ifルート〜アラディン編〜
もしヒロイン(沙弥)と横恋慕キャラ(アラディン)がくっついていたら。というif話。
ただし肝心のアラディンが全く出てきません…。
「はぁーーーーー、」
眼下に見える光景に、沙弥は深い溜め息をつくとそのまま窓にコツンと額を当てた。
「ちょっと~、暗い暗い。 幸せ逃げるよー」
「……地の果てまで追いかけて逃がさないわよ」
「怖っ」
ここで言う幸せとは幸福を指すのではなく、沙弥が一緒にいられるだけで幸せだと感じる相手=アラディンを指して言っているのだ。
「っていうかアラディンって本当に女遊びしてたの?」
「えー? それ聞いちゃう? 仮にも奥さんの前で言うのはちょっと……」
「それ言ったも同然だから」
やばー言っちゃったー!と全然悪びれることのないチェスターに呆れつつ、沙弥はもう一度窓の外に目を向ける。
そこには紆余曲折を経て夫婦となった夫、アラディンの姿があった。ーー若い侍女の女の子と抱き合って。
「ん~、たぶんサヤと出会う前に遊んでた子の一人だと思うよ」
「でしょうね。 あ、女の子泣いて走り去っちゃった」
「そりゃ今のアラディンはサヤ一筋だからね。『二番目でもいいの』とか言われてもそれで手ぇ出したりしないでしょ」
「以前のアラディンならそれであっさり頂いちゃってたのよね。それなのに……はぁーー、」
「だからその溜め息なんなの? なに? もう上手くいってないの? まだ新婚でしょ」
手元の書類に目を落とし仕事の片手間に話すチェスターをじろりと睨むと、沙弥は釣り上げていた目尻をへにゃりと下げ、ボソボソと呟いた。
「…………よ」
「ん? なんだって?」
「……だっ……に、な…………のよ」
「聞こえなーい」
「遊び人だったくせに、なんで私には触れてこないのよっ!」
意を決したように叫んだ沙弥の言葉にチェスターの執務室は静けさに包まれた。
「あぁぁぁ、やっぱり今のなし!」
静けさに耐えきれず沙弥が手で顔を覆ったところでチェスターの思考が戻ってきた。
「……アラディン、まだサヤを抱いてないの?」
目を丸くして訊いてくるチェスターに、沙弥はコクリと頷いた。
「ええーー! 信じられない! あのアラディンがっ!? え、なんで? 」
「そんなのこっちが訊きたいわよ!」
「ありえないって! だってあのアラディンだよ?」
「そのアラディンが私には指一本触れてこないのよ!」
「うわぁ……」
そう。一ヶ月ほど前に盛大な結婚式を行い華々しく騎士団長であるアラディンの妻となった沙弥であったが、結婚式の時に誓いのキスをした以外、夫婦らしい接触は皆無だった。
元遊び人だった夫のことだ。 女性の扱いはお手の物といったアラディンは夫婦生活もそつなくこなすだろうと思っていた。なのに蓋を開けてみれば夫婦生活どころか、ただの同居生活のような暮らしだったのだ。
「一応、恋愛結婚のつもりだったんだけどなぁ」
沙弥がこの世界に魔物と間違って召喚され、それを助けてくれたアラディンと恋に落ちての結婚。 だというのに式当日、魔獣の集団暴走が起きて初夜は流れた。その後数日は帰らず、やっと帰ってきたと思っても魔獣討伐と事後処理で疲れを見せるアラディンの休息を最優先させた結果、そのままずるずると同居人のような関係になってしまったのだ。
「あ~、男って意外と繊細だからさ。 一度タイミング失くすと次が難しいっていうか」
「遊んでた人はそういう雰囲気に持っていくのは上手だと思ってたのに」
「うん、まぁ、俺もそう思ってたけど」
というか、沙弥だってなけなしの色気を振り絞って迫ってみたりもした。結婚祝いに貰った防御力ゼロのエロ可愛いベビードールで膝に乗っても駄目だったのだ。もはや沙弥から迫る勇気はない。
「でも明日からでしょ?」
「ん?」
「休み」
「まぁ……」
結婚式翌日から休暇に入るはずだったアラディンだが、魔獣暴走によりそれが無くなったため、再度明日から休暇が与えられたのだ。
「どうなることかしらね」
「報告よろしく」
「嫌」
こんな軽口を叩いていた沙弥だったが、実は魔獣討伐の際に毒を受けその毒が抜けるまで沙弥に接触することが出来ず血の涙を流していたアラディンの身体が回復し、それに合わせた休暇が明日からだというのを沙弥が知るのは今夜の話……。
この続きをいつかムーンで書きたいです!




