印された場所へ。
ユリアスは険しい表情で剣を構えてるけど、マフィアスは一切構えず両手をベルトに置き、完全に舐めてますスタイル。
でも……この状況は結構まずいかも……。
マフィアスの私兵が4人。しかもあれはかなりの手練れのはず。鎧が高そうだし。
いくらユリアスが強くても、さすがに、この状況じゃあ……この人数は絶対に荷が重い。
それに足でまとい確実の私のせいで、ユリアスが負けるかもしれない。
キャー! マフィアスの私兵の1人が私の腕を!!
リーシャ様!?
驚き振り返ったユリアスの背中をマフィアスが悪い顔でざっくり、と……。
なんてベタな事になりかねない!
とは言うものの、私は戦力外だし……いざとなればムギに頼るしかないのかも……かも……。
ムギは呑気に自分の前足舐めて毛繕いしている。
うぅ……可愛いムギ。
その時、谷の底から巨大な怪鳥のロックが咆哮をあげながら突然姿を現した。
マフィアスは全く動じてないけど、マフィアスの私兵達は驚きロックに気を取られている。
こ、これはチャンス!!
「ムギ、お願い」ムギは賢い。膝をついてしゃがんでくれた「ユリアス!!」
そして私とユリアスはムギの首元に飛び乗り、ムギが急いでこの場を離れてくれた。
見たわね、マフィアス! これが私の唯一の力、ヒロインパワーよ!
私達が逃げるのに気付いて、1人の兵士がクロスボウを向けてきた。あっ、まずい。でも荷物が上手く防いでくれれば……ん?
マフィアスが、私達に向けてボルトを放とうとしていた兵士の前に腕を伸ばし、何故か止めた。
もしかしてマフィアスって猫派だった?
後は急に立ち込めてきた霧で見えなくなってしまった。
――――
「よろしいのですか?」
「ああ。がめついのは嫌いらしい。それに会おうと思えば、いつでも会えるからな」
「マフィアス様。ロックを始末しました。」
「よくやった。また腕を上げたな」
「光栄です。」
しばらく後……。
「ムギ! どうどうどう!」
ムギはどうやらロックに驚いて逃げたいだけだったみたい。
そうだよね。ムギはああいうの苦手だもんね。
よしよし。
私が後頭部を撫でると、ムギは落ち着いて足を止め、喉をゴロゴロと鳴らし始めた。
でも私達を置いて逃げようとはしなかった。そこが本当に嬉しい。
「ムギ、ありがとう♪」
「本当に助かった。ムギ。礼を言わせてくれ。お前のおかげだ、ありがとう」
うんうん。
ムギはユリアスにも懐いてるみたいで良かった。
私とユリアスはムギから降りる。
ユリアスが先に降りて、私が降りるのに手を貸してくれた。少しドキッと。
でも、さすがにこんなに荷物を運んでもらっているのに、いつまでも乗せてもらってたらムギに申し訳ない。
そして、そして。
木々が生い茂る深い森の中へ少し進んでみた。
「リーシャ様……本当にこちらで合っているのですか?」
「うん、たぶん合っている……わっ!?」
躓いた私をさっとユリアスが支えてくれる。
「あっ//」
「大丈夫ですか?」
「う、うん」
「では行きましょう」
「うん……」
ユリアスの頼もしい後ろ姿にギュッと胸が締め付けられる。
初めて会った時から変わらず、ユリアスは優しく、頼もしいまま。
私がこんな状況になっても、何一つ変わらず側にいてくれて、支え、守ってくれる。
なんの見返りを求めることもなく。
こんな人、他に絶対にいない。
本来ユリアスは物語の中盤で……。
ああ、ユリアス、私が先頭よ。
危険では?
近付いただけで毒の胞子を出すキノコとか、踏んだだけで強力な酸を出す花が生えてる事があるの、だから私が先頭よ。
わ、分かりました。
よろしい〜♪ 人差し指で軽くユリアスを指す。ンフフ。
軽く笑うユリアス。
それからまた、足元に気を付けながら森を歩いていたら……既に日が落ち始め、辺りが暗くなってきていた。
昔もよく遅くまで、森でこんなことしてたっけな〜。
私はムギに掛けている四角い魔法のランプの明かりを灯す。
淡い黄色の灯りが足元照らしてくれる。
この世界の夜はフィクションと違い、ランプをつけたとしても足元以外真っ暗で何も見えない。漆黒そのもの。
見えるのは本当に数歩先ぐらいまで。
もしこんな不慣れな真っ暗の森の中に一人っきりだったら……絶対に無理!
「リーシャ様!」
「な、なにかあったの? あっ!」
ユリアスの指差す先を見る。
「使われなくなった狩猟用の、野営地のようですね」
ユリアスが剣の柄に手を置き、周囲を警戒している。
「ねぇユリアス、この地図なんだけど後どれくらいかな?」
「これは……また随分と大きく、古い地図ですね。未開なのであまり変わりはないでしょうが……。ん〜、これだと……まだまだ歩く事になりそうですね」
「はぁ~、そっか……。ユリアスはここで寝られる?」
「私は全然平気ですが、リー……」
「じゃあ決まり! 今日は終了! すぐに食事の用意するね♪」
「は、はい……。ですが、私は簡単な物で大丈夫です」
「ダメダメ、ちゃんとした物を食べないと。それに自分の為だけに料理を作るって、結構辛いのよ。一緒に食べてくれる人がいないと、ね?」
「はい。では私は、その間寝床を用意しておきます」
「うん♪ お願いね。あっ! あとあれもお願い」
「はい!」
さてさて、お楽しみの調理タ~イム♪
#__i_8297946f__#
実物を見たのは初めてだったけど本当に大きい。
鉤爪だけでムギを持ち上げられるほどの大きさだった。
でも火には弱いみたい。
マフィアス達はどうなったのかしら?
知るよしは……ないわね。
でも生きてるでしょう。ああいう連中はしぶといのが相場のはず。
ロックの卵はしばしば宗教で食べられているみたいらしい。
私も食べたことあるけど……正直、そこまで美味しくはない。
鶏の卵が薄味になった、そんな感じ。
例えるならダチョウの卵、かな。




