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百度目は相打ちで  作者: 豆狸


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最終話 百度目のその後

 ベニアミーノ王太子殿下との婚約が解消されて、私は辺境伯閣下のエルマンノ様と婚約することになった。

 九十九回の巻き戻りで私が生み出した、体に魔力を満たして強化する技術を認められたのだ。これまでも近い技術はあったのだけれど、それは戦場や魔獣と対峙しての興奮状態で発動するものだった。

 私のように落ち着いた心で発動するのなら他者に伝授することも出来ると、高く評価されている。


 それに婚約が決まったとき、エルマンノ様は私に言ってくれた。


『十年前の聖殿でな、辺境伯家の跡取りな上に戦神の加護を得たんじゃ馬車馬みたいに魔獣との戦いに駆り出されるんだろうなと絶望していた俺に、あんたは言ってくれたんだよ。私があなたを、ファッブリ王国のすべてをお守りしますって』


 自分の魔力量の多さに浮かれての言葉だったのだけれど、そのときのエルマンノ様には喜んでもらえたようだ。


『あんたが王太子の婚約者になるって発表されて、本当に王国のすべてを守るんだなって思って、嬉しいし応援したいと思いつつもモヤっとして……八つも年上の男に言われても気持ち悪いだけだろうけど、どうもあんたは俺の初恋だったみたいだ』


 気持ち悪いだなんて思わなかった。

 五十八回目のときに庇われてから、私もエルマンノ様を──十四回目のとき婚約破棄されたことで、ベニアミーノ王太子殿下への気持ちは冷めていたし。

 ブローチの赤い石が毒蜘蛛を誘き寄せていたことは王家から報告があったけれど、辺境伯閣下の赤い瞳を怖いとは思わない。


「……様、アンドレア様」

「……眠ってらっしゃるわ。うふふ、良い夢をご覧になっているみたい」

「……辺境伯閣下の夢かしら」


 今、私達三人は辺境伯領へ向かう馬車の中にいる。

 夢うつつの私の耳に、フランカ様とカルラ様の声が聞こえてくる。

 おふたりに答えたいと思いつつも、馬車に揺られて微睡むのが心地良くて瞼が開けられない。


 魔術学園は先日卒業したばかりだ。

 ベニアミーノ殿下の側近方と婚約なさっていたおふたりの新しい婚約者はまだ見つかっていない。

 私はエルマンノ様のところで花嫁修業をするため、フランカ様は魔石が同族を惹きつける効果があるか実験するため、カルラ様はドラゴンスパイダーの体液がドラゴンの血の代用としてエリクサーの原料となり得るかを調べるため大魔林へ行くのである。


 私が九十九回死んで時間が巻き戻っていたことは、おふたりにだけ打ち明けた。

 エルマンノ様には結婚したら話そうと思っている。

 こんな荒唐無稽な話をおふたりは信じてくださって、至極真面目に考えてくださった。今のところ、ドラゴンスパイダーの体液に含まれた魔力が私の体内魔力に反応して、巻き戻り現象を引き起こしたのではないかという仮説が最有力だ。まあ……確かめる気はないのだが。


 これからも三人で仲良く過ごしていきたい。

 努力型天才のおふたりに嫉妬したこともあったけれど、これからは私が錬金術の原料となる魔獣素材を採取することで隣に立てたらいいと願っている。

 このまま婚約者無しで研究に明け暮れたいと呟いていらっしゃったのは聞かなかったことにしよう。おふたりにも本当に愛する方を見つけていただきたいもの。


 もう相打ちは狙わない。

 九十九回の巻き戻りで学んだことで、大切な人達を守っていくのだ。

 十年前、エルマンノ様に約束した通りに──

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