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ムギ。

辺りは黒い岩肌に囲まれ、岩肌の隙間から緑の草が疎らに出てきている。

右側は……落ちたら二度と日を拝む事のできなさそうな断崖絶壁。


でも景色は綺麗。

どこまでも広がる自然豊かで壮大な景色。

木が鬱蒼としてないし、なにより建物も電線も視界に入らないこの景色は、とても最高。

けどこの緩やかな傾斜角が結構足にくる……。

舗装されてない道って、想像以上にしんどいのよね……。


天気は今にも雨が降りそうな黒い曇が空にた~くさん。

雨の変わりに心地良い風が吹いている。

結構この雨が降りそうで降らない曇りの中、風が吹いている天気が結構好きなのよね。


追放の地までの道のりはまだまだ長い。

前世は科学の恩恵を浴びに浴びて育った私は、少しでもこの旅が快適になるようできる限りの下準備をしてきた。


そう、この日の為に色々と用意してきたのだ。

当然そんな荷物が人間二人分で収まる訳もなく。

ムギに頼んで運んでもらっている。


ムギは簡単にいうと魔物。

そうそう、ムギとは聞くも涙、語るも涙な出会いが……。

なんて事はなく、要約すると単なる私の餌付けである。


周囲にバレてはならないので隠れて料理していたら……まあ森の中なんだけど。

日々料理スキルを上げる為、せっせと料理にせいを出していた私は最初、ムギの存在に気付いていなかった。


なんだかたまに料理が消えるなぁ~とか思っていたけど、ここは異世界。

特になにか起きても気にした事はなかった。


ムギは象並みに大きいのに臆病で優しい性格。

なにより大きな瞳に丸い顔、体がふわふわしていて仕草や行動がとても愛らしく……要するにデカい猫。

遠慮しながら…警戒しながら盗み食い。またそれも愛らしく感じる。


今はこうして私の側で私を守ってくれながら荷物を運んでくれている。

どの世界でも餌付け恐るべし?


「ん? どうしたのムギ? 疲れた?」

ムギが突然進むのをやめ、周囲をキョロキョロと見渡し始めた。ムギのキュートな耳がよく動き、目がまんまるになっている。

振り返って遠くをじっと見つめているムギを呼びながら撫でると、ムギは片耳を私に向けた後、私の方を向いて頭を下げ、私の体にスリスリと顔を当ててくる。

そしてまたすぐに何かが気になった様子で振り返り、じっと遠くを見つめたまま動かなくなる。

「なにか様子が変ですね……」

ユリアスが鞘にしまってある剣に手を当て、辺りを警戒する。


その時、微かにではあるけど、なにかの音が私にも聞こえてきた。

それは少しずつだけど次第に大きくなってきているのを感じる。


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