闇に生きるもの12
はっきり言って僕は、ただ心配だっただけだ。今時、魔族と言う種族が少ないと言う理由だけではないが、彼らは孤独になりがちだ。魔族の知り合いは少ないが、容姿は皆整っており魔力保持量は全種族の中でも群を抜いている。冷徹に思われがちだがただ単に感情表現が苦手というだけであり、というよりも感情の喜怒哀楽が少ない。それらを除くと我々、人族と何ら変わりはしない。
彼女、ロレーヌもその一人だろう。
見た目は僕より若く見えるが、魔族は寿命も長く見た目には反する。やはり魔族というだけあり、容姿は整っており切れ長の垂れ目がちな黄金の瞳には魔力の力強い鼓動を感じさせられる。
最初はキョロキョロと周りを見渡して、心配して声をかけたのだが実力と潜在能力はかなり高いのだろうことは分かっていた。
その実力はやはり大したものだと実感させられ、心配は僕の杞憂だったのだとひしひしと感じさせられることになった。
「それでは始めてください」
先生の掛け声と共に試験が開始かれる。先程ミシェルによって破壊されたモノと同じゴーレムが目の前に立っている。
ロレーヌはゴーレムを射抜かんばかりに見つめ静かに言葉を紡ぎだす。
「闇に潜む漆黒の風よ。闇に生きるものに暗き静かなる祝福を」
唱え終わったと同時にロレーヌの姿が消える。
試験会場にいる全員がロレーヌの姿を見つけられずキョロキョロと視線を巡らせている。
ミシェルと学院長は頭上を見上げていた。
ゴーレムの真上100mほど上空にロレーヌは佇んでいる。
ロレーヌの足元の空間が歪み、黒いねっとりとした風が収束しだし球体をかたどる。黒い球体を足に纏い急速落下を始める。
閃光が瞬いたと同時にゴーレムの胸元にロレーヌは突き刺さっていた。
「砕け散ろ!ダークエリアルインパクト!」
ロレーヌの掛け声と共にゴーレムがけたたましい爆音と共に弾け飛ぶ。石で出来た巨体のゴーレムが弾け飛ぶ光景に試験会場は静まりかえる。
ぼそっと一人の学生が言い放つ。
「青と白のストライプ柄のパンツでした!」




