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精霊と歩む少女【旧バージョン】  作者: アインス
エピソード Ⅰ

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新たな旅路③ 訪れた村からの依頼 ゴブリン討伐

翌朝、村で目覚めた一行は酒場兼宿屋の女主人カンナに挨拶を済ませゴブリンとオーガが目撃されたという森に足を踏み入れた。


「森が騒ぎ出したわね。ソファ?準備はいい?」

「魔法使っていいからね?

 ゴブリンとオーガ討伐頑張って!

 あ、ピエールもこっちね」


セレナとノエルはそう言うと、振り返りもせず高台の丘へ向かった。


「ホントに行っちゃったよ…」

「おいてかれちゃったね」

溜息まじりの一言に足元からヤクモが返す。


「ヤクモ?どうしよっか?」

「てつだう?いいよ!」


「嬉しいけど…だめ。自分でなんとかしなきゃ」


「ソファ。ボクそれに入る?」

「えっ?また?」


ソファの腰のフレイルに飛びつきながらタッチするヤクモ。


「またこの核に入るの?

 …この間みたいに引っ張らない?」

「だいじょうぶ!」



―― ソファはイツカの館でフレイルを選んだ時のことを思い出す。



館の武器庫を開いたイツカが言う。

「ここの武器なら好きなの持ってっていいぜ?」


「なんでも…ですか?」

「嬢ちゃんはどれがいい?

 杖使ってたが…あれどうした?」

「ノエルに、この杖なら無い方がマシって言われて取り上げられちゃいました。」


「核もついてないホントただの杖じゃん。あんなのいらないよ!」


「魔法使うのに杖は無くても大丈夫。

 どうしても杖がいいなら、ここで選ぶ方がマシよ?」

武器を選びながらノエルとセレナが返す。



ふと見慣れない武器にソファが目を止める。


「おっ?それにしてみるか?」

「これ魔道具じゃん!核付きだし、これにしなよ!」

「杖としても使えそうね。…フレイルかしら?」


「魔道具って?」


そう言いながら武器を手に取ったソファ。


棒の両側に握りがあり、どちらも先端には魔物の核。


違いは片側には棒と核の間に編み込まれた糸のような物…。



目を奪われたのは両端の核の色。


紅蓮に輝く光の中に翡翠の輝きが見え隠れする。


「…試しに外で振ってみるか?」

イツカの問いかけに無言で頷き、武器庫を出たソファ。


「これ…色が…変わってる!」

「そうだっけ?」

ソファの驚きに首を傾げるノエル。


紅蓮の紅は消え、森羅の光のような翠の輝き。


片手、両手で2度3度と振ってみる。


不思議と手に馴染む感触。持ち手を変えて同じく素振りを繰り返した。


「この糸…伸びるかも。」

試しに少し魔力を流したソファ。


糸は魔力に呼応するかのように伸び、核がコトンと地に落ちた。


「この糸、アラネスの糸だね。」

「アラネス?」

ノエルの言葉に問い返すソファ。


「蜘蛛よ。ほぼ幻とされるSランク相当の巨大蜘蛛」

「魔力で伸び縮みすると思うよ。

 核も見たことないし、相当レアな武器だね。

 気になるんなら、これにしとけば?」


ソファが持つ武器に対しあれやこれやと3人で言い合っている足元で興味津々で核でじゃれるヤクモ。


「ヤクモ!やめ…」


突如核が眩い輝きを放ち、ヤクモが姿を消す。


「なに?ヤクモ!」


『ここだよ~。…入れちゃった…』


「!???」

驚き、核をマジマジと見る3人。


核は心臓が鼓動するように淡い光が揺らぎ、


静寂を照らす茜焔(あかねほむら)、森のような翠(みどり)と茜(あか)が溶け合いながら脈動する。



「入ったって…大丈夫なのヤクモ?」


『ユラユラきもちいいよ!』

そう言うと核は、ヤクモを模(かたど)るように姿を変える。


『どう?かっこいい?』

「いや…かわいい…かな?」

「どうなってんだろうね、これ?」


それまで3人を黙って見ていたイツカが声をかけた。

「振ってみろよ~。

 どこまで伸びるかやってみな」


軽い調子で声を掛けられ、動揺しながらもソファは体制を整えた。


「ヤクモ、振ってみていい?」

『ぜんぜんいいよー』


魔力を抑え恐る恐る前方にフレイルを振るった。


途端に聞こえるヤクモの大きな笑い声。


『ヒュ~ン!』


「大丈夫なのね?」

『たのしぃ~!』


「…分かった。ちょっとストップ」

『まだだいじょうぶ~。つぎあっち~』


「ちょっ!ヤクモ!…駄目!」



「ありゃ、だめだな」

「あれ散歩なの?」

「振り回されてるわね」

離れて見ていた3人の目にはフレイル(ヤクモ)に振り回されるソファの姿。


「駄目だったら!」

『さいご、あっち~!』


「「あっ!!」」



◇



「…ほんと~…に、引っ張らない?」

「だいじょうぶ!」

疑いの眼差しを向けるソファに尻尾をパタパタさせるヤクモ。


「……」「……」



「…分かった。でもルールを決めましょ」

屈(かが)んでヤクモを見つめるソファに尻尾をパタパタ。


「ハウス!って言ったら、

 こっちの糸の付いてる方に入ってね。

 で、デュオって言ったら、こっちに入る」

指差しヤクモを見つめるソファに尻尾をパタパタ。


「待て!って言ったら絶対戻ってくる。分かった?」

舌を出し鼻を舐め頷くヤクモ。


「やってみよっか、デュオ!」

輝きとともにフレイルの核がヤクモを模(かたど)った。


「『できた~』」


「ヤクモ、このまま魔法って使えるの?」

『できるよ。イメージしてみて』


「とりあえず索敵かな。

 この辺りにいるみたいだし…できる?」


『ん~、≪アルゴス≫って言ってみて』


「えっ?それだけ?…≪アルゴス≫」


詠唱とともにフレイルのヤクモの目が白銀に輝く。


瞬間、ソファの視界が自分を中心に全方位に開けた。


「何これ…」


『“見る”時はこう言うんだよ。

 なれるともっとよく見えるようになるよ』


ソファは視界に戸惑いながらも周囲を確認する。


少し向こうの丘では、振り返りこちらを見下ろすところの3人の姿を見付けた。


そのままぐるりと辺りを見回すと、ソファを挟んで3人とは反対側に


「…いた。ゴブリン。」

『みんなもこっち見てるね~』


「そうね。凄い。

 あそこにゴブリンがいるのが分かってて、あの丘に行ったんだ」


『セレナはエルフ。森がおうち!』

「フフッ。そうね。

 見つけたけど、どうしようか?

 …ゴブリンが20ちょっと…固まってる」


『ほのお!』

「…このままでできるのかな?」


『ん~、まだむりかな。

 ちゃんと見えるところに行ってみて』


ヤクモに言われるまま、ゴブリンを見渡せる位置へ移動するソファ。


「ここならちゃんと目で見えるよ。どうするの?」

『つぎ、よく見て、

 ≪ケルベロス≫って言ってみて』


――ソファにも聞き覚えがある、地獄の番犬の名前。


言葉の意味が分かったソファは、フレイルをゴブリンに向け構えた。


「いくよ≪ケルベロス≫」



◇



丘に着いた3人は、離れた時とそう変わらない位置にいるソファを見付け、腰を下ろした。


「1人で大丈夫なのか?」

「大丈夫でしょ~。

 ゴブリンまで少し距離あるし、

 オーガなんてもっと向こう!」

「ここからなら良く見えるし、援護も大丈夫よ。ソファがどうするのか…楽しみね」


「俺には見えないが…2人は見えているのか?」

「目で見えてるわけじゃないわよ」


「では魔法か?」

「どっちかって言うと精霊の力ね。

 周囲が見渡せるようになるの!」


「…“目”が開(ひら)いたようやねぇ」

「おぉ?こっちに気付いたなぁ」

シェルティとトラヴァスが同時に気付いた。


「ソファもヤクモと戦うみたいね!」

「楽しみ。どんな魔法が見れるのかしらね。」

3人からは、ソファがゴブリンの群れに近付く様がよく見えた。


「あそこから狙うつもりか?

 確かに奇襲が正解だとは思うが…」



――地を割るような咆哮が、森を貫いた。


轟音とともに赤黒い炎が渦を巻き、そこから現れたのは、三つの頭を持つ漆黒の獣


左の首は青白い業火を、右の首は紅蓮を、中央の首は黒炎を纏い、


三つの咆哮が重なると、大地が震え炎の奔流が四方へと迸った。



逃げ惑うゴブリンたちの影が、光と熱に焼かれながら弾け飛ぶ。


森の木々は燃えず、ただ“目標”のみを蹂躙し、残ったのは―沈黙と、熱。


灰となったゴブリンの残骸だけが風に流れた。

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