その1
すいません。最近慌しいので、更新遅れてしまいました。
夜行電車を乗りつぎ、七日がかりでロジーナは蒼春院に到着した。
そびえたつ建物の圧巻に、気持ちがつぶされそうになる。ついごくりと唾を飲んだ。
数多くある外院は、マンション付きのコンビニみたいな外観をしている。四階以上の階数があって、仕事を受理する受付を一階に、二階から上は在院魔道士が住むのが通常だ。周りの色や建物のデザインなどは異なるが、大ざっぱな構造は統一されていた。ちなみにこれは決まっているわけではなく、利便性を考えた上で同じ造りになったというだけだ。
しかし、蒼春院の外観はまったく違った。魔道士院というよりも、洋館といったほうが何倍もふさわしい。ところどころに蒼春院のモチーフである竜が描かれており、色は全体的に淡い空色。縦が短いかわりに横に大きく、デザインと相成って荘厳な雰囲気を作り出していた。
その雰囲気に、ロジーナはためらいと不相応感にさいなまれる。開けなければならない扉はたぶん彼女の身長が倍あっても、余裕では入れるほどの大きな門だ。おかげで入ると決心がつくまでに、十分近くを費やすはめになる。
やっと決心が決まり、ロジーナは扉に手を当てる。取っ手のついていないそれはただ押すだけのようだが、かなり重そうだ。手に力を加えようとしたとき、唐突に背後から声をかけられた。
「院に何か用ですか?」
「す、すいません!」
反射的に謝ってしまった彼女は、謝る必要がなかったことに後から気付く。もう蒼藍なのだから、蒼春院に入ってしかるべきなのである。
しかしやはり罰が悪そうに、注意してきた相手を見た。そして目を丸くする。
そこに立っていたのは、一人の男だった。眼鏡に白シャツ、スーツという格好は全く問題ない。が、その柄に問題があった。上下ともにストライプ柄、しかも上が赤白の下が青白なのだ。せめて同じ色ならいいのだが。それだけで済むのならまだよかった。しかし加えてその男の頭には、リボンのついた黄色と白のストライプのシルクハットが乗っている。さらに絵に描いたような円形の黒いセルフレームで、異常な大きさの眼鏡までかけていた。ちなみに瞳をうかがうことはできない。どこに売っているのか、いったいどんなセンスなのかも解らない。まるでアリスのイカレ帽子屋のようだ。
あまりにも不審なその姿に、ロジーナは思わず硬直した。先ほどの発言から、この男が蒼藍の一人、みんなが言っていた「眼鏡」だと分かる。我に返った後も突然の登場と、何よりもその奇抜な姿が彼女を緊張させた。
遅れてしまったので、今回は四話上げさせていただきます