第四話「移動は普通に歩きます」
「この辺り、アリアは知らないのー?」
「うん、落ちてきた後しか記憶なかったからな」
ここは町の外。
魔物がはびこる危険なフィールド…のはずなんだが、やけに冒険者も魔物も少ない。
不思議に思って聞いてみると、ジェイドは「ここだけだ、他の場所なんか、はびこりまくってるぞ」と答える。
そしてクリスにこう聞かれ、私もそう返したわけだ。
それにしても…。
――うーん、魔物がいない、というのは実に無念である。
町の中で、私はライズに(たまに)負けないくらいには強くなった、なのに!
どうやらチートを持っていた様子で、ジェイドにはどうしても、誰も勝てなかった。
だからせめて、初戦でも魔物に完勝できるカッコいい姿を…クリスと、まぁライズに見せつけたかったんだ…。
「……はぁ、残念」
「…? どうしたの、アリア?」 ライズが私に話しかけてくる。
――最近、私と彼女との仲が縮まった気がしている。一方通行なのかもしれないが、親友も夢じゃないな。
「…いや、なんでもない。にしても、これってどこに行くんだ?」
「とりあえず城下町まで行って、装備なんかを揃えるらしいわよ」
資金はどうするのかしら、と呟きながら、ライズは歩き続ける。
にしても、本当の本当に暇だ。
…というわけで、歩きながら、不思議な不思議な転生体験談を披露してみることにする。
私はご存知の通り、空から落ちてきた青髪の少女――自分では空の天使とか呼んでいるのだが――であり、町で意識を取り戻してから、少しづつ前世の記憶も取り戻す途中であった。
だが、最近は…なんというか、こっちの世界の色に染まりつつある気がするのだ。
前世では無愛想で脂肪が着きっぱなしで、そして仲間思いでも勇敢でも無かった私だが、今は表情豊かで(自己採点)美少女で、やればなんでもできそうな感覚を感じる。
中学校の時にも似たような万能感を感じていたような気がするが、こっちの私は本物だ。
で、これが最重要事項。
テンプレっぽい展開を見ても、テンプレだと判断できなくなっている!
やばい。超やばい。この私が、二次元のことを忘れるだなんて…っ!?
…ここまで来て考えてみたのは、この身体の持ち主のことであった。
もともとあった人物の身体を私が乗っ取ったことになるのか、私のために作られた身体なのか。
もしも答えが前者だったりしたら、この世界に染まってる現象も、元の精神と融合している、で説明もつくだろう。
でも、元の精神は生きていたのか?それとも死んでいるのか?
私が乗っ取った際に消滅でもしていたなら、元の身体の持ち主は…。
「アリアーっ、そろそろ着くよ!城下町っ♪」
考えがネガティブな方向に傾こうとしていた時、クリスの声が私の思考を遮った。
「…よし、わかった!」
私もそれ以上は後々考えることにして、前を向く。
広い門と、登れば疲れそうな長い階段の先に、大きな城がそびえていた。
「…うわ、広い」
「門でそんなこと言っててどうするの、登りましょ」
三人がそう言って軽々と登り始めているのを、私は面倒だなと思いながら眺める。
私も登ってみれば案外簡単だったのだが、そのことは実行するまで分からなかった。
精神と肉体の違いって、新鮮だけど違和感はすごいんだな…。




