第八話「就職活動」
「……でさでさ、ボクいいもの見つけたんだけど」
噴水が特徴的な広場のベンチに座り、クリスがそう切り出した。
「お、何だ?」「なに?」 ジェイドとライズも同じように座る。
私もクリスのほうを見ながら、四人用ベンチの端に座った。 装備のせいでわりと狭い。
「えっとねー……旅って、お金いるでしょ?今も足りてないし」
「そうよね……、このステータスにこの装備って、似合ってないわね」
ライズの口から、私は知らない内部事情(?)が飛び出す。
えっ、この籠手わりと気に入ってたんだけど……、ボロいんだ。
「だからねっ、ギルドにでも入ろうかと思って!」
「……ギルド?」
素っ頓狂な声を漏らした私。 何だっけ、ギルドって。
「…………アリア、忘れてるのか?」 そう言うと、ジェイドが誇らしげに解説を始めた。
「起源はおよそ五百年前にさかのぼって……まぁいいや、だいたい会社みたいなもんだ」
「……ほう、なるほど」 「……かいしゃー?」
ジェイドがしまった、という顔をする。 クリスには通じなかったし、この世界にはないわけか。
……だったら、私の身元がばれるんじゃないか?
まあバレたとしても、不都合はないけど……。 いざという時の切り札にとっときたい。
「あ、あぁ……ギルドマスターの所に冒険者が集まって、依頼をこなせば収入がもらえる」
もちろんランク付けもあるぞー、と付け加えるジェイド。
「そういえば、アリアって身分証明とか持ってるの?」
「……ここのそういうのって、何があるんだ、ジェイド? 保険証みたいなの」
「ほけ……っ、冒険者には冒険手帳で、一般市民は……土地の権利証っぽいのがある」
あ、オープンに切り札を捨ててしまった。
「……ほう、手帳ねぇ」
「無くしてるのー? たぶんギルドに、発行の機械あるよ」
そっちのほうが、ギルド名も刻まれて……表紙が格好いい見た目になるらしい。
とりあえず、時間はもう夕方から夜に変わりそうなので、
私ら一行はクリスが見たというギルドを探しに行くことになった。
◆
「……あっ! ここだーっ!」 元気もりもりなボクっ娘。
やっぱりロリというのは走っても疲れないようで、目的地についただけでも無邪気に喜んでいる。
――そういえば、三人の年齢っていくつなんだろ?
「……うーん、私は15。 人間の基準とは、違うかもしれないけどね」
あれ、ライズって人間じゃないの?
「あら、そう言えば知らせてなかったか……。 一応私、半分はエルフなのよ?」
「…………俺は19」
ハーフエルフということにびっくらこいた様子で、ジェイドは自分の年齢を呟いた。
「知らなかった……。 あ、私も15だ」
「なにやってるのーっ、行こうよ! 夜になっちゃうよ」
「あ、ごめん。 年齢聞いてた」
「えーっ、だったらボクも入れてよーっ!」 ふくれっ面になるクリス。かわいい。
「アリアはいくつなの?」
「ライズと同じ、華の十五歳だ」 「……鼻?」
あ、わかんなかったか。
「まぁいいや……。ボクは10! もうじき11になるよーっ」
ギルド入るんじゃなかったのか?
「あ、そうだった……。 行こ行こっ!」
クリスはそう言うと、まるで小学生の遠足(行きの序盤に限る)のようにウキウキで歩き出した。
――そういえば、三人のこと…私はまだまだ知らないんだよな。
そもそも会ってから五日くらいしか経ってないし、一緒に冒険するのなんかは今日が初めてだし。
だったらもう少し積極的に質問して、せめて一般常識とメンバーのプロフィールくらいは覚えておこう。
……あと、ジェイド初登場の時の、見せつけるようなご都合ハーレム武装は何だったのか。
あの人たちは、あそこの住人だったらしいけど……。
何故ジェイドがモテる? 出発の時も「行かないで」って泣かれたぞ。
まぁいいや。
そうやって思考を廃棄した私の目の前には、一面が白と青の、ギルド内部が広がっていた。




