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ワンダフル☆ジェネレーション   作者: 品川恵菜
stage2:吉野影斗∪吉野御影
18/18

7、透明も悪くない

〇テレビ青空Bスタジオにて


「本番入りまーす」


スタッフの声がした。カウントされ、番組のテーマソングが流れる。


「さあ、今週もやって参りました!全国のお茶の間の皆さん、こんばんは!」


MCの女性がにこやかに話し出す。


「毎週生放送でお送りする、音楽番組、゛フレッシュ音魂¨の時間です。今週もフレッシュな音楽をお届け致します!!司会は私、美作 蛍子と」


「私、冴木シンジロウでお送りします」


二人のMCが自己紹介を始め、軽めのトークの後にゲストの紹介が始まる。

僕とレンは三番目の登場。

二人で顔を見合わせ、頷きあう。

衣装は白を基調にしたラフな感じのアイドルっぽいもの。

二番目のアーティストの紹介が終わったところで、歩き出した。


「お次はこちら!!今や、国民的アイドルに大成長したワルジェネから、所謂末っ子組と呼ばれるこの二人!皆堂 レンさんと吉野 影斗さん!!」


MCの紹介を聞き、カメラに映ったところで二人で御辞儀。

歩いてる途中に構えているカメラに向かって手を振る。

これ忘れちゃうと、森坂さん怖いから。

皆で事務所で見てるって言っていたしなあ。

ミスすると後で笑いのタネにされかねない。

皆イイ性格してるからなあ。


ゲストが再び一組ずつ紹介されていく。


「ワルジェネ末っ子組宜しくね」


「「宜しくお願いします!!」」


「お二人には後程、新曲の『colorful&clear』をテレビ初披露して頂きます」


そして次のゲストに振られる。

ここまでは良し。

いや、こんな序盤で転ぶわけにはいかないんだけどさ。


「浜名 ミイナちゃん宜しくね」


自分たちから新人歌手の女の子に移った時も、真剣に聞いてなきゃ、放送されちゃうから大変なんだ。

特に、森坂さんが凄く厳しいから。


番組は滞りなく進んでいき、曲と曲の間のMCに入った。

ここではインタビューされることが多いから、ボロを出さないように注意。


「皆堂さんと吉野さんは、プライベートでも仲がよいという噂がありますが、実際どうなんでしょうか?」


「はい。芸能界入りする前からの親友ですね」


マイクを向けられたレンがニッと笑って言った。

続いて僕にマイクが回ってきた。


「レンが居なかったら、多分僕は芸能界入りしてませんね」


そう言うと、観客や司会さんたちから驚きの声が上がった。


「本当に仲が宜しいんですね」


美作さんがニコニコしながら言った。

そして、スタッフと目線で確認しあうと、僕らにまた視線を戻した。


「それでは、歌の準備をお願いします」


そう言われ、返事をして僕らは立ち上がった。

背後ではまだ会話が繰り広げられている。


「本当に格好いいよね。デビューしてから、随分成長した感じがあるよね」


「そうですね。情報に寄りますと、二人ともこの一年で身長がかなり伸びたそうですよ」


「いやいや、俺が言ってる成長はそっちじゃ無くてね…?」


笑い声が聞こえたところで、俺たちもセットに到着して、準備をし終えた。

レンがグッと親指を立てて来るから、僕もそれをし返した。


「準備が出来たようです。それではお聞きください。皆堂レン、吉野影斗で『colorful&clear』」


流れ出すイントロと、カラフルなライトがその場を満たした。

クルクル回る光の中で、僕らは踊り出した。

ライブ会場でみたいに、ペンライトの光の海は見えないけれど、それでもテレビの前の観客を意識して。


レンと喧嘩して、仲直りするまでの間に、たくさんのことを知った。

この曲が出来るまでに、作曲家さんがボツにしたメロディがたくさん有るって。

この衣装だって、担当の人たちの自信作なんだって。

確かに僕らはアイドルで、キラキラしていなきゃいけないんだと思う。

でも、一人じゃキラキラできない。

色んな人たちが想いを込めた作品に、自分の想いもプラスさせて、皆に届けること。

それが、僕らの役目。


本当の僕はネガティヴで、レンの後をただ歩いていただけの、そんなちっぽけな存在。

そう、思っていた。

でも、それじゃダメなんだ。

だって僕はアイドルだから。

キラキラした存在で、ある為に。


誰だって、願うんだ。それを、託された。


この曲の歌詞に沿うならば、僕の色はクリアで構わない。

レンみたいに、眩い光じゃないとしても、僕の色は、全ての色を透す光でありたい。

透明も悪くない。

伝えること、届けること。

それが、僕の特技であって、役割ならば。


さあ、サビが始まる。もう下を向いてはいられないね。

僕はカメラに向かって、精一杯の笑顔と共に、大きくピースサインをした。



◯収録後


テレビ局を出ると、もう外は真っ暗だった。

レンと並んで、事務所の用意した車まで歩く。

新曲の評判は中々いいらしい。

初披露ではないけれど、今回初めて聞いた人が多いみたいで、レンはさっきからスマホ片手に評判をチェックしている。


「良かったー。ブログにもコメント結構来てるぜ。こりゃなんか書いとかないと駄目だなー」


レンはそうボヤきながら、歩いていた。

本当は結構ブログの更新はする方。

文を書くのは嫌いじゃない。

僕のファンはどちらかというと、おっとりというか、控えめな子が多いみたいで、コメントもフンワリとした優しいものが多いから、つい。

今回のことも事前に宣伝していたしね。


「よっしゃヨッシー!当然だけど、夕飯まだだよな⁉︎」


「えっ⁉︎ま、まあそうだね…」


「この後ラーメン食いに行こうぜっ。いつもの所!駅前の」


「久しぶりだね。最近はレッスン詰めていたしね。うん、行きたいな。近藤さんにお願いして駅で降ろして貰おうよ」


俺がそう言いながら、停車していた事務所の車を開けると…。


「「「おかえり」」」


「え?」


俺が停止したことで、不思議に思ったレンが車の中を覗き込んだ。


「えっ⁉︎何⁉︎なんで居るんだ⁉︎」


車の中の光景を見てギョッとしてから、僕を見た。

僕は知らないという意味を込めてブンブンと首を横に振った。


「早く乗ったら?」

「待ちくたびれたー」


車の中でそう言ったのは、カイさんとアユさん。

そして、助手席に乗っていたリーダーが、振り返った。


「祝杯は皆でするものだと、相場は決まっているだろう?」


とてもいい笑顔で仰ったうちの皇帝サマ。

何だか、さっきまでの高揚感が何処かへ飛んでいく…。


「俺豚骨ー!」


「俺は塩で。リーダーは?」


「味噌一択だ」


何やら勝手に話が進んでいる。

やれやれと車に乗り込むレンの後に、僕も乗り込んだ。


「近藤さーん。なんか良い店ない?」


「馬鹿か。出前だ出前」


「「「「「えー」」」」」


「息ピッタリだなお前ら…。はーっ。森坂さんが待ってるんだよ。食いながらミーティングだとよ」


ワルジェネのマネージャーの一人である近藤さんは車のエンジンをかけてから言った。

また何か仕事が入ったのかな。


「この忙しいのが嬉しいって思っている俺ってもう末期だなー」


突然、隣でレンがボヤいた。


「え?」


「アイドル超楽しーってこと。呼び戻してくれてサンキューな」


レンが言ったのを、皆聞き逃さなかったらしい。

皆一斉にレンの頭を撫で始めた。


「ぎゃー!縮む!」


大袈裟なリアクションをするレンを見て、僕はクスリと笑った。


「ヨッシー笑いやがったな⁉︎」


そう言って僕をジトリと睨むレンに、更に笑ってしまう。

そして、思うんだ。ああ、僕はここが好きだ。

喚くレンの髪に、僕も手を伸ばす。


ずっとずっと、夢を見よう。

まだ幼くて、一人ぼっちだった頃の僕が願って止まなかったこと。


それを叶えてくれた皆に感謝。

ワルジェネ、本当にサイコーだよ。

さあ、進もう。


ーーー光の方へ。

ヨッシー編完結!こんなに書きにくい一人称があるだろうか、いやない。というくらい、ヨッシーは書きにくい。そのまま書くと、ネガティヴ一直線なので。瀬里さんとレンは彼のモチベーションを上げてくれるのでマジで救世主でした。


もう此処まで来たら全員分書くべきですよねー。あと、今回少し触れられた後輩くんとか、他の芸能人たちとも絡ませたい。次は誰にしようかなーと考え中です。取り敢えず、完結にしてはおきますが。


それでは皆様、最後になりましたが、読んでくださりありがとうございました!

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