9/70
その2
「あの、黄央院から派遣されてきました、ロジーナ・エヴァンスです。よろしくお願いします」
勢いよく頭を下げた彼女を見て、眼鏡が感嘆する。
「ああ、あなたが。よく私が蒼藍だと解りましたね」
まさかここで「噂されているから」と返すことはできないだろう。しかも、これで彼が蒼藍でなかったら、もう警察に通報するしか道がない。そのため彼女は、先ほどの発言から読み取ったことにした。
「あ、そうでしたか」と、納得したのかしていないのかよく解らない返事をすると、彼はさっさと蒼春院の中に入っていった。名乗ったにも関わらず反応が悪いと、不要と言われてしまったようで、余計入りづらくなる。もともとマイナスな感情が勝っている状態では、きっとそうとう優しい言葉でなければどうあがいても傷つくだろうが。
外で立っていても仕方がないと思い直し、意を決して扉に手をかけようとする。するとそれより先に扉が開いた。
「外で何してるんですか?」
「え?入ってよかったんですか?」
いいに決まっているのだが、思わず聞き返してしまった。すると彼はきょとんとする。
「あれ?言いませんでした?」
言っていない。絶対に言っていない。そう思いながら、ロジーナは耐えて笑顔を作る。
「すみません、聞こえませんでした」




