深まる謎
ご覧いただきありがとうございます。
大雪により急に冷えこみ、夕方からコタツムリになっていました。
母「寒そうね」
私「体温が上がってこないんですよ」
部屋は暖かいんですけどね。
一回体温が下がると、なかなか戻らないので、動きが鈍くなります。変温動物ではないはずなんですが。
この日はホッカイロもあまり効かず、申し訳程度のストレッチはまったく意味がありません。
見かねた母様が、羽毛布団を持ってきてくれました。
母「これを掛けたらどうかしら」
私「お手数をおかけします」
若干震えている私に「早く掛けてあげなきゃ」と思ったらしく、慌てた母様の拳が、なぜか見事に顎へヒットしました。
私「ぐふっ」
母「ごめっ、ごめ──ぶふっ」
私「笑ってるじゃないですか。すっごくイイ角度のアッパーカットでしたけど」
母「だって、まるちゃんがそんなところに顔を置いとくからよ」
理不尽です。
私「どこに置けと? 肘辺りとか?」
母「や、やめてえぇ」
何かのツボに入ったらしく、ひとしきり笑った後。
母「──はーっ、あっつい!」
私「…………」
何でしょう、この本末転倒感。
母「ごめんね。今度はちゃんと掛けるから」
私「いえ、自分で──」
掛けますから──という言葉は、再び入った母様の拳に遮られました。
私「へぶっ」
母「…………ぶふっ」
私「……わざとですか?」
母「ちっ、違うもん! まるちゃんの顔が──」
私「首の上にしか置けませんから」
ちょっと舌を噛みましたよ。寒い上に、痛くて痛い。腕をさするべきか、顎をさするべきか、はたまた舌を確認するべきか悩みます。考えていると、いつの間にか思考があらぬ方向へと進んでいました。
──女子校出身で、護身術は習ったことがなく(本人談)、俗語もほぼ知らない(実証済)母様が、なぜアッパーカットをベストな角度で入れられたのでしょうか。しかも、2度も。ちなみに〝アッパーカット〟は、私たちが使っているのを聞いて覚えたそうです。
周囲の証言によれば昔から品行方正だったそうなので、若い頃ヤンチャしていたという説は消えます。
しかし念のため、意外な一面が見られるかもと、試しに「ああん?」と(ガラが悪そうに)言ってみて欲しいとお願いしたところ。
「あぁん?」
……なぜ、色っぽくなるんでしょうか。
ある意味想定内というか、予想外というか……。
いやぁ、まさか、我が家にフジコちゃんがいたとは……ははは。
──現実逃避はここまでにして。
〝昔とった杵柄〟でないとすると、動作に関して考えられるのは、運動能力なんですが……そういえば、学生時代はバスケ部のスタメンだったと聞いた記憶があります。いまだに反射神経が良いので、やったことのないものでも、神経回路が何らかの働きをしてベストな動きになるとか……いやいや、まさか。
思案している間に母様が頭から羽毛布団を掛けてくれたらしく、気づいた時にはいませんでした。その後、父が通りかかり、「ん? 姫だるまか。じゃあこれをやろう」と飴をひとつくれました。
お礼を言っているうちにうやむやになり、最強の呪文「母様だから」を唱えて、とりあえず今回は納得することにしました。




