危険な追手。
音の正体は……。
そうそう、その前に。
私は元一般人、そして現一般人だから、巧妙に計算してうまくルートを操る! なんて高度なことは、不甲斐ないけれどできない……。
そして肝心な音の正体は馬。
馬が5頭もこちらへ向かって来ていたのだ。
こんなのルートになかった!
まあまあ落ち着け私。おおよその察しはつくってモンダミン(トウモロコシ)
少し遠い場所で馬が足を止め、先頭の騎士が馬から降りてこちらへ向かって歩いてくる。派手な鎧……とても目立つ。
もしかして、ムギを警戒しているのかしら?
にしてもあの鎧。青ベースに金装飾の……どこかで見たことある。
その騎士が立ち止まる。
えっ、意外と遠いわね……。
騎士が私達に何か言っている。
……ようだけどが小さくて聞こえない。
「聞こえないわ!!」
私が叫ぶと、騎士はもう少しこっちへと近付いて来てくれた。
騎士が兜を脱ぎ、急いで走ってきた従者? が受け取り、再び話し始めた。
「リーシャ様。久し振りだな。相変わらず、美しいこと」嫌味たっぷりで、皮肉っぽい言い回し。
彼は王国で最も顔が利く豪族のマフィアス。だったはず。
彼自身もなかなかの剣の腕を持つときてる。
王や皇帝、教皇にまでお金を貸し、操ろうとする危ない人。しかも金髪色白でイケメンの悪。ときて何重にも危ない。
バッドエンドルートでちょこっとしか出てこなかったのに、お金で靡かなかった私に付きまとい始めた、困った人。
彼は脇役なのに、主役を押しのけるほどの人気キャラ。
「マフィアス……」
「おやおや誰かと思えば、ユリアスじゃないか。貴様はなんて羨ま……いや、罪な反逆行為をしているんだ。その軽薄な行い、必ず後悔することになるぞ」
「リーシャ様を陥れるのに加担したのはお前だろ? それがこの結果だ!」
「あれは俺なりにリーシャを守ったんだ。だがお前みたいな奴とこうなるとはな……予想するべきだった」
「リーシャ様を想うのなら、ここは見逃すべきだ」
「おいおい何を勘違いしている。俺はリーシャを助けに来たんだ。富も権力も失った彼女を、この俺が養い、救ってやるのさ」
「人を物としか思わぬお前に、リーシャ様がついていくはずがないだろう」
「リーシャ。いま、私と共に王都へ戻るのであれば、その身は、この命に掛けて保障しよう。そこの騎士も見逃す。どうだい?」
「断るわ!!(即断)」
「ほう。変わらぬ威勢。ますます……いいか! 貴族が処刑されないと高を括っているようだが、死よりも辛い事だってあるんだぞ」
「今あなたと一緒に戻れば、どうなるか分かっているからよ。まるで鎖に繋がれたペットのように私を館に閉じ込め、あなたの欲を満たすだけの日々が待っているもの。処刑しない口実の、幽閉としてね」
あら……そういうルートも奇特なファンが作ったんだっけ? 公式じゃなくて……もう思わず言っちゃったわよ。
「それは……心外だな。他の者には悟られぬよう、身を隠させるのは当然だ」震えてる?? なんか凄い怒ってる?? それとも傷ついてる?「それに、君は今こそ、そういう気持ちだとしても、助けた俺にきっと感謝する時がくる。さあ共に来い。最後のチャンスだ。リーシャ!!」
ユリアスが小声で私に囁く「リーシャ様、ダメです」
「大丈夫よ、ユリアス。彼の口車なんかには絶対乗らないから。それに彼らはあなたとムギを過小評価しているわ」
ユリアスは少し不思議そうな表情をしている。
自覚がなくともユリアスは王国一、そして腕を磨けば世界一の騎士。
マフィアスはその事実を知らないお間抜けさん。




