9-2 嘘は反逆者達の生き様を観る②
仲間の探索を開始!
なぜ監獄にと思うが森林エリアに来ている。
「悪いなクリス。ここが2人と別れた場所か。」
「あまり耳元で囁かれるとむず痒いのでやめて貰えるかしら。まだシンドウ君が重くなかったから良かったけど女性に運ばせるかしら?」
俺は高校生の時の姿なので160cmくらいか地球にいた頃は175cmだったので成長期痛は遅い方だったな。
「じゃあ年下の男を背負うか、紐で縛って引きずるのどちらが良かったかい?」
「...これは私への借りということにして貰いますからね。」
借りか...仕方ないか。あまり作りたくはないんだが、命の恩人でもあるからな。
「借りは返すさ。そうだなシキとクリスをくっつけて幸せな日常を送らせてやるよ。あいつもそうすれば落ち着いてくれる可能性が少しはあるからな。」
「...‼︎シンドウ君どういうことかしら?ブラフはやめなさい。」
いやいやクリスはシキのこと好きなんだろうなという事実は俺の観る目でも判決を下してるし、鉢巻も分かっているんじゃないかな。クリスの想い人が分かっているからこそ積極的にアプローチしたのだろう。あれで勝負に勝つため手段を尽くしてくれていたのだ。本当にいいやつだな。
「シキもなんだかんだ言ってクリスのこと気に入っている筈だぞ。クリスが告れば勝率は高い筈だ。」
パーカーフェイス強いな。仮面が剥がれんな。感情のオーラが隠せないから感情までは抑制できないか。
「これ以上言うなら落とすわよ。シキは恐らく私よりもギャンブルの腕も頭の回転も上よ。この短時間でそれを読み取ったとは思えないわ。」
「言葉ではそう言ってても今本当かしら?と同様しドキドキしてるだろ。俺背負われてるから分かるぞ。」
これはブラフだ脈は少しは早くなっているが、限りなく感情を抑えている。
「俺には嘘は通用しない。なんなら試してもいいぞ。」
「....。私が好きな色は白です。私は過去に2人の男性とお付き合いをしたことがある。私はシンドウ君のことが好きです。どうかしら?」
中々良いチョイスだ。始めは簡単なものを次に重い物をそして最後にこちらの判断を鈍らせようとしてるのかな。
「白は嘘で過去の男性も嘘で、俺のことが好きというのは真実だ。でも好きと言っても人間性が好きというレベルで恋愛対象ではないだろ。なんなら言ってやるがクリスさんの好きな色は恐らく黒で付き合った男性は0人だ。」
「...。本当に落としたいところだわ。でも脈で嘘を判断したのは嘘でしょ。これでも感情のコントロールは意識すればできるわ。」
俺は脈も計れるが今回は感情の波で判断した。そちらの方が正確に計れるからだ。
「クリスは凄腕のギャンブラーになれるよ。嘘を暴くのに俺は特化し過ぎてるだけで、暴けるやつは俺やシキみたいなやつくらいだろう。」
人をコントロールすることに長けてるやつなんてそうそういない。俺は観ることで判断するから精度は高いが、シキは嘘を吐かせるし、真実も吐かせる。相手によっては無理だろうが。
「褒めてくれているようだけど、敗者にとっては無意味よ。シキはなんだかんだでいって監獄での生活長かったから自然と惹かれてしまったのよ。でもお節介は不要だからね。」
本人がそう望むなら無理強いはしないさ。
「分かったよ。んじゃ次にやって貰いのは痕跡集めだ。この周辺の1kmを目処に探して欲しい。鉢巻が殿をして敵を引きつけた方向が分かれば簡単だが、分からなければ時間掛けていいから。」
俺はクリスから降り座り込む。
「シンドウ君は人遣いが荒いって言われない?」
「言われるな。だが体力は温存しておきたい。柊とバトッたのは失敗だったな。」
俺は回復魔術をかけながら答える。
「これも貸しだからね。仕方ないから探すわよ。状況的に私も仲間はいて欲しいからね。」
◇
30分程探して貰うと思った通り痕跡はあったらしい。
「北東の方角に最近切られたと思われる木があったわ。鉢巻さんが錬成したと思われるライフルの弾が切株に刺さっていたから間違いないんじゃないかな。」
罠の可能性は十分あるだろうと思ったがないか、悪いがクリスを周辺を歩かせ囮として使い、敵を釣るのがベストだったんだがいなかったか。
「木が倒れている方角はどちらを向いていた?」
「北西だったと思うけど。倒れた方向に向かうのは安直じゃないかしら?」
そりゃそうだろうな敵だって思いつくだろうそんなこと。
「倒れた方向に鉢巻とミーアがいないことは分かっているさ。だが倒れた先に何があるのか予想は着く。」
「荒事ばかり起こりそうね。回復はいいのかしら?」
「まだ癒えていないが、遅れはとらないさ。大丈夫クリスは俺が守りきってやるから安心しな。それともここに残って待機でもいいぜ。」
倒れた先には恐らく罠として敵が配置されている可能性は高いだろう。こんな安直な目印にした鉢巻は殿を務めながらも敵への道標も用意していた。そして俺なら相手のアジトを追跡もして潜伏する。期待してるぜ鉢巻よ!
「しませんよ!ここまでさせたんだから守りきるのは義務ですからね!貸しを返したとは思わないで下さいね。」
「注文が怖くなってくるね。まぁいい行くか。」
◇
2時間程歩くとまた町ようなエリアがあった。
クリスに聞いても案内はあったが細かい地図を見たわけではなく大雑把に広さとどんなエリアがあるか知らされただけだからわからない。
「クリスと俺は顔バレしてしまっているんだよな?」
「そうね。私達の情報は漏洩されてしまっているらしいわ。」
侵入して敵に見つかったら追いかけられるかもな。なぜ追いかけられてるのかは知らんが、危険人物扱いされてるのは確かだ。
「んじゃ変装していくかな?俺はあてがあるがクリスはなにかバレない方法あるが?」
「何も持ってきてないから難しいわね。」
「んじゃひとまず買い物をしてくるよ。服のサイズを教えてくれれば買ってくるし、食料も手に入れてくる。他に欲しい物あるか?」
「セクハラっぽい気がするけど仕方ないわね。化粧品と何かヘアピンを買ってきて、変装できるようにするわ。」
「了解だ。んじゃ待っててくれ。何かあったら合図が送れたら合図をできなかったは目印でも残しといてくれ。」
さぁマフィアがうろつく町に出向きますかね。
◇
◇
「俺は地下帝国にでも乗り込んでんのかね〜」
町に入り思うことは第3区画はやたらと広いということだ。そして自給自足の生活を送ることを余儀なくされている。監守は発見できなかった。
「りんご2つ売ってくれ。いくらだ?」
俺は果物を売る商店の男に話しかける。地球バージョンの28歳の姿になっている。服がキツイが仕方ない。
「2つで300コルだ。余所モンかい?」
「ほいよ。おつりくれ。南西の方向から怖いもの見たさで来たんだ。俺が死んだら俺の墓にでもリンゴ置いてくれ。一個は返す。」
「おいおい正気かよあんた。確かにこの町のカリノファミリアは暴力的な側面があるけどよ、突っかかるのはやめておけよ。もう一個オマケでやるよ。人生捨てたもんじゃないぞ。」
俺はリンゴを三つ貰い。700コル渡された。この紙幣は1000コルか。そして嘘をつきやがってリンゴ一個100コルだろ。荒くれ者がいる町で変に値引きしようとすると目をつけられそうだからな。悲壮感を思わせたらどうなるかやってみたら上手くいった。
「おっちゃんいい人だな。俺だって関わりたくはないが事情があってな。命は大事にだよな。カリノファミリアってどんな連中なんだ?」
「そうだな。弱肉強食を体現してるって言えばいいのかねぇ〜。構成員は全員この第3区画では中堅クラスで幹部はトップクラスと聞くな。2〜3日前にはこの町に幹部が視察に来てたとかいう噂もあったし弱いやつは排除あるのみって感じか。」
下手げに部下を増やすと裏切り者や捕まった時に内情をバラす危険性もある。ボスはやってることは過激そうだが指揮は慎重ということか。総合力では他に負けるかもしれんが厄介なタイプだな。
「それはおっかないな。情報をありがとうな。やはり食欲が出てこないな。おつりは情報代、リンゴは飢えてるやつにでもあげてくれ。んじゃな!」
「え?おい!あんちゃん早まった真似はするんじゃねーぞ!」
俺は金とリンゴを置き駆け出していった。さて情報は手に入ったな。ちなみに俺は金なんて持っているわけがない。先ほどの果物屋での商売を観察した。そして客の去り際さっきの店主から紙幣を一枚空間魔術でスリ全て返した。昔は悪用しまくっていたんだがな。バレるとユイが怒るからなもうやらない。
「だからバレなければいい。完全犯罪ならいいだろユイ!」
俺は誰も不幸にしていないのだから構わないだろう!多分ユイはこういうことを言ったのではないと思うが妥協点だろ。なんで俺弁解してんだろうな。
◇
5時間後
「クリスお待たせ買ってきたぞ。いや~大変だったな~。」
「...よく分からないけどありがとう。凄くいい笑顔だけど何かあったの?」
なんだろうな昔の営業を思い出し金の流れを掴むのは楽しかった。労働とは素晴らしい。...はっ!社畜精神が目覚めてしまう。
「あのシンドウ君はお金持ってなかったよね。そのこれって。」
「俺は自分で稼いだ金で買ってきた。断じて盗んできたわけではない!俺の名に誓うぞ!」
そう俺の名ではないがユイの名前だ。嘘はありえない!
「あのさじゃどうやって買ったのこれ?」
「銀行から金を一旦借りて、元手になる商品を仕入れ売り捌きを繰り返して最後には借りた分は返した。それだけだぞ?」
身元不明では借りれなかったから一旦一方的に借りたがしっかり返した。問題なんてどこにもないな。
「後17万コルあるから欲しいものあれば買ってやるからな。」
「すごく活き活きしてるねシンドウ君...。」
◇
今度は二人で街に潜入した。
「クリスさんのメイク術すごいな。自分の表情筋すらコントロールしているのか全くの別人に見える。」
「昔は少しやんちゃしてしまってね。場所によっては変装しないと危なかったのよ。」
人には必ず過去がある。クリスにも当然過去があり、言いたくないこの一つや二つはあるだろう。俺は自分の過去を誰にも話す気がない。だから相手が話さない限り詮索する気はない。
...あっヤマタケには話させたんだっけか。場合によるということだな。
「いいさ。生きてりゃ何が起きてもおかしくない。でも一つだけ小言を言うなら下を向くんじゃない。己に恥じる行いで後悔したことは一生自分の中に傷を作るもんだ。恥じない行いなら必ず味方は付いてくる。」
「シンドウ君はその姿もそうだけどいくつなの?中々辿り着く言葉じゃないし経験則なのよね?」
「....。」
しまったな。クリスの感情の色を見たらついつい口が滑ってしまった。過去を悔いることは誰にもある。だがそんなことを考え続けても身を滅ぼすだけだ。
「こちらも詮索をすべきではなかったわね。これからどうするの?」
「目標としてはミーアと鉢巻との合流だ。そのために打つ手としたらカリノファミリアと同盟関係となることが手っ取り早いわな。」
カリノファミリアは俺達を狙っている。同盟を組みお互い不干渉であれば堂々と探すことができるし、捕えられている場合は解放させることができるかもしれない。も
「もしも二人に何かあれば選択を誤ったことを地獄の果てまで後悔させてやる。」
「おっかないわねホント。所在は掴んでいるの?」
俺が5時間も掛けてただ金集めをしていた、なんてことはないさ。
「そんなに遠くはない。待ち合わせしているからな。」
◇
「貴様何をしたんだ。」
目の前で切れそうになっている下っ端か幹部が路地裏に現れた。
「時間ぴったしだなご苦労さん。落とし物を拾ってわざわざ返すために待っててやったのに随分な言われようだな。」
周り吊るされているケータイを見ながら答える。
「何が落とし物だ!こんなメールを送ってきよって!」
「何を言ってるんだ?俺はシンドウという名の男に指示を受けここに来ただけだ。これは預かった手紙だ読むかい?」
俺は町で遭遇したカリノファミリア構成員のケータイをたまたま拾い、この場所に分かりやすく吊るして置いた。ケータイは持ち主の元に戻る。誰も不幸にならんなよし。
「よこせ!舐めた真似をしてくれるもんだ。」
俺に対し半信半疑といったところだが、そうせざるおえないというところか。
◇
読み終わるのを待つ
「このシンドウという男というと話すことはできるか?」
「シンドウからの言付けがあります。私にあなたがカリノファミリアの幹部だということ証明できれば場を設けるとのことです。」
同盟の話を受け直接話を聞きたいってことか。即決しないのは当然想定内だ。
「証明だと?何を要求しているんだ。」
「カリノファミリアの幹部3人の所在かボスの所在を教えて頂ければよいとのことです。手紙を読めば意図が分かるのではとのことです。」
俺は同盟と引き換えにカリノファミリアでの座を上げてやると書いておいた。信じるか信じないかは知らんが、メリットは大きいだろう。
「足がついたら身が滅ぶんでな。こちらが信用できる証明をしてみせろ。」
人の誘導とは実に面白い。必然的にそうなると思った。こちらが証明を求めればこちらの証明も求めてくると。
「シンドウからの言付けがあります。この場に用意した2人は知と体においてあなた方のボスに勝てる逸材である。そちらで何か勝負を仕掛けてみるがいい。必然的にその2人より上の実力の俺を信用するだろうとのことです。」
「信用は実力で証明するということか。確かにそれはこの場所では最も信用に足りる。いいだろう。」
物分かりのいいやつで大変好感が持てるな。
さぁどんな勝負を仕掛けたくるか楽しみだ。
さてミーアと鉢巻はいるのか!