第3章19話 また襲われた
「ミノル、こっちに来い」
「はい」
アデルさんの目が据わって来ている。弱いくせに飲み過ぎ。俺はアデルさんの隣りに座った。
「ミノルと一緒は楽しいな。ミノル、死ぬなよ。お前は可愛い嫁をもらって長生きするのだ」
アデルさんはエールをまたグビグビと飲む。
「アデルさんが結婚するのが先でしょう。美人はモテますから」
「美人だと! 私を美人と言うのは、お前だけだ。結婚だと! 私には、そんな資格は無い。する気も無いが」
「美人ですよー。結婚する資格って何です?」
「……いろいろ事情が有ってな、そのうち話さねばな。ミノルも大人だからな。本当の事を聞いて嫌わんでくれ」
「嫌うなんて、僕がアデルさんを嫌う事だけは絶対無いですね。それだけは保証します」
「そうか。そう言ってくれるだけでも良い。お前は子供の時から良い奴だ」
アデルさんは俺の髪をつかみ引き寄せると、思い切りキスしてくれた。
それも今日は舌が入って来て、俺の舌に絡んでくる。自分の顔が赤くなっているのがわかる。息が苦しくなって困った頃、キスが終わった。
「お前が大好きだ。愛しておるぞ」
アッハッハと笑って、またグビグビとエール。
今日は舌まで入ったキスだった。何て良い日なんだ。最近アデルさんと飲むと酔っ払ってキスしてもらうのを期待している自分が情けないのだが、嬉しいものは嬉しいのだ。
アデルさんはどうせシラフに戻ったら覚えてもいないのだけど。
俺に本当の母親より躾をしてくれ常識を与えてくれ生きる術を教えてくれた人で、嫌ったり軽蔑したりするなんて有り得ないのだが酒癖の悪さは凄いものだ。
キスをしてくれるのは大歓迎ですが。
「もっと食べに行く店の数を増やしたいのう、パトリックさんにでも聞いておけ」
「はーい」
早くから飲んでいるので店内はまだ食事をしてる人や飲んでいる人で賑やかだ。
「ミノル、座り疲れた。村でも見るか。館に帰ってもまだ客が居そうだ」
「そうですね、出ましょう」
アデルさんが俺と自分に解毒と治療魔法をかけた。
「残念だが注意をしないとな」
アデルさんは本当に残念そうに言った。だけど、アデルさんの目がまだデレーっとしている。
我々は店の人に礼を言い外に出た。
「ミノル、港の方に歩くか? 門の方は寂しそうだ」
「そうですね。海に行きますか」
アデルさんと手をつないで歩いていると、村の人や警備隊の人が我々をチラチラ見ている。
「外部の者が珍しいようだな」
「それだけ安全なんじゃないですか」
港が見えてきた。意外に大きい港だ、桟橋が1本有る。
「景色は綺麗だが寂しい村だ」
「村ですもの、こんなモンですよ」
港の入り口から見る海はまだ少し明るい。魚と磯の香りが懐かしい感じだ。
我々は立ち止まって景色を楽しむ。
「ミノルが帰って来るまで、館で夕食を食べて風呂に入って寝るだけだった。今は楽しい。帰って来てくれて嬉しいぞ」
「僕も楽しいです。日本にいた時は色んな選択肢が有るようでいて、結局単調だったような気がします。アデルさんといると本当に楽しいですよ」
ぼんやりと景色を見ていると、警戒にチラッと赤い点が一瞬見えた! アデルさんも気が付いたらしく同時に飛び上がる。
周囲からファイヤーボールや矢など色んな物が飛んで来て、服の効果で張られたバリアーに1つ当たった。
今では警戒に赤い点が10個くらい見える。
俺は範囲で雷神を3発連射するとアデルさんも雷神を2発連射した。
もの凄い雷鳴と共に電が周囲を明るく照らす。
少し離れた場所に赤い点がもう2つファイヤーボールを打って来た。
アデルさんが雷撃を連射して応戦している。俺は、さっきの10体が倒れたのを確認してから雷神を2発連射した。
刺客は倒れたようだ。
俺は魔法で周囲を明るくして着陸した。アデルさんは、まだ警戒して上空にいる。倒れた奴の側に行くと昼の刺客と同じような服装だ。
村の方から警備隊の人が6人くらい剣を片手にして走って来た。
面倒な事になったなと思っていると、アデルさんが降りて来て自分のプレートを掲げて言った。
「ホフマン辺境伯の副司令アデルである。此方はミノル司令だ、剣を収めよ!」
警備隊の人がどこかに連絡をしているようだ。残りの人達は困惑して無言でいる。
村の人達が集まり出した。派手にやり過ぎなんだろうけど、こっちも死にたく無いのよ。
「責任者は誰だ。何か言う事は無いのか!」
アデルさんがイラつき始めている。
誰かが走って来た。ポニーさんだ。
「下がれ馬鹿者! 剣を収めよ。責任者は何処だ! 御屋形様に恥をかかすのも大概にしろ!」
「ミノル司令、アデル副司令、大変申し訳ございません。失態としか言いようがありません。お怪我などございませんか?」
「大丈夫です。我々の方が他所様の領地で騒ぎを起こしまして、申し訳無く思っております」
「大変申し訳有りませんが、少々お話を聞かせて頂けませんか? 館にて御屋形様がお待ちです」
まずい雰囲気だ。館と貴族は苦手だ。
アデルさんは口をへの字にしている。
「はい、わかりました」
せっかく楽しかったのにな。




