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ANCIENT -無代譚-  作者: 美朱太
天地獄のはぐれ者
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7-7 雨のち晴れ

山にまで襲いかかりそうな高波が去って行った。海の表面には木片や、ガードレールが浮かんでいる。

現在海は山の少し下で流れており、砂浜は完全に飲み込まれていた。

この災害級の被害…。

だが翔や虎之助の活躍によって、亡くなった者は誰1人としていなかった。

 「ん…?」

舞は天使の様な顔を前にして目を覚ます。

だがその天使の長い髪は濡れていて…なんだか色気が増している気がする。

その天使の周りには…杏や玲那…颯や舞が助けた兄妹も…同じ様に天使の後ろから顔を覗かせる。

 「お…おはよう!舞さん!」

…そして舞は気づく…この天使は風華だ。このノリは何回もされているが今回は舞だ。風華に気がつくとすぐに顔が真っ赤になる。

なぜなら…風華に膝枕されているのだもの。

 「頭…痛くない…?大丈夫?」

 「う!うん…!大丈夫!」

 「舞が起きたよぉぉ!杏んんっ!」

 「良かったぁぁっ!」

杏と玲那はぴょんぴょん跳ねながら、年甲斐もなく抱きしめあって喜びを分かち合う。

そして一通り喜んだ後に気づく…喧嘩をしていたのだと!

 「あっ…その玲那ごめんね…?」

 「ううん!私も悪かったんだよ!」

 「え!?いやっ!玲那は!」

 「杏の以外な一面も見れちゃいましたなぁ〜?」

 「あちょ!玲那また喧嘩する事になるよ!」

 「ウチはもう大人なので!怒りませーん!」

なんと眼福な光景なんだろう。

2人は喧嘩…と言うよりじゃれつきながらどこかへ向かっていく。颯も舞の手を掴んで泣いていて…。

役目を終えたと感じた風華も静かに立ち上がる。

 「待って!お兄ちゃん!」

歩こうとするものの小さな手に阻まれる。

この可愛い声はどうやら妹ちゃんの方だ。

この舞が助けた兄妹は風華が砂遊びをしていた子と同じ子達なのだ。

風華はそれに気付くとしゃがんで視界を合わせる。

 「どうしたの?」

 「俺はいいの!あのお姉ちゃんはどうも俺のこと苦手らしくて…」

 「俺が話したくても話せないんだよ」

 「お兄ちゃんははなしたくないの?」

 「そ…それは…」

 「おねえちゃん連れてきてた時お兄ちゃん泣いてたよ?」

 「うんうん!泣いてたよ?」

勘のいい子供は嫌いだぜ!と言いたいが、この無邪気な笑みが大好きだ。

 「でも…!」

 「でもでもでもでもって!」

 「お兄ちゃん見た目も女の子なのに!言い訳ばっかじゃオトコらしくないぞ!」

 「うんうん!オトコらしくないー!」

 「うぅ…そんな酷いこと言うの?」

 「ついてきて!」

妹ちゃんに小指を掴まれる。…抵抗しようにも抵抗ができない。足は自然に進んでいく。

 「風華?」

 「ふ…!風華くん?」

舞を胸を隠す様に肩を抑える。別に颯に膝枕してもらっているわけではなくて、今は上半身だけを起き上がらせている。

風華は胸を隠す舞の姿にちょっとショックを受ける。

だがそんなことしらない妹ちゃんは風華の背中を押す。普通にこの子も力が強い。

 「ねぇねぇ!お姉ちゃん!」

 「な!何!?どうしたの!?」

 「お兄ちゃんがお姉ちゃんと話したいんだってっ!」

 「ちょっと!嘘つかないで!」

 「…ふんッ風華くんの嘘つき…!」

あんなに真っ赤な顔をしていた舞は、今じゃ頬を膨らませてそっぽを向いている。

舞は期待する様な目で風華を見るが…風華は頭をポリポリと掻いている。

2人の間には沈黙の時間が流れる…。

 「へくちゅ!」

その沈黙は舞の赤ちゃんパンダの様な大きなくしゃみによって切り裂かれる。

 「あ!あわッ!体が冷たいのか!」

 「はッ!じゃあこれ良かったら使って!」

 「き…汚くはないと思うから…!」

風華は自分のラッシュガードを脱ぐと、舞の肩にかけると舞は口元を隠しながら笑う。

その笑顔を見た風華もうっすらと笑う。

一度治ったかと思うと…ふと目が合うとまた笑い出す。

 「風華くんっ!ありがとおね!」

 「え…?俺何もしてないよッ!?」

 「ううん!私颯くんから聞いたもんっ!」

 「助けてくれてありがとう風華くんっ!」

舞の凄まじい笑顔が風華の視界いっぱいを包む。海くらい乾いてしまいそうなほどだ。

 「ッ…あ〜俺用事あったんだった」

 「また後でね舞…」

 「頑張るんだぞ!お兄ちゃん!」

 「うんうん!頑張れお兄ちゃん!」

颯のみならず…まだ子供の兄妹でさえも空気を読みその場から立ち去る。

そして取り残された2人にはまた沈黙が…。

 「お!お腹減ってない!?」

 「減ってないよ?」

 「喉乾いてない!?」

 「乾いてないよ?」

風華は大慌てだ。話題とも言えない話題を出すが悉く失敗する。多分デートとか向かないタイプの性格なんだろう。

その姿を見た舞は小さく笑ってから少し頬を含ませる。

 「風華くんっておへそ見える水着の方が好きなんだねっ!」

 「えッ!?そういうわけじゃないけど…」

 「でもさっ!風華くんはさっ!玲那ちゃんと杏ちゃんの水着は褒めてたじゃん?」

 「でも舞のは褒めてくれなかったよねっ!」

 「玲那ちゃんと杏ちゃんは細いからスタイル良いから良いけど…舞なんておチビでぷにぷにだから…」

 「お腹出したくてもだせないもんっ」

 「まぁ別に怒ってないけどねっ?」

 「あ…あの舞さんって…一人称名前だったっけ?」

風華が首を傾げて舞の顔を見る。

舞は顔を真っ赤にして頬を抑える。おもちみたいなほっぺたをしている。

 「う!嘘ぉ!舞って言ってた?」

 「うん…言ってた」

 「子供っぽいからお家だけで言ってたのに…」

 「風華くんと話してるとリラックスじゃうから普段の自分になっちゃうよぉ…」

 「これからは気をつけなきゃ…!」

 「お…俺は自分の名前で言うのも…その…」

 「そのっ…?」

恥ずかしがってそっぽを向いちゃう風華。

そんな風華に無意識に顔を近づけて首を傾げている舞。やっぱりあざとい美少女。

その姿を横目に見るとさらに風華は顔を真っ赤にしている。

 「か…可愛いと思うよ…?」

 「か…!かっ!かっー!」

 「可愛いっ!?可愛いって言った?」

 「…うん可愛いと思う」

 「あ!ありがとぉ!嬉しいなぁ〜!」

 「そんな事より〜舞さんごめんね…?」

突然風華は頭を下げる。サラサラの髪の毛が下に落ちている。やっぱり女の子にしか見えない。

 「実は俺…舞さんの水着が見えてなかったの…」

 「そうなのっ!?」

 「簡単に褒めて良いのか分からなくって…」

 「だから今改めて言わせてほしいんだけど…」

 「はっ!はいっ!なんでしょう!」

 「やっぱり可愛いね…舞さん」

 「ダ…ダメだよっ!風華くんっ!」

 「…えッ!?可愛いって嫌いだった…?」

 「違うもんっ!」

 「な…何がダメだったの…?」

舞は両手の人さじをツンツンとして、もじもじ体を動かしながら風華の顔を見る。完璧なる上目遣いだ。あざと過ぎる。

風華は頬を真っ赤にして舞の目を見る。

 「あにょね…そのね…」

 「ま…舞以外に…舞以外にねっ?」

 「うん…舞さん以外に…?」

 「やっ!やっぱり!違うもん!」

 「何がなの!?」

 「風華くんがダメな子だからダメなの!」

 「理不尽…」

舞は何故か満足そうにそっぽを向く。欲しいものが買ってもらえなくって拗ねてる子供にしか見えない!…が舞の胸部を見れば流石にそんな意見も出なくなってしまう。

甘い…いやあまりにも甘過ぎる恋愛模様。

仲良くコソコソと2人を見ていた杏と玲那はニヤニヤして顔を合わせる。もうすでに喧嘩をしていた事など忘れていそうだった。


風華が幸せな思いをしている間…

勇たちは空へ羽ばたいていた!


 「にゃぁぁっ!スピード落とせにゃぁぁ!」 

 「ふぉぉうッ!」

鳥を追い越すくらいのスピードで空を飛ぶ遥真。遥真に後ろから抱きつくモカ。

モカは余程怖いのか強く遥真を抱きしめている。少し首が痛いがモカの胸を背中に感じれるので遥真は顔が真っ赤だ。

そして遥真の足に黒縄を巻きつけて、水面を水切りの様に跳ねている勇。およそ主人公とは思えない醜態。

 「ま…まさか遥真まで空を飛べるとは…」


…10分くらい前の事。

一時的に山に避難していた遥真と勇、そしてモカは遠くで見えた海熊の姿を目にした。

 「…か…帰る?」

 「ダメにゃっ!」

 「どう考えてもあんな遠くにいる所に行ける訳ないだろ!」

 「海を走るんだにゃ!」

 「よしじゃあ猫娘(クゥニャン)行ってこーい!」

 「私は水NGなんだにゃ!」

勇とモカは頭を抱える。行こうにも行けない…そんなもどかしい恋の様な感覚だ。

だがただ1人…遥真は別の意味で頭を抱えていた。


----

能力説明サイト[四聖獣・青龍の強点]

その1,青龍は自然の力を吸い取って自然治癒が可能になるぞ!木とか海とかだ!大地の自然の力は吸い取れないぞ!

ただし吸い取りすぎると木は枯れて、海は蒸発してしまうから気をつけて使おう!

その2,青龍を使っていると一回の攻撃で二打当てられるぞ!某漫画の二重の極みの様なものだ!覚えやすくていいね!

ただし普通に2回分殴った判定だから凸凹を殴ったら拳が痛くなっちゃうぞ!

その2,翼を生やさないで飛行ができるぞ!海の上もいけちゃうんだぞ!

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なんと飛べてしまったのだ。

だが自信満々に「飛べるぜ!」なんて言う気なんてさらさらなかった。

だって遥真だって怖いんだもん!…舞がやったら可愛いが遥真がやったら怖いが勝つ。

 「俺も飛べないゾ」

勝俣すまん…!

 「…よし猫娘行け!」

 「水はダメなのにゃ!」

 「じゃあお風呂とかって…」

 「ちゃんと入ってるにゃんっ!」

 「頑張ってシャワー浴びてるのにゃ!」

声は女性の中では低めで口調はかっこいい感じなのに…「にゃ」がつくだけでこんなに可愛く見えてしまう。やっぱりにゃんにゃんは偉大なのだ。

 「とりあえず作戦会議する為にあっちの山に行くゾ」

 「え…それでもあの海渡らないといけないぞ?」

翔たちがいる山と遥真がいる山は違う。

しかも結構な距離、離れてて山と山の間には海があるのだ。信濃川の横幅の一番短い距離くらいの距離だ。150mくらい。

 「え?」

平気な顔をして空中は浮かぶ遥真。

勇もモカも空いた口が塞がらない。それは飛んだ事に驚いた訳ではなく、遥真のアホさに驚いたのだろう。

 「あ…」

 「ほ…本当にアホにゃね…」

 「くぅ…行くしかないのか…」

 「ほら降りてくるにゃ」

 「はい…」

残念そうに地面に降りてくる遥真。

 「よいしょにゃ…」

その遥真の背中に普通に飛び乗ってくるモカ。

本当にこの子は…男の子を知らなすぎる。ビキニって事を忘れてるのかな?

 「お…重くないにゃ?」

 「大丈夫!軽いゾ…」

ノンデリ遥真が言うんだから本当に軽いんだろう。遥真はそんな事あんまり気にしてない気がする。

なぜなら!抱きついてきたモカの顔が近すぎるからだ!

どこか非現実的なその美しい容姿に遥真は顔を赤くしてしまう。昨日まで月にいたと言われても納得できてしまう。

 「お…俺はどうすんだ?」

 「勇は黒縄を俺の足にでも括りつけとけばいいゾ」

 「い…一応主人公なんですけど…」

勇は悲しそうに黒縄を遥真の足に括り付ける。落ちない様に念入りに括り付ける。


そして現在…

 「早くて怖いにゃぁ…」

 「え?」

あの強い口調のわりにその弱々しい言葉に遥真のドSが解放される。


 ビュンッ!


モカの要望とは真逆にさらに速度が早まる。

モカの長い髪の毛は後ろに靡き、モカの表情は真っ青に染まってしまう。

 「お…おいっ!バカにゃぁ!」


 ぴちゃ!ぴちゃ!


被害に遭っていたのはモカだけでなく、もちろん水面で水切り状態の勇もだ。

多分今頃尻が真っ赤になっている。お猿さんのボスとして君臨できるかも知れない。

3人は海熊の元へと向かう。


荒れ狂う海…灰色の雲からは雷が落ちる。

その雲にまで届きそうなほどの巨大な人型がいた。

 「数千年前とは大きく変わっタナ…」

海熊は口に手を開けて大きなあくびをする。

その腕を上げた衝撃で波が発生して、山の木々を削り取り水中へと連れ去る。

 「人々は愚かダナ…」

 「傲慢で怠惰…人は人同士で殺し合い…自然を破壊スル…」

 「一度崩れて仕舞えば全ては崩れ行ク…」

 「波よ暴ウレ…世を洗い流セ…ッ!」

海熊は胸の前で両手を合わせる。

海が震え出し…円形状に波が発生する。

雷は激しく降り出し海へと落ちる。

 「怒海吸雷…」

次の投稿は日曜日19時です。

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