馬
湖にお祈りに行った帰り道カエン様は
「ハナは馬に乗れるのか」
とお尋ねになった
実は…乗れない
馬はかなり裕福な家にしかいない
学び舎では村長様と穀物商のサジアさんの馬を借りての乗馬の授業があったのだけれど、どちらの馬も私を嫌って乗ることができなかった
何回か振り落とされ、諦めた
醜い姿を嫌ってか、それとも体に染みついた薬草の臭いを嫌ってか…
もしかしたら私の存在自体を拒否したのかもしれない
戸惑った私を見てカエン様は
「ハナにも出来ないことがあるのか」
「明日から習え」
とおっしゃった
「はい…」
私の少し渋った返事を聞いてカエン様は少し何かを考えていらしたけど、しばらくして
「ハナ、ついてこい」
とおっしゃった
そしてお付の方に少し政治所への出所が遅れることをトウゴ様に伝えるよう言いつけられた
私が連れて行かれたのは王宮の西にある馬屋だった
馬に…乗らされる…
いやだ、馬に嫌われる姿を王に見られたくない
カエン様に言われて馬番の方は一頭の葦毛の馬を連れてきた
大きい…
村長様の馬とは全然足の長さが違う
カエン様はご自分が馬に乗られてから私に手を差し出された
私は馬番の方の組んだ手に足をかけ、カエン様に引き上げられ馬に乗った
高い…
馬、怖い…
カエン様はまたがって乗ってらっしゃるけど私は服の裾が開かないので横座りでカエン様の前に乗った
手綱を握るカエン様にどうしても抱きつく形になってしまう
でも、馬は私を嫌がらなかった
一回いなないたけど
「少し町を歩いてくる」
とカエン様は馬番の方に言った
馬番のシリカは初めて醜い花嫁様を乗せるのになぜあの馬を選んだんだろうと思った
三頭いるカエン様の馬の中で一番気難しい馬だ…
馬は王宮を出て湖に通じる道を右に曲がり、大通りに出た
通りには朝市が立っていた
ハナは王にきつく抱きついていたのだけれど、馬に乗っている恐怖からそれを恥じらう余裕はなかった
道行く人が王に気づいた
そして一緒に馬に乗っているのが選ばれた花嫁だと
噂の醜い花嫁様を見ようと人々が集まってきた
王の意志による花嫁の披露であった




