4ああ、そうか。君は・・・
「これが、皆無君の過去」
希望の目からは涙が零れていた。それは、皆無の心に触れたからだ。共感できてしまったからだ。それは、既に知っていたであろうデストロイとホープも同様だった。
「なあ、希望。なんで、泣いている?」
「私は、皆無君が、感じた絶望が凄く、悲しくて辛くて、私がか・・・」
希望はこれ以上は言っては駄目だと気付き口を両手で塞いだ。でも、尚も、涙は零れていて、最初に皆無を説得しようとしていた時のような元気さは無かった。希望は何度も大きく深呼吸をして、心を落ち着かせた。
「でも、皆無君は孤立してもっと広くて大きな世界を見ていない。体感していない。だから、まだ、死ぬのは早いんじゃないかな」
希望はまるで、別人のように覇気がある声で説得を始めた。
「全部、全部、皆無君だけで完結してる。それじゃ、ダメ。もっともっと、色んな人と話してその固まった思考に新たな価値観を入れこまないとダメ。まだ、もっと広い世界を見ていないのに人生をリタイアしようとしたらダメ。そんなの、ダメだよ」
沈黙が流れた。
皆無はずっと希望の様子を見ていた。冷静に希望の言った言葉を聞きながら自分の考えていることは間違っていたのかもしれないと一瞬思った。だが、すぐに、それは、ないと考え直した。
「じゃあ、希望の過去を見せてよ」
「っ⁉」
希望は息を呑んでいた。一瞬だけ視線が泳いだ。そして、両腕を胸の下に組んで一度深呼吸をした。
「私は、私の交友関係は広かったから、きっと、今の皆無君が見たってあんまり、効果ないと思うの」
「何で?もっと広い世界を見せてよ」
「ダメ。だって、今は、全て否定的に考えてるでしょ。そんな、状態で私の過去を見てもきっと響かない。だから、まずは、皆無君の心を解してからだよ」
「百聞は一見に如かず」
「っ⁉」
皆無は希望が話している間にもずっとホープとデストロイの様子を観察していた。二人とも悲しそうな顔をして希望に視線を向けていた。希望はまた、深呼吸をした。
「でも、それは、ちゃんと受け入れる心構えがあって、初めて成立することなの。その受け入れる心がない今の皆無君に話したってきっと、ちゃんと分からない」
希望は落ち着き払って答えた。
「なあ、デストロイ、ホープ。何で、俺と希望を会わせた?」
「「っ⁉」」
ホープと希望が同時に息を呑んで動揺していた。
「それは、お前を止めるためだ」
「フン。俺を止めるため、か。デストロイ」
「そうだ。お前が死ぬのを止めたかったからだ」
「そうか」
皆無がデストロイと話している間に深呼吸をして心を落ち着かせていた希望はまた、覇気を取り戻して話し出した。
「ねえ。私と暫く一緒に遊んで見ない?」
「希望。君は人に嘘を吐けるんだろう?」
一瞬、沈黙が流れた。
「何を言ってるの?違う。やっぱり、皆無君は思考が固まってしまってる。自分の都合の良いように思考回路ができてる。私と暫く遊んで見よう。そしたら、その思考回路もきっと変わるから」
皆無はジッと希望を見た。そして、少しずつ感じた違和感を論理的に考えてパズルを嵌めるようにゆっくり分かることから考えて、希望に会ってからのことを嚙み砕いて行ってようやく気付いた。そして、思わず涙が零れて来た。
「どうしたの?もしかして、間違ってることに気付いた?」
「ああ、そうか。君は・・・、自分に嘘を吐けるんだね」
希望は一気に目から涙が零れた。必死に溜めていた涙がダムから水が零れだすように一気に流れた。そして、大声を上げて顔に両手をやって泣いた。皆無はその両腕を優しく握り、リストバンドを取った。そして、やはり、たくさんの傷跡があり、ボロボロの手首をしていた。皆無は思わず希望を抱きしめた。
「デストロイ、ホープ。希望の過去を見せろ」
12時から1時の間に15話まで更新します。




