選ばれた花嫁2
カエンは娘に話しかけた
「あなたは神に選ばれ、今日から私の妻になる」
「名をなんという」
娘は息も絶え絶えに
「ハナ…と申します」
と答えその直後ばったりと倒れてしまった
「リオス…驚いてしまったわね」
「姉上、私はあの異形の娘が神に選ばれた時に、この馬鹿げた花嫁の選び方は廃止になると思いました」
「だが兄上はなんの抵抗もなくあの娘を受け入れてしまった」
「リオス…お兄様がハナさんを受け入れる以上、私たちもお姉様としてお迎えしなければ」
姉上はお心が広い
こういう所が皆に愛されるのだ
私は嫌だ、あんな醜い者を王宮に入れるのは
兄上にとって神に選ばれた娘を花嫁にするのは当然のことなのだ
だか、まさかあんな異形の娘を平気で受け入れるとは!
お父様は花嫁選びのあと寝付かれてしまった
そんなにショックだったのかしら
お父様はカエン様を大事になさっていたから
それとも私が心労をおかけしているのだろうか…
気がつくと私は王宮のテントの中の寝台で寝ていた
いったい何が起こったのか?なぜ私がここにいるのか理解できない
私が目を覚ましたのに気づいた王が枕元にいらして
「そのままでいいから、自分のことを話せ」
とおっしゃった
問われるまま私は自分の生い立ちを話した
私はこの金色の髪と灰色の目で両親を殺してしまった
私は十六年前白国で生まれた
湖族の外見の特徴は黒い髪に黒い目だ
当然、私の両親も姉も黒髪に黒い目だった
私だけが金色の髪と灰色の目で生まれてきた
ずっと昔、金色の髪を持つ西の大国の人達が白国の森や朱国の西で暮らしていたことがあるらしい
もしかしたらその時混じった血が何代も先になって表れたかもしれないと私を育ててくれた森の婆さまが言っていた
私を見たショックでお母様は亡くなられた
お父様はお母様を亡くされた悲しみと世間の好奇の目に耐えられず、ご自分で命を落とされた
2つ上の姉がどうなったかは知らない
私は森の端に住む薬師の婆さまに引き取られひっそりと暮らしていた
西の大国の人達のように彫りの深い顔立ちであればまだこの金色の髪も似合ったのかもしれない
でもわたしは典型的な湖族の顔をしている
この髪の色とは限りなく不似合いなのだ
朱国に来てからは義務教育も始まり、学び舎ではやはり好奇の目にさらされ、嫌われ辛い思いをしてきた
私は婆さまが亡くなった後も収入が得られるようにと、薬師の知識を詰め込まれた
私の手や顔が、かぶれてただれているのは薬を煮詰めるとき瘴気
を浴びるからだ
私の髪がまだらなのは不安を感じるたびに掻き毟ってしまうからだ
私は朱国の西の端、白国に近いところに住んでいる
だから花嫁選びの渦の一番外側だった
そんな内容のことを王にお話した
王は私の話を聞き終わると
「ハナ、これからは神事に関わってもらうことになる」
「手は養生するように」
「髪は鳥湖の王族にとって神に通じるものだ、むしるのは許さない」
「今日はこのまま休め」
それだけ言って部屋を出ていかれた
王族?
私が?
人の価値に変わりはない
と、説く鳥湖の…
そうでないことを一番知る私が…髪の色や目の色が人と違うというだけで散々嫌われのけ者にされてきた私が、鳥湖の王の…花嫁…