第3章18話 刺客が来た
メリアさんは綺麗な人だったな。でもアデルさんの方が素敵だなと思う。
ここに来て日本と決定的に変わってきたのが、人との年齢差の認識だ。
例えばアデルさんやサキバさんが今はすごく年上だとしても、あっという間に俺の方が年を取り死んでしまう。あっちは今と殆ど変わらない容姿でしばらくは生き続けるのだ。
ここでは同年代だからなどという事に拘るのが馬鹿らしいのだ。話しをして楽しい。憧れるで良いじゃないかと思うようになった。
リリアドルフの海を見ていると、ダニエルが何故ああなったか解るような気がした。
キュレット伯爵夫人が相手というのは理解不能だけど。
コーヒーモドキを飲む。美味しく感じる。良くさっきのお茶を有り難がって飲むよな。
海風が一瞬途切れるように弱まった。警戒には何も無い。嫌な感じ。
突然何かが、あちこちから飛んで来て服の自動バリアーが発動した。
俺は真上に飛び上がり剣を抜きながら、警戒に見える赤い点全部に雷神を放つ。
「ズドドドーン」
黒服に囲まれていた。
のどかな港町に雷神の派手な音が響き渡り、鋭い光が周囲を真っ白く照らす。
雷神をもう2発全員に打ち込み真下の敵に中剣を落下しながら切り込む。
雷神3発で弱まったバリアーが壊れ、相手の左肩から胸を切り裂いた。
相手に隙を与え無いように、残りの刺客に雷神を更に2発連写すると4人倒れた。
隣りの奴を切り倒し最後の奴に雷神を更に打ち込むとやっと倒れた。
強い人達だった。雷神をここまで耐えるとは。
雷神6発必要だった奴を見に行くとメリアさんだった。
どんな美人でも殺さないと殺されるんだよな。
煙が上がっているメリアさんを見て、つくづく思った。
「ミノル!無事か?」
青い顔をしたアデルさんだった。
コロン中隊長とトレル中隊長も部下と共に現れた。
「ミノル、ミノル良く無事だった。偉いぞ」
アデルさんは中剣をダラリと持つた俺を抱きしめて半泣きだった。
「ミノル良くやった。お前が死んだら私はどうすれば良いのだ。それに奥様や精霊様にも合わす顔が無い。良く生き残った。偉いぞ。愛しておるぞ」
周りに人が沢山いるのに構わず俺を抱きしめてくれた。生きていて良かったと心から思った。
「司令。私の不注意でした。先程の茶を調べたところ毒物が発見され、司令を探している最中でした。申し訳有りません!」
トレル中隊長が悔しそうに言った。
「誰が毒物を入れたか判明しておるのか?」
アデルさんがトレル中隊長に聞いた。
「この人ですよ。倒すのに雷神6発必要でした」
俺が剣で示すとアデルさんは煙の上がる黒服の女を見ていた。
「他の6人は全員死亡。対魔法アイテムと思われる物を大量に身に付けております」
「7人の暗殺者集団か……ミノルで無かったら完全に殺されていたな……」
「トレル中隊長のお陰で助かりました。もう少しでお茶を飲む寸前でした」
「馬鹿者!」
アデルさんに平手打ちをいきなり食らった。
「何故もっと注意出来ん!」
「ゴメンナサイ……」
周り全員が引いていた。
アデルさんと中隊長達に状況を説明しているうちに、警備隊と騎士団の人達が周りと死体を片付け、何も無かったような状態に戻った。
護衛を付けると言う中隊長達をやっと説き伏せ自由になった。
アデルさんが凄く怒っている。困った。
アデルさんと何時もの席に座った。お姉さんがコーヒーモドキとクッキーを俺達に持ってきた。
「スミマセンでした。営業妨害してしまいまして」
「とんでもないですー。司令様がカッコ良かったです!」
お姉さんはニコッとして下がった。
アデルさんは、お姉さんが持って来たコーヒーモドキを口にして、脱力気味だ。クッキーをポリポリ食べている。
「昼飯抜きだ。ここで魚料理でも食うか?」
気を取り直してくれたようだ。
「魚、食べに行きます? ミルレドルフで美味しいのが食べられます」
「行くぞ!」
アデルさんは俺のクッキーを回収して立ち上がった。
ミルレドルフの酒場のような食堂のような中途半端な名無しの店の前に着いた。木の看板には魚とジョッキーの彫り物がしてある。
「ここは何処だ?」
「何時も食べているカニが穫れる漁港ですよ」
店に入ると店主さんが笑顔で迎えてくれ、奥の人目につかない商人などが使う席に案内してくれた。
「久し振りですね。今日は良い魚が入ってます。この前と同じ調理で良いですか?」
「はい、それでお願いします。エールも」
奥さんが、すぐにエールを持ってきた。
「ミノルは色々な店を知ってるな」
「ヒマですもの」
アデルさんがエールをゴクゴクと飲んでから俺の左頬に治療魔法をかけてくれた。
「腫れて来ていた。本来なら尻を剥いて20発くらいひっぱたくところだ。ミノルの部下の前だから止めたがな」
「人前で尻を剥くのだけは止めてくださいね。13歳くらいの時、自分の部屋でもあれは恥ずかしかったですから」
あれは中学生になったばかりの頃だった。
「あれは自分で風呂に入れるし下着も替えると言ったくせに汗臭いは髪はガサガサだわ、そういえば風呂に一緒に入ったのもあれが最後だな、また一緒に入るか?」
「声が大きいですよ……無理ですよ、もう」
魚が運ばれてきた。タラみたいな魚のオイル焼きだ。香草の匂いが凄く良い。アデルさんがエールのおかわりを注文した。
「何が無理だ。お互いに裸など見飽きているだろう。美味い! 良いな、、この料理。これは美味い!」
「でしょう。しばらく前に見つけたんですよ。絶対アデルさんと来ようと思ってたんです」
「そうか。嬉しいな、有り難う。食事に誘ってくれるのはミノルくらいのものだ」
エールがきた。
「この料理はエールに合うな、もっと大きいのは無いのか?」
アデルさんは上機嫌になって来ている。
「姉さんも好きだね。いちばん大きいので持ってくるよ」
奥さんが笑ってアデルさんに答えた。
アデルさんは魚を一口食べてエールを飲み干した。奥さんがすぐに大きいピッチャーでエールを持ってきた。
「お前も、もっと飲め! 夕食は館に帰っても貴族だらけだ」
ミノルからお前になって来ている。少し危険だ。
「この店は良いな、エールも美味い」
貴族だらけなら、この店で飲むしかないなと思った。




