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40.最終話 いただきますと、これから

 空は、よく晴れていた。

 

 魔王城の庭。

 

 今日は、特別な日。

 

「すごい人だね……」

 

 思わず、つぶやく。

 

 魔族。

 人間。

 村人たち。

 子どもたち。

 

 全部、いる。

 

 最初は、敵だったはずの人たちも。

 

 今は、同じ場所で笑っている。

 

「ミナ」

 

 名前を呼ばれる。

 

 振り向くと。

 

 ヴァルディス。

 

 いつもと同じ顔。

 でも。

 少しだけ、柔らかい。

 

「準備はいいか」

 

「うん」

 

 少しだけ、緊張している。

 

 でも。

 

 逃げたいとは思わない。

 

 

 ゆっくりと、歩き出す。

 

 視線が、集まる。

 

 魔王が、正面に立っている。

 

 その隣には、アウルディア王国の王と王妃。

 

 魔将軍たちも、並ぶ。

 

 リーヴェ。

 ガルディス。

 リュシアス。

 

 子どもたちが、こそこそとこちらを見ている。

 

 村人たちは、もう泣いている。

 

 

「静まれ」

 

 魔王の声が、響く。

 

 一瞬で、場が整う。

 

「本日」

 

 ゆっくりと、言葉が落ちる。

 

「我が息子、ヴァルディスと」

 

「異界の料理人、ミナの婚姻をここに宣言する」

 

 

 静寂。

 

 そして。

 

 大きな歓声。

 

「おめでとう!!」

「やったー!!」

 

 手を振る子どもたち。

 

 ガルディスが、大声で笑う。

「めでてぇな!!」

 

 リュシアスが、静かに頷く。

「良い選択だ」

 

 リーヴェが、小さく言う。

「当然だ」

 

 

 私は、思わず笑ってしまう。

 

 こんなに祝われるなんて。

 

 想像もしていなかった。

 

 

 ヴァルディスが、隣で言う。

 

「手を」

 

 差し出される。

 

 少しだけ、照れながら。

 

 その手を取る。

 

 

 あたたかい。

 

 しっかりと、繋がる。

 

 

「ミナ」

 

「うん」

 

「これからも」

 

 一瞬だけ、言葉を探す。

 

 そして。

 

「隣にいろ」

 

 

 少しだけ、笑ってしまう。

 

「うん」

 

「ずっといる」

 

 

 それで、十分だった。

 

 

「では」

 

 魔王が、少しだけ楽しそうに言う。

 

「祝宴といこう」

 

 

 その一言で。

 

 空気が、一気に弾ける。

 

 

 テーブルが並ぶ。

 

 料理が運ばれる。

 

 鍋が、火にかけられる。

 

 

「ミナー!」

 

 子どもたちが、駆け寄ってくる。

 

「今日は何作るの!?」

 

「いっぱい作るよ」

 

 笑って答える。

 

 

 ヴァルディスが、自然に隣に立つ。

 

「手伝う」

 

「うん、お願い」

 

 

 もう、当たり前みたいに。

 

 隣にいる。

 

 

 鍋をかき混ぜる。

 

 火を見て。

 

 味を整える。

 

 

 ふと、空を見る。

 

 青い空。

 

 その向こう。

 

(見てるかな)

 

 神様たち。

 

 きっと、どこかで笑っている。

 

 

 料理が、できあがる。

 

 湯気が、やさしく立ちのぼる。

 

 

 私は、振り向く。

 

 みんなが、待っている。

 

 

 魔族も。

 人間も。

 子どもも。

 大人も。

 

 

 全部が、ひとつの食卓に集まっている。

 

 

 胸が、あたたかくなる。

 

 

「それじゃあ」

 

 自然と、声が出る。

 

 

「いただきます!」

 

 

 声が重なる。

 

「いただきます!!」

 

 

 笑い声が、広がる。

 

 湯気が、空にのぼる。

 

 

 争いは、終わった。

 

 でも。

 

 物語は、終わらない。

 

 

 これからも。

 

 たくさん食べて。

 たくさん笑って。

 

 少しずつ、整えていく。

 

 

 この世界を。

 

 この日々を。

 

 

 ――胃袋から。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

また、新作を出す際はよろしくお願いします!

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