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白葉うるが家凸してきました。どうしましょう

家凸回です

 Vtuberをやる人間というのは独占欲が強いと思う。当然と言えば当然か。誰もが知ってる企業勢の事情は分からないけど、個人勢やサークル勢、小企業勢は1人でも多くの固定ファンを確保したくて日夜必死だ。で、リスナーなんだが、全員が全員いい人だったり優しい人間ばかりではない。中には配信荒らしたり、tubuyaitaで執拗に絡んだりと悪質な人間もいる。特に出会い厨なんかは最悪だ。Vtuberとリスナーの話はこれくらいにしてだ、紬さんの秘書になってから早いもので10日。1月も中盤に差し掛かる平日の深夜


「またか……」


 突然スマホが震えたかと思えば白葉うるからライ宛てにDMが届いたと通知が来ていた。彼女を知ったキッカケはしょうもない飯テロにいいねが飛んで来たのがキッカケだった。そこからフォローして配信遊びに行って、リストに放り込まれて早いもので後3ヶ月で1年が経つ。今までDMなんて来た事ないからビックリだ


『会いたい……』


 デジャブなんだが……紬さんの時と同じ事になりそうだと思うのは気のせいか?


「マジでなんなんだ……」


 Vtuberのぶっ飛んだ思考に頭を痛めながら隣を見ると紬さんが寝息を立てていた。思い起こせば会いたいと言ってきたのは彼女が初めてだった。こんなアイコンを動かすしか能がないダメ人間に会いたがるだなんて……Vtuberマジで何なんだか


「どうしたもんかなぁ……」


 返事を返そうにも時間帯が時間帯だ。白葉うるが寝ている事を考えるとDMは起きてから返しても問題はないだろう。というか、考え纏まらないから明日返す







「嘘だろ……」


 早朝────目が覚めて白葉うるのDMを見てみたら……


『会いたい……』

『会いたい……』

『会いたい……』

『会いたい……』

『会いたい……』

『返事して……』

『返事して……』

『返事して……』

『返事して……』


 と連投DMが届いてて色んな意味でビックリ。冗談だと信じたいが、悲しいかなこれが現実。犬山ポチもだが、俺に会いたいとか頭おかしいだろ


「どうしたものか……」


 犬山ポチ────もとい、紬さんは完全に個人だったから「会いたい」って言われても何とも思わなかったが、白葉うるは違う。相方がいる上にサークル所属勢。彼女単体で会う分には無問題とは言わんが、問題らしい問題はない。すぐ会いに行ける距離なら。しかし、ネット上では近しい距離にいたとしてもリアルじゃ違う。俺は北海道だが、相手は東京とか別の地方に住んでる可能性は十分あり得る。だからこそ普通のオフ会を開くにも難しい部分がある。スケジュールだったり、人数だったり、住んでる場所だったりと制約が付く。俺が頭を悩ませている理由がこれだ。「会いたい」って言われても住んでる地域にもよるから会うとしたら念入りに待ち合わせしなきゃならない。紬さんの許可含めて


「ダメだよ」

「起きてたんですか……」

「うん。ダメだよ? 白葉うるさんに会いに行くのは私が許さないから」

「まだ会いに行くって言ってないんですが……」


 隣で寝てたと思ったらいつの間にか起きてるし、結論出してないのにハイライト消えるし……女というのは理解不能だ


「まだ? 私が止めなかったら会いに行くつもりだったんだ……」

「えっと……それはどう……なんでしょう……紬さんは偶々同じ地域に住んでたから簡単でしたが、白葉うるさんの場合はどこに住んでるかすら分かりませんから会うかどうかは迷うところではあります」


 ネット民と気軽に会うなってのが現在の常識。ネット上で優しかったとしても蓋開けたらとんでもない癖持ってましたとかザラだ。相手が推しの1人だったとしても会うのは相応のリスクを伴う。紬さんに会った時点で俺が言っても説得力はないけどな。他人なんかどうでもいいんだけどな


「ダメ。絶対ダメ。来駕は私の……私だけのものだから」


 紬さん独占欲強くない?


「はいはい……」


 もう何も言うまい。Vtuberとしてだけじゃなく、1人の人間としても独占欲強かったのねと受け入れる事しかできないし



 俺は後ろめたさを隠すかのように紬さんの頭をそっと撫でた。白葉うるが会いたいって言ってるのはきっと気の迷いだ。同接がなかなか増えないから気が病んでるんだ。そうじゃなきゃ俺にDMなんて送ってくるわけがない








 なんて思っていた時期が俺にもありました。あのDMから1週間────気が付けば1月も残すところ後3日。あの後ひたすら放置してたら……


「来駕は私のもの」

「違う! 来駕君はアタシの!」


 何故か修羅場になりました。始まりは3日前。痺れを切らせた白葉うるが『アシタイク カクゴシロ』とカタコトDMを送り付けてきた。さすがに俺も焦ったね。俺だけだったら構わないが、紬さんと同居してる今、家凸されるのはマズい。だが、半監禁状態だから家から出られない。白葉うるに会う事はできないってのが俺の出した結論だったし、うる本人には伝えたが、彼女は『会ってくれなきゃ自殺する』と脅迫にも似た返事を寄越してきたので仕方なく俺は北海道札幌市在住でご時世的にも会うのは難しいと遠まわしにお断りしたのだが『分かった、会いに行く』と最後にDMが来て……今に至る。メリーさんみたいに「私うる。今新千歳空港にいるの」ってな感じで徐々に徐々に近づいているぞってアピールしてくれたらよかったのだが、いきなり「私うる。今あなたが住んでる家の前にいるの」だもんなぁ……はぁ……リビングで金髪女(うる)と黒髪女(ぽち)の修羅場とか勘弁してくれよ


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」


 いきなりの家凸と繰り広げられる修羅場に溜息が止まらない。白葉うるも犬山ポチ同様俺の別垢を秒で見破ったVtuberの1人。俺が別垢でVtuberに関わった順番を時系列順に説明しよう。最初に遊び半分で白葉うるの事を「めっちゃ清楚だ!」って専用タグ付きで呟き、次に犬山ポチの雑談配信中に彼女の垢をフォローして秒でバレた。簡潔に説明すると俺の別垢を最初に知ったのは白葉うるでその次が犬山ポチ。会った順番と別垢を知った順番が逆になってるってだけに過ぎない。つか、白葉うる配信してる声と地声がまるっきり違うんだが……


「来駕を愛してるのは私だけ。貴女じゃない」

「あ? ライさんが愛してるのはアタシだけに決まってるじゃん。いい歳して勘違いは痛いよ?」

「は?」

「あ?」


 当事者を放置して火花バチバチのポチとうる。悪い、ポチの本名は紬さんって知ってるが、うるの本名は分からないんだ。ごめんよ


「逃げるか」


 俺は彼女達に気付かれないようにリビングを後にした





 部屋に戻ると俺はすぐさまパソコンを起動させた。俺の見立てが間違ってなければうるもヤンデレだろう。tubuyaitaのプロフィールには清楚芸人って書いてたが、あくまでもVtuberとしての設定。本質はヤンデレだろう。ま、いくらヤンデレでも話し掛けるなオーラ出しとけば声かけてくる事はないだろう。やる事はないが、コーディングしてる体さえ見せてれば勝手に女同士仲良くなるはずだ


「欲を言えば和解しててくれたら1番いいんだが……無理だよなぁ……」


 ヤンデレ同士が和解する確率など宝くじで1億円当てるよりも難しいが、可能なら和解してほしい。可能なら


「この先どうなるのやら……」


 先行きが果てしなく不安だが、なるようにしかならない。俺は全てを天に任せ、ネットという名の大海原へ旅立った





 ネットサーフィンを初めてから5分。紬さんと出会ってから未だかつてないくらい穏やかな時間を過ごしていた


「平和って素晴らしい……」


 ネットサーフィンと言っても大したものじゃない。Vtuberやリスナーを驚かすネタ探しだ。アイコンドキドキしてるように動かしただろ? 配信画面に雨降らせただろ? 次は何をしたものか……みたいな感じでネタ探しをしてるのだが……何したもんかなぁってところだ


「アイコン動かして配信画面に雨降らせたから次はロゴでロード画面でも作るか」


 アイコン動かしたり雨降らせたりするのが飽きたというわけではない。どちらとも誰にでもウケるわけではない。アイコンドキドキしてるように動くアニメーションは画像の形の関係で女性Vtuberにしかできないし、配信画面に雨降らせるのは「見たい」って言ってくれるVtuberにしかできない。どちらとも性別や人を選ぶ。ではロード画面はどうだろう? Vtuberは男女問わずゲーム配信してる人が大半だ。ロード画面なら人を選ぶ事はないだろう。アニメーションにもよるけどな! だがなぁ……


「どれにしたものか……」


 一言でロード画面と言っても種類は様々だ。色が変わり続けるものだったり、FPSゲーにありそうなものだったり、nowloadingの文字が流れ続けるものだったりと色々ある。どれにすっかなぁ……


「ロゴ画像の雰囲気に合わせるか……」


 考える事を放棄した俺はソースコードをコピーしてメモ帳に張り付ける作業に取り掛かった







今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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