表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星使い アルタイル  作者: とりうみ しんや
第一章 アルタイルの旅
10/24

第10話 『形見』

 

 レイラとアキナと昼食を食べ続けるアルタイル。

 ふと、レイラが聞く。

「その鞄ずっと背負っているけど、下ろさないの?」

 アキナも鞄を見る。

 レイラの問いに、それもそうだ、という表情でアルタイルは風呂敷に鞄を下ろした。


 レイラは改めてアルタイルに聞く。

「それにしても使い込んでるね。いつから使ってるの?」

「はい。この鞄は母の形見なんです。」

「ああ、お母さんが使ってたんだ」

「そうです。だから大分、古いんですけど」

「なんだか味があっていいよね」

「母の故郷の東の島で取れる、特殊な植物の繊維が編み込まれているとかで、丈夫なんですよ」

「植物?なんていう?」

「知らないんです。私自身、幼いころ聞いたことがあると思うんですが、忘れてしまって」

「ふぅん、そうなんだ」

「父に聞いても分からなくて。できれば東の島に直接調べに行きたかったんですが」

「その時間も無い、か」

「そうなんです」

 アルタイルは笑顔で、パンを食べる。


 今度はアルタイルがレイラに聞く。

「二人はなぜ旅をしているんですか?」

「んー?秘密の旅」

「えー?話せないんですか?」

「うそうそ。探し物の旅、だよ」

「探し物ですか」

「……そう。私たちの地元の古くから伝わる宝物だった物。とある絵画でね。とても大切な、大事な物なの」

「それって、盗まれたんですかね?それを探すためにお店を」

「うんうん、まあ大体そういうこと」


「のどが渇いた。なんか飲み物買ってくるね!」

 と、レイラは急に立ち上がり、売店に向けて走って丘を駆け下りていった。

 アキナと二人っきりになる。

「元気だね。レイラさん」

「……」

 黙々と、ゆっくりと、アキナは食べる。

「……」

「……」

 しばらく二人とも黙った。


 レイラが丘を駆け上ってきた。

 飲み物が入った長めの紙製のコップを、6個抱えている。

「またあんなに買って」

 と、アキナが呆れた様子で言う。


「あっああ!!」 

 という声と共に、5,6メートル手前でレイラが石につまづく。

 派手にこける。

 飲み物も、全てこぼれる。


「……なにしてんの」

「だ、大丈夫ですか!」

 アキナとアルタイルが立ち上がり、駆け寄る。

 レイラが両膝をついたまま叫ぶ。

「服、汚れたー!アハハ!」 

 

「……なに笑ってんの」

 アキナが更に呆れた。

 

 アルタイルが持っていたハンカチを手渡す。

「ありがとう。でも大丈夫だから」

「髪まで濡れてますよ」

「あ、本当だ。ごめんね」

 レイラはハンカチを受け取り、拭く。

 買ってきたのは、かんきつ類のジュースで、甘い香りがする。


「ん?」 

 ふとアキナが敷いてある風呂敷の方を見る。

 そこに置いてあるアルタイルの背負い鞄が妙に膨らんでいる。

 アルタイルとレイラもそれに気づく。

 膨らみ続けているようにも見える。

 アルタイルが近づいたその時。


 鞄が爆発する。

 

 ズドン!という大きな音と同時に、爆風でレイラとアキナはその場で仰向けに倒れ、少し近づいていたアルタイルは吹っ飛び、倒れて丘を転がり落ち、更に数メートル下で止まる。

 3人は何が起こったのか理解できていない。

 爆心には煙が立ち込めている。

 アルタイルが立ち上がり二人に近づく。

 レイラとアキナも急いで立ち上がり、アルタイルに走って近づく。

 

 煙が徐々に晴れる。

 食事をしていた場所には、魔獣が出現していた。

 人型、紫色の体色。赤い目。2メートル強の体長。

 高温の為か全体から湯気が出ている。


 レイラが魔獣に目線を向けたまま、言う。

「なんなのあれは!?どこから現れたの!?」

 アキナも魔獣を眺め、喋る。

「……鞄が爆発したように見えたけど」


「……母の形見が」

 と、アルタイルは茫然とする。

 そして、考える。

 なぜ、背負い鞄が爆発したのか。

 なぜ魔獣が現れたのか。

 おそらくだが、鞄の中から魔獣が爆発しながら現れたとして、それがなぜかと。

 一瞬のあいだに色々と考え、混乱した結果、アルタイルは思い出した。

「……そうだ。ギボス村で拾った、アレだ」

 

 ギボス村で鳥型の魔獣が落とした小さい赤紫色の物体。

 アルタイルはそれを小瓶に入れ、鞄の中にしまっていた。

 しまっていて忘れていた。

「アレは魔獣のフンなんかじゃなく、卵だったんだ」

 アルタイルは小声でつぶやく。


 魔獣が動く素振りは無い。

 魔獣の足元に目をやる。

 爆熱で周りの芝生が灰に変わっている。

 鞄も中身ごと焼かれ、溶けてしまったと、アルタイルは悟った。


「アルタイル!私たちはどうすればいい?」

 レイラがアルタイルに問う。

 唖然としていたアルタイルは我に返り、二人に自分の後ろにさがるよう伝え、杖の聖哲体を心から具現し、電撃の球体をすかさず魔獣に放った。

 

 一撃で腹部に直撃し、魔獣は爆散した。

 

 三人は丘を下り、レイラたちの店を開いている場所へと歩いて戻った。

 終始無言だった。


「お嬢さん達!さっき凄い音が聞こえましたけど大丈夫でした!?」

 店番をしていた傭兵のゴメースが心配する。

 ゴメースは背が高く、体つきもいかつい。薄手の鎧を身にまとっている。

「おや?その方は?」

 と、ゴメースがレイラに尋ねる。

「ああ。三賢者のアルタイル。星使いの」

「あー三賢者のー、って、ええっ!?」

「私たちの友達」

「ええええっ!?」

 驚くゴメースに、アルタイルは少し暗い表情で挨拶する。

 アキナは馬車の荷台に走った。

 

 ゴメースが話す。

「いやー驚きました!まさかお嬢さんたちが、あの三賢者様とお知り合いとは!」

「うん。さっき知り合ったの」

「さっき!?」

「そうよ」

 レイラはあっさりと答える。

 

 アキナが荷台から何かを取り出し、駆けて戻ってきた。

 そして、アルタイルにそれを差し出す。

 栗色の、背負い鞄。

 どことなくアルタイルが使っていたものと色も形も似ている。

 ただし新しい。


「これ、使って」

 と、アキナが言う。

 アルタイルは驚き、言葉に詰まる。

 その背負い鞄を手に取り、少し間を空けて答える。

「ごめん、私お金持ってないの。さっきの爆発した鞄に全部お金が入っていて」

 爆熱で全て溶けて蒸発したか、粉々に吹き飛んだことを、ここに来る直前、三人で現場を確認している。紙幣はもちろん、硬貨の破片も周囲には無かった。

 ゴメースは事情は知らないが少し察した。 


「ああ、それあげるよ。流行ってないし。どうせ売れないし」

 と、レイラが軽く言う。

 その言葉にゴメースが反応する。

「いやいや、そんな言い方無いでしょ!いい鞄じゃないですか!ねえ!?」

 

 アルタイルは微笑み、言う。

「ええ。こんな素敵な鞄を、無料で頂くなんてできません」

 レイラとゴメースは目を合わせ、黙る。

 

 アキナが微笑み、言う。

「魔獣から助けてくれたお礼だよ。ありがとう。受け取って」

 レイラとゴメースはもう一度目を合わせ、驚き、黙る。

「……いやでも、元はといえばあれは」

 アルタイルは少し困ったような苦笑いになる。


「気持ちだから。受け取らないなら捨てるぞ」

 と、アキナは今度は真顔で言う。

 

「じゃ、じゃあ喜んで頂こうかな。」

 アルタイルはその新しい鞄をもらった。

 その場で背負った。

 中身は無いので軽かった。


 別れ際、アルタイルはレイラと話す。

「本当にありがとうございました。しかも何も買わなくて、お昼までご馳走になって、申し訳ありません」

「いやいやー、そんなの気にしないでよ」

「大切な探し物、見つかるといいですね」

「へへっ!ありがと。必ず見つけるよ」


「……」

 離れていくアルタイルを、アキナは無言で見つめていた。

 ゴメースは大きく両手で手を振った。 


 アルタイルは公園を出て港町アリオンを目指す。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ