2-1 変態な神様"笑伝"
ヴォアとの戦いから2週間が経った。つまり退院の日の夜。
2日くらい前には痛みは引いていて一日中動画を見漁っていたがギガが無くなった。病院のひょろひょろ回線じゃ動画も見えやしない。
退屈な日々を過ごしていた勇だが…
摩訶不思議な夢を見た。
一枚の紙が張り巡らされた様な真っ白な風景にポツンと佇む自分を空から見る。ゲームをやっている様な気分だ。
至って普通の夢と言われたらそれでお終い…
だが最近神の使いやら宇宙人やら…証拠を出せと言われたら難しいレベルのSFチックのものがありふれすぎている。
そのせいでなんでもかんでもSFに結びつけたくなるのだ…ふっ…普通の人間には理解することの出来ない悩みなのだがね。
顔が見えない事をいい事にするドヤ顔…。
すると目の前の白色にドアノブが生える。
意味がわからないがこれは事実です。
そのノブが周り本当のドアの様に開くと…
中からは老人が一人でてくる。
「お待たC〜」
おそらく今まで誰も使っていない言葉を発する老人。はっきり言うとかなり滑っている。
いや…今はマイノリティが尊重される時代。
自分には刺さらなかった…に変えておこう。
マイノリティなどどうでもいいことだが…。
「君が霊愛が言っていた勇くんかい?」
霊愛…あまりにも懐かしい響きだ。
…って言うかなんでこんな不潔な老人が霊愛を知っているんだ?
服も黄ばんでるし…歯もピアノみたいに黒い部分あるし…
口の中もなんかネチョネチョしてそうだしetc…
事実を題材にした偏見は止まらない。
ボロクソに言われている事を知らない老人は鼻に手を突っ込む。見えてはいるのに…。
「返事してくれないのは勘弁だちょ〜」
SNSのコメント欄に良くいる絵文字使いまくるお年寄りと同じ感覚なのだろうか…。
気持ち悪いがその気持ち悪さは会話のスパイスにも成り得そうだった。
「ありゃ!そうじゃそうじゃ!」
「三人称視点にしてたまんまじゃった!」
「ワシったらおっちょこちょいじゃなぁ〜」
ゲームでしか聴いたことのない言葉。
何故か目の前が暗くなる。
不思議と怖いとは思わなかった。
そして指パッチンの音が聞こえて目を開けると
…眼前には歯抜けで不潔の老人がいた。
「ほいもう喋れるじゃろ?」
生ゴミを煮詰めた様な息の匂い。
…などではなくさくらんぼの様な甘くてフルーティな匂いがする。理想とするJKの様だ。
服も黄ばんでいるクセにフローラルの匂い。
偏見はあまり良くない事だと脳内のメモに残しておこう。
「俺はその勇だけど…」
「やっぱりそうじゃったか!」
「なんで霊愛の事を知ってるんだ?」
率直な疑問ぶつける。
すると老人は満面の笑みを見せつける。
わおびっくり!歯がボロボロだ!
「霊愛はワシの部下じゃよ」
「ぶ…部下…!?」
確か霊愛は"神の使い"を自称していたはず
つまりこの目の前の老人は…
老人の背後に白い渦が巻く。
そこから見覚えのある男の姿が浮かび上がる。
「神様!危険ですので先に行かないでってあれほど行ったでしょう?」
「全く…口に納豆とドリアン混ぜて突っ込みますよ」
「れ…霊愛!?それに神様って…」
何に影響されたのか口が悪くなっているが、このくどいほどのイケメンフェイスは霊愛しかいない。数ヶ月会わない覚悟だったが…まさか一週間で再開する事になるとは…。
霊愛も勇の顔を見ると少しニヤつく。
だがすぐ元の澄ました顔に戻る。
「ふ…ふふん!久しぶりだな…」
かわいいかッ!っとツッコミたくなる。
目の前の歯抜け老人は口を大きく開けて、両手でピースを作る。
「ワシの名前は"笑伝"じゃ!」
「趣味で神様やっとるよろしゅ〜頼むじょ」
笑伝、笑いを伝える…という漢字は素晴らしい。
だが笑わせ方が一昔前過ぎる。
完全そこそこ上の位のおっさんがスナックとかでやってるギャグだ。それに霊愛が無理して笑ってる姿も容易に想像できる。
「ほ…本当にこの歯抜けが…神様なのか?」
「おいッ!神様に向かってボケ歯抜けおもんない老人とはなんだ!」
「そんな言ってないだろ!」
「それはお前が思ってることだろ多分ッ!」
「このお方は私たち神の使いの全てを従え…」
「人間の生死の全て操れるお方なんだぞ!」
「まっ!しょ〜ゆ〜こっちゃ〜」
「まじ?」
「まじじゃ〜」
笑伝は歯の抜けた口を開いたまま頷く。
この余裕…ガチのマヂの神様なのだろう。
地球も落ちたもんだぜ…全くよ。
「で…その神様が俺に何の用で?」
「口の聞き方に気をつけろ!」
「よいよいワシはそんなちっちゃい事気にせん!」
「べぇっ!」
「べぇっ!」
霊愛と勇のあかんべえのぶつかり合い。
そんな二人をよそに半開きだった笑伝の目がガッと開く。それにしても小さいが…。
空気が揺れている。体には鳥肌が駆ける。
「先の戦いでは霊愛と二人でのヴォアの退治ご苦労じゃった…」
「…いやッ!」
「焦るな…全部知っておる」
「は…はい…」
勇はしょぼん…と肩を落とす。
笑伝の後ろで口を押さえる霊愛。はしゃいでる。
「霊愛から全て聞いておる」
「風華というお前の親友の幽霊が助けてくれたのじゃろ?」
「そうだ!」
食い気味に勇が入ってくるが、笑伝は顔色を微塵も変えずにただ頷く。
圧倒的なオーラにこの寛容さ…
笑伝が神様な理由がなんとなく分かってしまう。まぁ納得はする気は無いが…。
「人の霊魂はその人物の本質を表すと昔から言われている」
「悪の心が多い者は悪事を働く」
「善の心が多い者は人を救い出す」
「そう無意識になってしまうものじゃ…」
「その親友はさぞ優しい子じゃったんじゃろうな…」
「風華は…この世で一番優しい奴だ…」
「うむ存じておる」
「じゃが…悲しくも死んでしまえば人と言うものは終わりじゃ」
「あぁ…」
「そこでじゃ!」
突然顔を近づけてくる笑伝。
不敬だとは分かっているがとても嫌だ。
別に臭くはないが…とにかく嫌だ。
「霊愛は現在…神の使いの見習いとなった」
「えッ…!?」
「でも!ヴォアは!」
「あぁ実際に倒したぞ!」
「…その通り」
「だが風華という者を復活させることを勧めてきおったのじゃよ」
「自分の地位など捨ててな」
「たまには良いところもあるじゃろ?」
「たまには余計ですッ!」
「れ…霊愛…!」
ただの無能エリートだと思ってた。
だが実際は熱い男だった…
心の中で"宝の持ち腐れ男"と読んでいた事を謝罪する。
霊愛は照れているのか目を瞑っている。な…!なんか!モテそう!
「ワシもそんな霊愛が勧めるそんな男の姿を一目見ておきたい」
「風華という者の蘇生はワシがしてやる」
「本当か!?」
「マジマジのガチガチ!…じゃが」
「…じゃが?」
「バターじゃ」
「は?」
「じょ!冗談じゃ!」
「じ…実はな一人蘇生するのにも大分銭がかかってのぉ…」
「天国も物価高に苦しめられておるんじゃ」
知りたくもない天国の経済情報。昔天国は何でもあるところだと思っていたが…こんなに困窮してるとは。
あまり人と神を離して考えても無駄なのかも知れない、これだけ見るとあんまり変わらなそうだし…。
とりあえずその情報を右から左に流して笑伝に耳を傾ける。
「最近ヴォアを代表に地球にいてはならぬ存在の活動が目立って来ておる」
「人で言う宇宙人や…地球外生命体ちゅーのかのぉ…」
宇宙人と地球外生命体の違いは専門家じゃないから分からない。…がそう言うオカルトチックなものはたまに動画で見ている。なかなかに面白い。
特にコメント欄で争っている奴を見るのが最高に面白い。まぢ爆笑。
「風華という者を蘇生する代わりに」
「その地球にいてはならぬ存在を討伐してもらいたい」
ようするに蘇生するから代わりに怪物を倒してね!ってことで実に単純なお願い。
…だが一つ疑問が浮かび上がる。
「どうやってそいつらを倒すんだ…?」
「今回はたまたま霊愛と風華の霊がいてくれたから倒せた…」
「でも次はそんなに都合良くいかないだろ?」
笑伝は「ふぉっふぉっふぉっ!」と仙人の様な高笑いをする。
何か隠し玉があるかの様に…。
「焦るでない!」
「ワシから一つお主らに能力を授けてやるんじゃ〜」
「の…能力!?」
最近SFチックなものを無数に見て来た…。
大概のことでは驚かない体になっていると思っていたが、まさか能力とは…
捨てたはずの厨二心がなかなかに燻られる。一週間ぶりにだが…。
「火を操るじゃとか…時間を司るじゃとか…最近の流行ってる能力系アニメの能力はほとんどあるじょ」
「え!あのなんとか展開ってやつも!?」
「それはないが」
火を操る…時間を司る…
厨二病が喜びそうな能力の羅列だ。
例に漏れず万年厨二病の勇の心は踊る。
「まぁ能力は完全ランダムじゃ」
「選ばせてくれないのかよ!」
「仕方ないじゃろ?強い能力ばっか取られたら天国は崩壊しちゃうじょ?」
「あんたのポケット能力から出すのか…」
「そうじゃ」
「ほとんど当たりだから安心して引くんじゃ」
「ハズレの確率はガチャ限が当たる確率は並みじゃな」
「なるほど!」
「絶対に当たりが出るガチャなんだな!」
悲しいが昨日も50連爆死した。
某ボール飛ばしスマホゲームだ。許せん!
…が神引きもその分するからやっぱ許す。この前限定が10連で4体出た。
「勝負は一回きり…早速やるか?」
「やる!やらせてくれ!」
ガバッと黄ばんだ着流しを開く。
ヨボヨボの体にくすんだ黄色の乳首。ピンクとか茶色とかその系統じゃ無い。下品で申し訳ないが小便みたいな色…。
だがかっこよさには変えられない!飛び込む勇の腕!
笑伝の懐は無限の空間が広がっていた。
懐が広いとはまさにこの事!なんとつまらない!
そしてある一つの木の板をそこから取り出す。
「…!」
その板には一筆書きで何か書いてある。
おそらくこれが能力名…。
「なんじゃ!なんじゃ!」
「縄を操る能力…!」
「おぉ!これは…!」
「まさか大当たり!?」
「普通にハズレじゃ」
「は…ハズレ!?」
「まぁ大ハズレじゃなくてマシだと捉えよ」
「大ハズレだと…?」
「便座をキレイにする能力とかじゃな」
「まだマシだ…ふぅ…」
とりあえず最悪の事態は避けれた。
だがハズレを引いたのは紛れもない事実!
「能力の説明サイトは脳みそに刻み込まれてるはずじゃ」
「後でじっくり読んでおくのじゃ」
目を瞑るとマウスカーソルが見えてくる。
『縄の能力使用方法』と書かれてある部分をクリックすると色々な言葉が出てくる。
使用例として挙げられているのはソファに座りながら遠くの物を取ること…。
背中などの手の届かない場所を掻いたり…。
可愛い天使たちを痴漢したり…。
おそらく笑伝の私生活で一番使用していた能力はこれだろう。あまりにも生活感があり過ぎる能力説明だ。ち…痴漢はしてないと神に願おう。神は目の前にいるが…。
静かに爆死していた勇の後ろで何か作業をしていた霊愛が爽やかな顔で、こちらへ向かってくる。
体育祭とかでモテるタイプの爽やかさ。
「神様!」
「風華の魂と霊体を見つけました」
「お〜よしゃよしゃワシの前に連れておくんなまし〜」
「はっ…!」
霊愛が黄金に輝く杖を地面に二回突くと白い渦が現る。
そしてその渦が消えるとそこには…。
風華がいた。
それも損傷した部分もなく…普段の可愛い顔だ。顔も腫れていない。四肢の縫い目もない。
状況を掴めていないのか辺りをキョロキョロしている。…幼さが増した様な気もする。
内股座りでチョコンと座る姿は男の勇にも母性を与える。
「誰…おじさん…」
霊愛は風華に黄金の杖を向ける。
「貴様ッ!不敬だぞ!」
だが笑伝は言葉を発さずその霊愛の杖を静かに退ける。
ヨボヨボな手を前に出しながら、ゆっくりと風華の元へ近づいていく。…その手は微かに震えていた。
「めごい…めごいじょ!」
「めごすぎるじょ!」
「な!何ぃ!?」
風華の全身から鳥肌が立つのがわかる。
そして生前の運動音痴だった風華からは考えられないほどの速さで勇の背中に隠れる。
完全に猫でしかない。心なしか猫耳としっぽが見える。
「勇!変態がいるよ!?」
「って!なんで勇がいるの!?」
「俺死んだんだよね!?勇ももしかして!?」
風華がここに来る前に済ませた会話を余す事なく全て伝える。
蘇生されることになった事…代わりに能力を付与される事…ヴォアの様な地球外生命体と戦わなければならない事を…
出来るだけ恐ろしく話す。
正直あんな痛い思いをした風華にはこんな話を受けてほしくない…。
もちろん生き返ってほしい。
だが親友が死ぬ姿はもう二度見たくない。
これが全てだった。
「ど…どうすんだ?」
「俺が風華の代わりに死んで…」
「風華を蘇生して貰うことも考えたんだけど…」
「むっ!そんなのヤダよ!」
「勇は俺の大親友なんだから!生きてて」
「じゃあ能力を貰うのか…?」
「うん!」
「へっへっへ!強い能力貰ったら爆モテ間違いなし…!」
嫌〜な笑みを浮かべる。小悪魔の様だ。
やっぱり性格は好奇心旺盛で次女っぽい。男だが。
そして色々と妄想を呟いた後…
「神様〜!」と高い声を上げて笑伝の元へ走り出す。
肘を曲げて完全なる女の子走り…!普段から練習していたのか!?
「神様ぁ…!私頑張るから強い能力欲しいの!」
「一つじゃなくってい〜っぱい!」
人間は欲望の為ならなんでもするのか…。
10年来の親友が恥というものを投げ捨て、必死に媚を売る姿を目の前で見る。お尻もフリフリ振っている。
この苦痛に耐えきれない…。美人が呆れるぜ。
せめてもの抵抗で目を背けることしかできない。
「ほ〜!しょ〜か!しょ〜か!」
「ワシの能力から好きなの選んでちょ!」
「風華ちゃんなら許しちゃる!」
「え!?どうゆう事だよ!」
「完全ランダムって言ってただろ!?」
「めごい子は別なんじゃよ」
やはり神も人も変わらない!
悔しいがこの世は顔が良ければ良いのだ!
顔が良ければ世界は回るんだ!悲しすぎる!
逃げ場のない怒りが脳を回る。まぁ本当に怒ってはないが…。
笑伝の懐をじっくりと見る風華を横目に霊愛の元へ近づく。
耐え難い悲しみのサンドバッグが見つかった。
「霊愛どうゆう事なんだよぉ!!」
「神様は無類の女好きなんだ…」
「しかも風華のロリのあざとさは神様のタイプのど真ん中を捉えているんだよ」
「顔も可愛いし…」
「しかし…私が注意しても一向に治らない」
「むしろ悪化してる」
「女好きって…風華は男だぞ?」
「バ!バカな事を言うな!」
「股間見たら分かるぞ」
「ほ…本当だ…極めて自然なもっこり…」
「ズボンの上からでも仕上がってるのが分かる…!」
能力を選び終わったのか風華は勇の元へ駆け寄ってくる。無邪気すぎる。
「おい…風華とやら」
「はい?」
「神様を騙すと痛い目をみるぞ?」
「騙してません!」
「男同士で接してるつもりなんですも〜ん!」
あざとく語尾を伸ばす。
「ふふんっ」と鼻息を漏らすと勇の腕を掴む。
そして耳元に口を近づけてくる。
風華が女なら爆モテ間違えなし。風華の擬似彼氏体験を自然としちゃっている。
風華は完全に生まれてくる性別を間違えたな。
「神様がサービスで身体能力向上の能力も付けてくれるんだって!」
「俺にもか!?」
「もちろん!行こ?」
「おう…!」
風華の手引きで勇も笑伝の前に立つ。
まぁ自分が強くなれるんだから断れる訳ないよねって話で…。
二人で笑伝の懐に手を入れて木の板を取り出す。
ドッキリで自分だけ"便器を綺麗にする能力"とか書いてあるのかと思ったが…普通に"身体能力向上"と書いてあった。そこまで笑伝は腐ってなかった。
その後ろで霊愛は羨ましそうに見ていた。
「神様そろそろ風華の蘇生を…」
「おぉ!そうじゃったの!」
「風華ちゃん蘇生しちゃるから寝転ぶんじゃ」
「むぅ〜神様ぁ〜変な事しちゃダメだよぉ?」
「どっちなんじゃ!?どっちなんじゃ!?」
「例え神様でもそれはセクハラです」
「世の中厳しいのぉ…」
笑伝の目の前で横たわり目を瞑る風華。
風華の無防備な体を舐める様に見ている。
何か本当に変な事をするのでは…!?と身構えたが笑伝は何もせず両手を合わせる。
神といえど世間の目が怖いのだろう。
「いくじょ…」
天国の言葉なのだろうか…
意味は分からないが意味のありそうな呪文を笑伝は繰り返し唱える。
霊愛は笑伝の後ろで同じポーズをとり同じ呪文を唱えている。
完全に勇だけ浮いている。ちょこんと端っこに体育座りをしているだけだ…。何もすることがないのだから仕方がない。
真似をしようかとも思ったがなんか恥ずい。
その状態は20分間続いた。
儀式は何事もなく終わる。
そう思っていた矢先…
「ウグッ…ッ!!」
笑伝が苦しそうな声を上げて倒れる。
風華の上に覆い被さっていたことから…偶然を装ってのセクハラか…?と勘繰るが、霊愛の表情から何やら只事ではなさそうだった。
勇も慌てて駆け寄るとその足音で風華も目を覚ます。…こいつ睡眠時間とでも思っていたのか…?てかこれ一応夢の中だと思うんだけど…。
「まさか…!」
その2時間後…
「ん…?ワシのベッドの上じゃ…」
何事もなく目が覚める。
「神様…能力の譲渡は1日3回までという決まりでした…」
「しょか…しょか…風華ちゃんがめごくてついつい…」
笑伝は寿命が〜とか持病で〜とかじゃなく、普通に能力の上げすぎのせいで倒れた。
命に別状はない。
「ワシも老いたの〜」
歳をとっても性欲は衰えない。
「申し訳ございません…」
「私がついておりながらその事を失念しておりました…」
頭を下げる霊愛。これに関しては霊愛は全く悪くない。むしろ霊愛はここまで一人で運んだのだから、褒めるべきだ。
「良いのじゃ良いのじゃ」
「それより風華ちゃんは何処じゃ?」
「ここだよぉ?」
ベッドの下からひょこっと顔を覗かせる風華。
相変わらずぶりっ子は続けている様だ。…いやフリではないかもしれないが…。
笑伝は風華の頭を撫でると少し顔を近づける。
「見ての通りワシは今能力を使えんのじゃ」
「うん…」
「だから蘇生はまた今度ちゅ〜事でええか?」
「こ…今度って…?」
「う〜む…体力が戻るのに1ヶ月くらいじゃから…」
「また1ヶ月後にここに来てくれたらしちゃる」
「え…?」
風華の穴という穴から汗が流れ落ちる。
笑伝のせいにしたい!…だがほとんど自分が調子に乗ったせいで笑伝は体力を使い切った…。
怒るにも怒れない…葛藤の表情をしている。
天罰が下ったのだろう。ここ天国だけど。
神様の下心で起こったことなんだけど。
「じゃあ私死んだままなのっ…!?」
笑伝はチッチッチッと音に合わせて指を振る。
「今は半分幽霊の状態…半分は人間の状態なのじゃ」
「私生活に影響は…?」
「実はほとんどありゃしないんじゃ!」
「そ!そうなんだ!良かったぁ!」
「まぁいつかその設定が活きる時が来るじょ」
「設定て…」
「ほとんど」と言う言葉がなんだか気になる…が風華が気にならないのならそれで良い。
「風華ちゃんは安心して暮らせば良いじょ」
「まっ!特にデメリットもNO,NO!じゃが気が向いたら完全に蘇生しちゃる」
「ま…まぁ風華ちゃんが良いならもっと沢山来てもらって…」
「神様ぁ!ありがとう!」
風華は笑伝の最後の言葉も聞かずに走り去っていく。何処にいくのかは…分からない。
だが風華が居なくなった事で、聞きたかった話をようやく霊愛に聞ける。
「ほとんどって言ってたけど…」
「あぁ生殖器が使えないんだ」
「もちろん排泄物は出す事はできるが…それ以外の用途では使えない」
「ほっ…」
「風華からしたら本当にノーデメリットで良かった」
「…」
どこに行けば良いのか分からなかった風華は、二人の歩く扉の後ろで静かに涙を流す。
事実は時に人を傷つける…。
周りに人がいないかを確認してから話さないといけない…。そう思った。




