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第3章17話 凄い美人とお話


 冒険者ギルドを出たのが、午後の2時頃だった。


「ミノル司令様。はじめまして、私はヘンドリックス辺境伯婦人の知人でメリアと申します」


 ギルドの前で、いきなり声をかけられた。22歳くらいで長い鳶色の髪に濃いグリーンの眼、俺と同じくらいの身長でスタイル最高の巨乳に近い。薄い紫色のボンネットと同じ色のドレスの超美人。

 今まで俺の周りには絶対にいなかったタイプだ。


「ヘンドリックス婦人のご友人ですか。はじめましてミノルです」


 貴族か大商人の娘なんだろうけどツンツンしてないだけ良い。


「お見かけしてミノル司令様とすぐ判りましたわ。婦人から聞いている通りのお姿で」


 オホホと声に出さないだけ良いか。


「こんな服しか持ってないのです」


 立ち話でヘルンブルグの話題なんかをしていたが、夏の日差しが暑い。知人の友人に失礼も出来ないのでお茶に誘ってみた。


「まあ! お誘い頂けるなんて、光栄ですわ」


 メリアさんは、俺と腕を組めるくらいに近づき並んで歩き出した。ナンかドキドキする。体温が感じるくらいの距離だ。

 街の人達や警備隊の人が、気が付いていないふりをして素通りして行く。

 貴族や大商人が大好きなカフェテラスに着いた。


「これはこれは、ミノル坊ちゃん。お久しぶりの御来店で光栄です!」


 店主さんが飛び出して来て挨拶し、周りの客に目立たない席に案内してくれた。

 席に座って、店主さんお勧めのお茶を注文し話をメリアさんと続ける。


「素敵なお店ですわ。ヘルンブルグにはこのような店はございませんもの」


「ここは暖かいですから成立するのですよ」


 お茶とお菓子が来た。如何にも高級といった感じだ。


「このお茶は美味しいですわ。初めて戴きました」


 実は俺はこのお茶が好きじゃない。薄い番茶と麦茶の中間みたいなのに、砂糖をぶち込んで飲むのが気に入らない。


「メリアさんに気に入って貰えて良かったです。とても人気のあるお茶なんですよ」


 カフェテラスの前を時々警備隊の人や騎士団の人が、こっちを見ないように通って行く。

 メリアさんが、美人を見せ付けるような笑顔で話している。


「ヘルンブルグは北の街なので、解放的ではないと言うか華やかさに欠けますわ」


 返事をしようとしたら、メリアさんのハンドバッグが床に落ちた。俺は席を立ち、屈んでハンドバッグを拾ってあげた。


「まあ! 有り難う御座います。ミノル司令様は紳士ですのね」


 美人キラキラの笑顔で礼を言った。


「いいえ、とんでもない」


 俺が照れ隠しに、お茶に手を伸ばした時トレル中隊長が現れた。


「司令、お忙しいところ大変申し訳有りません! 緊急にお伝えしなければならない事なのでお許し下さい!」


 トレル中隊長はメリアさんにも会釈して報告を始めた。


「どうぞ、遠慮無く。メリアさんは信頼できる方なので、ここで聞きますよ」



「朝に捕獲した者達は、何処かの間者らしく現在取り調べ中であります。自決を試みましたが防ぎましたので、何人かは自白を期待できる状況になっております」


 メリアさんは笑顔を止め、スッと立ち上がっり再び笑顔となり言った。


「何かお忙しいところ、私がお邪魔したようですわ。今度またお暇な時にお会い出来ると光栄です」


 メリアさんは俺の返事を待たないで消えて行った。


「司令……大変失礼したようです」


「とんでもない。気にしないで下さい。逆に助かりました。得意じゃ無いんですよ、ああいった方は。美人ですけど」


 俺はお茶代を払って店を出た。街を歩いている人達は、また何時ものように笑顔で俺に挨拶したり手を振ってくれた。

 俺は祝福魔法をバラまいて返した。



 何処でも話をするだけで食べてなかったのでリリアドルフに行った。

 何時もの席に座ると腹もそれ程すいている感じもしないので、コーヒーモドキをとりあえず注文した。

 ボーっとしているとコーヒーモドキが来た。これに慣れてしまって、コーヒーの本当の味を忘れそうだ。

 クッキーのようなお菓子が付いていたのでポリポリしながら、アデルさんは忙しいのかな? などと考えていると、アデルさんには殆ど遠いパトリックさんが前を歩いている。


「パトリックさーん」


 パトリックさんが俺の隣りに座り、お姉さんがコーヒーモドキを置いていく。最近は注文しなくても飲み物は自動的に出てくるようだ。

 パトリックさんはコーヒーモドキに手を伸ばして話出した。


「ここの業者が捕まったので、ヘフナドルフに戻って明日以降の取引を増やして貰って、後始末に来ていたんですよ」


「それは大変でしたね。でもヘフナドルフのお爺さんは喜んだでしょう」


「とても喜んでました。ミノルさんに宜しくとの事です」


「ヘフナドルフに関連して思い付きが有るんですよ」


「是非とも聞かせてください」


「あそこに海産物の加工工場を作ったら良いような気がするんですよ。海老剥いて串差すだけでも出来ていると売る時の手間が相当省けるじゃないかと」


「それイイですね。数が増えるだけコストダウンになりますから」


「運搬には馬車を使ってノンストップでホフマブルグに持って行くんです。その為に捨てられた街に馬と御者の交代機能を置けば、有るもの利用して施設代はかからないでしょう。

 田とか畜舎をこっちにも作るのは良いと思います。捨てられた街の前も横も広大な空き地です。伸びていけるし土地代が安いです」


「良いですね。そうすれば冒険者ギルドも出て来るし役人や警備隊が来る。

 あっという間に1000人は簡単に超えますよ」


パトリックさんは賛成してくれたようだ。


「薬師ギルドや猟師ギルド、騎士団や教員・医療関係と、それ目当ての店や大工さん鍛冶屋さん。相当な数になると思います。

 魔人の国との交易が活発化したら、捨てられた街は流通の核になります」


 俺の説明に頷きながら聞いていたパトリックさんは立ち上がって言った。


「早速、事務所に帰って父を説得しますよ」


 パトリックさんが居なくなった。

 俺はパトリックさんの席からお菓子を回収して、コーヒーモドキを追加注文した。


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