゃん。彼の隣に陣取っている学園長と、何やら目配せをする。
ニヤリと笑い視線を送る、盛野長康クン。受けてふふん、と老いを感じさせぬ肌艶で学園長は微笑む、やがて山ちゃんは呼ばれて、指し示された場所に入った。
「では、これより始まります、ふざける事なく、どの様な事も、全力を持ってやり遂げること!ハイ、すたぁと!」
マイクを持ち学園長の開始の合図、ながちゃんは音源のスイッチを入れた。音響と言っても、スイッチを押すだけなのだが、こういう行事は、必ず学園長の側でアレコレ雑用に回るながちゃん。
「あーあ、グランマセンセー、そういや美形が、これに選ばれるって聞きましたが、他にもいるでしょう?カッコいいのが、どうして僕なのですか?」
「は?当たり前だ、自覚が無いのかね?そもそも応援合戦のアレがいかん!発情期のインコはな、鳥籠にオスばかりだと、オスの後ろを追いかけるのだぞ、目的は一つだ、自然の摂理といえばそれまでだが………去年の盛野の手を取るための、音響係免除署名騒動を忘れたのか、たく、歴代どうしてああも、あれこれ趣向を凝らして盛り上げるのか、その中でも君はトップクラス」
ハハハハ………つい全力投球してしまうので。あー、はい、すみません、グランマセンセーと、ありきたりなフォークダンスの曲が流れる中、本部席で他愛のない話をしつつ、彼はひゅう君先輩をじっと観察をする。しばしの無言の後、紙コップでコーヒーを飲んでいる学園長に、話しかける。
「で、グランマセンセー、お願いを聞いてもらってすみません」
「ん?私は構わない、コレもかわいい生徒の為」
さて!二周目に入ったか、行くぞ盛野!と気合の入っている学園長、タイミングを見計らい1つ目のサークルに乱入をし、ながちゃんとワンフレーズ踊る。
そしてお次に回る時に軽やかに離れて、次のサークルに移動。どよめく三年生、もしかしたら最終で、奇跡が起こるかも、と恋にけぶる桃色オーラが、あちらこちらから立ち上る。
勿論ドキドキと良からぬ予感に襲われている、日向満秀、高校三年生、最後のフォークダンス。『伝説』を信じている男。
呪いにより前世を思いだし、想いを募らせ、胸を焦がしている日々、何としても、手に入れたい『土田 三郎』過去において彼の主君。
乱入は既に予測がついている。ふとした事で気がついた。『ながちゃん』は、恐らく『彼』だ。思い出しているかどうかは分からない、主君は綺麗さっぱり、何一つ覚えていない様子。
どうすればいい、どうすれば、と思いつつも進む流れ。そして、二人が割り込んで来た。曲はもうすぐ終わる。やはり!と確信をした日向満秀。
「おのれ………やはりそうだったのか!」
小声で呟く。どうなるのか、同じ様に、ワンフレーズ踊ると抜けるのか、それともと思った時、目の前にいるのは、妖艶な笑みを浮かべた後輩、盛野長康君、密かに偶然を装う様に順番を、はかっていた土田君の前には、ニッコリ笑顔の学園長のかくしゃくたる姿。
仕方無しに日向満秀は、目の前の憎き輩の手を取る。羨ましそうな視線が、彼に刺さっていたがそれに気がつくことはない。粛々と進む曲。最早彼には葬送の音色に聞える。
「ラストオンリーワンが、僕ですみませんね、偶然です、そうそう伝説が、叶っちゃたらどーしよー、て、僕じゃないですよ、僕は来年ですからね」
「ぐ………はかったか!おのれ!せっかくの、ぐぅ!」
「え?どうしたのですか?ひゅう君先輩、顔が怖いです〜、そういや先輩が寮長されてる、青龍おめでとうございます。僕と土ちゃん先輩の白虎は、応援合戦だけでしたよー、勝てたの」
「何が言いたい、くそ!お前、そうなのか?思い出しているのか?だからか?ええい、正直に答えろ」
「え?なんの事でしょうか?そうそう、このあと寮で祝賀会ですね、ふふーん、まっ、寮長として頑張ってくださいね、頑張った下級生労ってください、僕もしっかりと『土ちゃん先輩』に褒めてもらいますぅ」
「ほ、ほほほめて貰うと!嬉しいそうに言うとは!おのれ!やはりそうか!答えろ!昔の名前を述べろ」
「は?何の事ですか?先輩良かったじゃないですか、フサフサでって『キンカ』君と呼べませんよぉ、あ!曲終わっちゃった。ありがとうございました」
「ぐぬぬぬぬ!おのれやはりそうかぁぁぁ!」
笑顔で礼をする盛野長康君、それを、苦虫を噛み締めた様な顔の日向満秀君、そして何やら不穏な二人を、そうとは気が付かずに穏やかに眺める土田三郎君、
クククク、とそんな三人を、黒い笑顔を浮かべ眺める学園長、鷲山 蝶子、年齢不詳。
「学園長と最後に踊れるとは光栄でした」
「こちらこそ、生徒会長、今日はご苦労さま」
穏やかに挨拶を交わす二人。蝶子はその屈託のない少年の様な笑顔を、過去の彼と被せて懐かしく思う。
…………貴方は、生まれ変わっても変わらないのね。私はどういう訳か、先に転生しちゃったけど。ふふふ、だけどコレも運命かしら。
空は夜の帳が降りている。山の上は星が瞬く、キラキラとしたそれを、学園長は目を細めて眺めた。
仲間に裏切られ、ぼんさん道連れ世は情け、炎の中で死んでった男は全てを忘れて産まれたよ。
トトカリカの森に迷い込む、迷い子ホロホロやってきた。
花の十八、番茶も出がら 白い小袖で槍持つ美少年、しかしほんとはゴリマッチョ、そういう話もある輩。
そして好いたお方に、母親はりつけ殺され、あれやこれやのてんこ盛り、気が付きゃ兵を上げていた、男がフラフラやってきた。
おやおや、これは面白いニタリと魔女は微笑んだ。
カラカラ カラカラ 糸車。転生輪廻の物語。
お、わ、り。
あら?出てない人物が↓
聖 リーヴル・ブ・レ・インテンピオ女学院物語
お次に始まります。