第五話「武器は覚醒に必要でしょうか?」
「…わぁっ、いつきても城下町って広いね」
クリスが目を輝かせながら、広がる町を見渡している。
ジェイドとライズの二人は、もうすっかりこの光景にも慣れている様子で、腕を組んだり壁に寄り掛かったりしながら、暇そうにクリスを見つめていた。
一方の私はといえば、入ってすぐの場所にある、大きな武器屋にすっかり見惚れていた。
剣、槍、斧、短剣に太刀、杖、ハンマー、ムチ、そして籠手。
…あれ?私の認識では、籠手って防具なんだけども…。あと、金属だらけで、着用するときに痛そうだ。
そんなことを考えながら武器屋を見ていると、身体が勝手に動き出していた。
「あ、おいアリア!どこ行くんだ」
ジェイドの声が聞こえる。そんなに過保護にならなくても、私は迷子になんかならないぞ。
そもそも、数十歩移動しただけで到着する場所なんだ。
手早く場所を変更して、私は武器の数々をじっくりと眺める。
「――ん?」
そんな商品が陳列されている中にひとつ、貼られているポスターに気付いた。
入口からじゃあ、よく見えなかった場所だ。
大きな表題を読んでから、私の中のときめき…っぽい感情は膨れ上がる。
「っ! 大会だ…」
私が驚いた表情をしているのを見て、三人もこちらへと歩いてくる。
「アリアー、どうしたの?」
「これ、初心者~中級者専用の…武術大会、って!」
「…出るの~?武器とかは?」
「さっきまで欲しそうにしてたし、籠手でいいんじゃない?」
ライズの提案に、私は籠手を見つめて考えた。どう見ても金属だけの装備。
…痛くないのか?
「えぇ、どうせ下に長手袋つけるもの」
――そこでよくよく考えていれば、もしかすると私は違うものを選んでいたかもしれない。
だが、なんとなくの直感で、私は「…これがいい!」と叫んでいたのだった。
◆
「…じゃあ、これからは各自、自由行動だ。三時にはここへ戻ってくるように」
ジェイドの宣言で、私を含めたパーティーメンバーは、それぞれの目的地へと向かい散って行った。
先ほど購入して、早くも気に入ったこの装備。
腕に触れる、硬い手袋と、その上から何故かくっ付いている籠手を眺めながら、
私は西口の、遠くからでもはっきり見える大きな店へと向かう。
――冒険者も一般人も、店の周りには全く居ないような気がしたが、あまり気にせずに私は入店した。