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星使い アルタイル  作者: とりうみ しんや
第一章 アルタイルの旅
16/24

第16話 『出撃する三人』


 アルタイルがヌンキに弟子入りして、一週間が経とうとしていた。

 アルタイルの修行は終わった。


 夕方。

 師弟は外にいた。

 無言で立っていた。

 アルタイルが口を開く。

「一週間、ありがとうございました」

「……ああ」

「なんだか全く上達した気はしませんが。少し自信がつきました」

「……そうか」

「修行の成果は実戦で発揮したいと思います」

「頑張れよ」


 この一週間、アルタイルは様々な特訓を行った。

 実物の弓矢を使った訓練。

 新たな聖哲体の開発。

 精神修行。

 筋力の増強。

 数キロ先への買い出し。

 酔っぱらいの相手、毎晩。

 

 どれもこれといって効果は得られず、アルタイルは疲れた。

 ヌンキは話す。

「俺の休暇はもう明日で終わりだ。明日の朝にはここを出て空に戻らないと」

「はい」

「と言っても、ここに来ることは誰にも伝えていないんだがな」

「……」

「その、なんだ。……もう一日ぐらいだったら」

「師匠。ありがとうございました。私もできれば明日の朝に出発したいので、今晩も泊めさせてもらいたいのですが」

「あ、ああ、もちろん。それは構わないぜ」 


 二人は別荘に戻った。

 

 夕食の時間。

 ヌンキは酒を飲まずにいた。

 アルタイルの作った料理を、二人で黙々と食べる。

 食事をしながらヌンキが言う。

「昨日も話したけどな。君の聖哲体から放たれる矢からは、何か別の意思を感じる」


 アルタイルは、その言葉に実感がわかないといった表情。

 そして、聞き返す。

「どういう事なんでしょう?いまいち分からなくて」

「俺にも詳しくは分からないが、的を狙って放った矢が、自分の意志でその的を避けているように感じた時が何度もあった」

「矢が意思を持っている。……矢自身の意思で動いている」

「君はそう感じなかったか?」 

「うーん、特には」

「もしかしたら、それが君の特異能力に何か関係があるのかもしれないな」

「私の特異能力……」


 星使いがそれぞれに持つ特異能力。

 他の星座の星使いが持たない、使えない固有の能力の事を言う。

 常に発動する事ができるものや、聖哲体などと連動して発揮されるものなど、その種類や発動条件は様々である。

 代々受け継がれてきた能力もあれば、突如として発現するものもある。

 アルタイルの特異能力は未だに判明していない。


 ヌンキから、また喋る。

「実物の弓矢の時は何度か的に命中していたよな」

「ええ、まあ。」

「でも下手なのは変わらなかったけど」

「いっその事、全部外れてくれれば、自分は呪いでもかけられているんじゃと思えるんですけどね」

「それはともかく料理の味付けは、だいぶマシになったな」 

「急に話変わりますね。しかも美味しくなったて言ってくださいよ!」

「美味しくはない。ただし不味くもない」

「それ最初の頃と感想変わってないじゃないですか」

「ほんとだな。じゃあ、あんまり変わってないな」

「ひどいなあ」


 二人はその後も談笑しながら食事を楽しんだ。

 

 翌日の朝。

 アルタイルはヌンキよりも早く目が覚め、出発の準備を整えた。

 個室を出て居間に来る。

「ここへ来る事も、しばらくはないんだろうな」

 と、一人つぶやく。

 

 ドンドンドン!

 と、玄関のドアを強く叩く音が聞こえる。

 急に鳴ったその音に、驚くアルタイル。

 もう一度、同じように鳴る。

 どうやら来客のようだ。

 アルタイルはドアを開けた。


「あれ?ヌンキの旦那は?」

 ドアを開けた先にいたのは、アルタイルよりも背の高い一人の少年だった。

 アルタイルは答える。

「師匠ならまだ寝ていますよ」

「……君は?君も星使い?俺は獅子座のレグルス」

「初めまして。私は鷲座のアルタイルです」


 レグルス。獅子座の星使い。職位は十二星座。

 男性。年齢は17歳。髪はオレンジ色。

 服はオレンジ色と、黒。

 声は低め。

 

「へー、君がアルタイルか。それは、ちょうど良かった」

「?」

「部屋の中、入ってもいい?」

「あ、どうぞどうぞ」

 

 レグルスは「変わっていないなここも」と、言いながら居間のソファーに腰かける。

 すると、ヌンキが寝間着のまま居間に来た。

 レグルスを見たヌンキはすぐに話しかける。

「レグルスか?どうしたーこんな朝早くに」

「どうしたじゃないっすよ。命令書を届けに来たんです」


「命令書?何々?中身読んで」

 ヌンキはキッチンに向かいながら言う。

 レグルスはその命令書を開け読み始める。

 アルタイルはその様子を眺めた。


 命令の内容は、古都アーテナインの魔獣掃討作戦の内容であった。

 人員は、隊長に射手座のヌンキ。その下に、獅子座のレグルスと鷲座のアルタイル。

 またもう一人、十二星座のうち誰か一人を後から加えるとの事。

 ヌンキ、レグルス、アルタイルの三名は本日中にアーテナインに向かえとの指示もある。 


 ヌンキが水の入ったコップを片手に居間に戻ってくる。

「俺が隊長!?なんで?」

「知らないっす。陛下の命令なんだから仕方無いでしょ」

「休み明けから急にこれかよ」

「どうせここに来ていると思って、旦那がわざわざ空に戻ってくる前に来てあげたんですよ。感謝してください」

「ありがとよ。おかげで眠気も覚めたよ」 

 コップの水を飲むヌンキ。

 

 アルタイルがヌンキに言う。

「凄いですね。師匠が隊長だなんて!」

「ん……。まあ、たまたま近くにいたからじゃねーのか。俺自身こんな命令初めてだし、驚いているよ」


 レグルスがヌンキに聞く。

「さっきから気になってたんですけど、その師匠って呼び方はなんなんですか?」

「ああ、ここ最近、修行をつけてやってたんだよ」

「それで三賢者を相手に師匠を名乗っていたんですか」

「人聞きの悪い言い方するなよ!師匠と呼べだなんて一言も言ってねえし!」

「けど結果的にアルタイルがまだここにいて良かった。下手にアーテナインに向かっていたら、一人で大変な事になっていたかもしれないし」

「どういう事だ?」

「魔獣の数がかなり多いらしいっすよ。数えきれないくらいいるとか」


 アルタイルは少しぞっとする。

 レグルスが思い出したかのように言う。

「それと、この別荘は我々が前線基地として使え、との事でした」

「はあ?ここを!?ここ俺の別荘なんだけど」

「けど、そういう約束で建てたんでしょ?有事の際は連合体で使用するって」

「……確かに、そんな約束もあったような」

「ここからならアーテナインも近いし。たしか2・3キロ西に進めば街の端に出る」 

「え?そんなに近かったっけ?」

「旦那は地上に来ても酒にしか興味無いっすからね。どの町がどこにあるかも、ろくに把握していないんでしょ?」

「失礼だね!その通りだけど!」

「早く支度してくださいよ。午前中には向こうに着きたいし」

「はいはい。分かったよ。朝飯まだだろ?」

「いや食べてきましたけど」

「もう一回、食べろよ。弟子の手料理が食えるぞ」

「えー。じゃあ少しだけなら」



 アルタイルは急いで朝食の準備に取り掛かる。 

 

 その約一時間後、三人は西の古都アーテナインに向かう。

 天気は快晴。

 視界は澄んでいた。

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