第5章01話 暗殺は止めて下さい
10月になった。俺の誕生月だ。何か良い事でも有れば嬉しいのだが、余りそのような事が有った記憶が無い。外食をしたりケーキを食べるといった記憶は有るけど特別な事が起きることは無かった。
17歳になることだけは確かだ。同年代と一緒に居ないので自分の成長が分かんないけど。
昨日はアデルさんとマネさんが遅くまで飲んでいて次の日、館の朝食のある俺だけ先に風呂に入って寝た。
最近このパターンが時々ある。ずっと館で孤立していたアデルさんにはマネさんとの時間が楽しいのだと思う。
何時に帰って来たのか、アデルさんがまた朝起きれない状態だったので、勝手に朝詣りを済ませて館に行った。
館の食堂は久し振りだ。それも今日は家族だけだ。
「ミノル、早朝く呼び出して済まんな」
叔父さんが機嫌が良い。貴族院で相当良い結果が出たのだろう。
「ミノルが最高責任者だった間に何をしたのか教えてくれないか?」
ノア兄さんが聞いてきた。
「大した事して無いですよ。違法侵入者を500人くらい捕まえて、1000人くらいの魔術師の襲撃を全滅させて、送り込んで来る本拠地を平地にしたくらいですから。
司令の権限で済む事しかやって無いですよ。予算は使って無いですし」
「いや、文句を言っている訳では無いのだ。情報隊長から常に連絡を貰っていたし、満足しているぞ。
だが変化が早すぎて付いて行けないのだ。少し教えてくれんか」
と叔父さんが言う。
「本当に受動的な事しかやって無いのですよ。攻められたら守るだけですから。
後は他所が不安定なんで、魔族・エルフ・ドワーフを問わず不審者で無い限り居住許可と営業許可を出してます。
少しずつですけど、優秀な鍛冶・細工師・魔道具師が集まってます。
まだまだ増えると考えています。情報の伝達に時間が掛かりますから。
ドワーフや地方の職人の多くは歩いて来ますから、今月の中頃辺りからもっと多くの申請が出ると思います。
商人も調べて、まともなのは受け入れてますので資本の流入が凄い状態なので、ノア兄さんに頑張って貰わないと物価が上がりますよ。
現在で人口が3万人くらいに、なっているようなので警備隊の拡充が必要です。現在20人の新規募集をしてますが、没収品の売却で賄ってます。
騎士団は、存在する筈の見習いが二人しか居ないので、20人の見習い新規募集と予備要員三人の募集をしてます。
本来なら騎士団は現在250人になっている筈なんですけど、200人で何とかしている状態です。
これ以上は僕の権限外なので放置してますが、警備隊の300人体制が最低限で、350人がオススメです。
騎士団情報隊、警備隊情報隊、どちらも10人ずつは必要です。今の状態は商人にも劣った情報体制だと思います」
「やっと話が見えて来たよ。アリガトな。こんなに改革して貰って」
ノア兄さんが困ったような顔をしている。
「叔父さんが帰っているなら、勝利宣言と騎士団のパレードしないと片手落ちですよ。やるなら警備隊も一緒にパレードさせてあげて下さい。僕は抜きでお願いします。叔父さんが目立つのが目的ですから」
「司令無しのパレードは変だぞ」
「じゃアデルさんを司令、マネさんを副司令にして、僕をそろそろクビにして下さいよ。16歳のガキがする役職じゃないですよ」
叔父さんが困っている。
「お母さんセリちゃん使い続けます? それなら館に引き取った方が良いような気がしますけど。宿住まいは良くないですよ」
「あらミノル、セリちゃん貰って良いの?」
「アデルさんの代わりにと思って育てたのですから、お母さんの自由ですよ」
「嬉しいわー。ミノル、愛しているわよ」
「じゃ解任の辞令、待ってまーす」
俺はサッサと自分の部屋に行き、洗濯物を置き洗いたてを取って館を逃げた。
瘴気の沼を見に行った。危険区域はどんどん後退している。再生で後退した分は森に戻していくのが、最近の日課になっている。
既に集落から200メートルくらいは森林に変わっている。
未だに、お婆さんには会えない。守護人では無いようだ。
テリッチさんに聞くと当時、他に守護人はいなかったみたいだし。でもナンカ気になる。
宿に洗濯物を置きに行くとアデルさんは、まだ寝ていた。起こさないように、静かに部屋を出た。
ホフマブルグでトメラさんの店に行くことにした。新規開店してまだ行って無い。
確か海老フライ屋さんの近くと聞いていたので、マイヤー商会の前から歩いて行くことにした。
歩いていると突然、俺の服の自動バリアーが張られた!
俺は斜めに飛び上がって加速魔法を使い攻撃を回避した。警戒で見ると30人以上に囲まれていた。
守勢を回避するために雷神を移動しながら撃ち続ける。
「ドドドーン」
最初の3発くらいで10人くらい倒したが、まだ20人以上いる。続けて雷神三発連射を二回撃ち、相手からの攻撃をさせないことを優先する。
相手は強いし数が多い。敵の防護力と、こっちの魔力との勝負だ。
警戒で見える敵は減っているが、結果などお構い無しに回避行動を取りながら雷神を撃ち続けた。
ホフマブルグのメインストリートが雷光と雷音に包まれ、近くの店に逃げ込んでいる人達が見える。
相手も雷撃と雷神を撃っているが、加速魔法を使った回避行動が上手くいっている。
10発以上撃ってまだ3人くらいがバリアーを張って雷撃を撃ってくる。魔力が不足して雷撃しか使えなくなっているらしい。
こっちは雷神の三連射で押し切ると最後の1人になった。
そいつに雷神を三連射すると遂に相手が倒れた。
凄く危なかった。20発くらい雷神を撃って、やっと倒した。それも、敵もバリアーを張って雷神を撃つ事を覚えたようだ。
最初に加速魔法を使って無かったら当たっていた。
俺の魔力は半分近くになっている。
敵はまた黒ローブに赤い八芒星。アイラス教団スタイルだ。
最後に倒した奴は50歳以上の男で、魔道具満載で来ている。金持ち魔術師らしい。
だんだん腹が立って来た。
人のシマ荒らしたらどうなるか教える時が来たようだ。




