第5章02話 報復しました
「司令! お身体は」
警備隊の人達が集まって来た。トレル隊長とコロン隊長、マネさんがワープして来た。
「ミノル! 無事なのか? 何故誰も付いておらん! アデルは何をしている! 儂は朝から打ち合わせと……済まぬ、テリッチにも伝えておくべきだった。儂の失態だ」
「司令! 申し訳有りません。ホフマブルグで暗殺させるとは……警備隊の失態です」
「トレル隊長もマネさんも、そんなに気にしないで下さい。それより全員の身包み剥いで金目の物を集めて。我々の貴重な財源ですから。
ローブは、この袋に入れて下さい。この三人はローブを着せて」
ドロン騎士団隊長とジャン警備隊隊長も現れた。
「ドロン隊長、王都にこの三体を捨てに行きます。王都に詳しいワープ使える隊員を」
ドロン隊長はニヤリとして、いつもの二人を呼んだ。
「三体ですよ二人で大丈夫ですか?」
「お任せ下さい!」
建物の配置を教えて貰う。
「降りた場所の前が王宮で、隣りの屋根が丸いのが貴族院、右手の白い尖塔付きがアイラス教団の本部ですね。こいつ等転がしたらすぐ逃げて下さい」
「ミノル司令、儂も絶対に行くぞ。露払いくらいにはなる。何が有っても守って見せる! 魔力も減っているだろう」
マネさんの迫力に負けてしまった。
「全て粒状化で破壊します。目標はアイラス教団の本部と貴族院です。着いたらワープしますので横にいて下さい」
「了解だ!」
ローブが届いた。ローブが29着。全部で32人の暗殺団だった。
騎士団の二人が用意を調え終え、4人で王都に飛んだ。
二人の騎士団員は三体とマジックバックを広場に転がして消えた。
俺は最初に目に入った右手のアイラス教団本部の大きな建物にマネさんとワープした。
警戒では建物の中には無数の赤い点が見える。念話で同時に唱えた。
「「粒状化」」
尖塔からサラサラと粉になってゆき、一気に崩れ落ちてアイラス教団の本部は消えた。
我々はまたワープで貴族院の建物に向かった。中には誰もいないようだ。また念話で同時に唱えた。
「「粒状化」」
貴族院の建物は屋根から粉になり、内側に崩れ落ちていって消滅した。
我々はさっさとワープで逃げ出した。
ホフマブルグの現場に戻るとまだ後片付けの最中だった。
「大成功ですね」
「気分の良いものだな。ミノル感謝するぞ」
マネさんが白い粉を顔に付けて笑顔で言う。
「叔父さんに聞かれてもマネさんはいなかったことにしますので宜しく」
「無駄だ。情報隊が見ておろう」
「チェッ、自分が作った組織なのに」
「司令、派手にやったようですな」
ドロン隊長がニヤニヤと寄って来た。
「もう連絡、入りました?」
「御屋形様も知った頃だと思いますぞ」
「さて、司令をクビになりに呼び出されますか」
「甘いですな。何も言って来ないと思いますぞ。何か言えば御屋形様が関わった事になりますからな。ですが王宮側も証拠一つ有りますまい」
「じゃ、こっちも放って置きます。魔道具はパトリックさんに届けておいて下さい。騎士団と警備隊の貴重な財源になりますから」
「さっき届けておきました」
ジャン警備隊隊長が答えた。
テリッチさんが薬草を大量に背負ったままワープして来た。
凄く慌てている。
「ミノルさん、お身体は大丈夫ですか? 私が薬草さえ取りに行かなければこんな事には……」
テリッチさんは涙を流している。
「テリッチさんも気にしないで下さい。誰のせいでも無いですから。それに今、とても気分が良いので」
隊長さん達が大笑いして、テリッチさんがキョトンとしている。
「トレルさん、僕は風呂に入りに帰ります。粉っぽくて。何かあったら呼んでください」
「了解しました!」
俺とテリッチさんは宿に帰った。
「私は薬草を作業場に置いて来ます」
テリッチさんが消えた。優しくて良い人だ。
部屋に帰るとマネさんの罵声が響き渡っていた。
「この大バカ者! ミノルの優しさに甘え、自分の事しか考えられんのか!」
アデルさんは裸でベッドの近くでノックアウトされている。ベッドから引きずり出され、張り倒されたようだ。アデルさんは仰向けになったまま泣いていた。
マネさんが凄い形相で振り返った。俺だとわかると優しい顔になり、俺の両肩に手を載せた。
「ミノル、勝手に部屋に入って済まないな。たが儂とアデルの間でキチンとして置かねばならぬ事も有ってな。この大バカ者は世の中や精霊様との約束事を守れなかったのだ。
儂はミノルの優しさと、気遣いが死ぬ程嬉しかった。感謝するぞ」
「あの、気にしないでください」
「ミノルの大切なアデルを殴って済まなかった。許せ。たまには儂の部屋に遊びに来い。ただ儂もアデルと同じ裸族だから見たくも無いだろうがな。ワッハッハ」
「いえ、そんな、マネさんみたいな綺麗なお姉さんの裸は好きですが、恥ずかしいだけです」
意味不明の返事しか出来なかった。
「儂が綺麗などと言うのは、ミノルだけだ」
マネさんはニコッと笑ってワープで消えた。
俺は白い粉だらけなので先に衣類を全部脱いでから、アデルさんの殴られた顔を治療してから立たせた。
「一緒に風呂に入りましょうよ。僕は粉だらけだし」
魂が抜けたようなアデルさんを連れて露天風呂に行き湯をかぶり粉を流し、とりあえず手と顔を洗った。
アデルさんは魂が抜けたままボーっと立っている。側に行くと凄い力で俺を抱きしめて泣き出した。
「済まなかつた。済まなかつた。済まなかつた」
泣きながら、暫くそれしか言わなかつた。
「タイミングが悪かっただけですよ。決してアデルさんの責任じゃ無いですから」
「許して貰える話では無いのだ。私は昨夜も何も考えずマネと」
「止めましょうよ。飲んで寝坊しただけです。その日に暗殺団が来た、それだけですよ。キスしてくれたら許しちゃいますよー」
アデルさんがキスしてくれた。久し振りのキスと触れ合いが凄く嬉しい。アデルさんに抱きしめられたままで激しくキスされたら爆発してしまった。
アデルさんは、脱力してデク人形になった俺を洗い場に寝かせ洗ってくれた。
「お前はバカ者だ、お人好し過ぎる。何故許す。馬鹿だ!」
アデルさんに頭まで洗って貰いながら、これなら毎日暗殺されても良いような気がした。




