その6
帰り道。ビルの提案で、このまま蒼春院まで奎婁で帰る事になった。原因は契約主であるロジーナにあった。
初任務に意気込んできた彼女だったが、成功後の仕打ちがこれで、青い両目に大量の涙を抱えていた。声には出していないものの、馬車の座席で器用に体育座りをしていた。彼女の隣にいるイルも、苛立ちを隠していなかった。変装していた三人は変装道具を取り、素顔をさらしている。変装を解いたといっても、ビルの奇抜な衣装はそのままだが。
ショックを隠せないロジーナに、優しくビルが話しかける。
「これが、蒼藍の仕事なんですよ」
自分に話しかけているのが解った彼女は、小さく首を動かして、彼を視界にいれた。
「望まれないところへ行って、望まれない仕事をする。こんな仕打ちもしょっちゅうです」
「・・・つらく、ないんですか?」
「つらいですよ。あなたの隣の人を見ても解ったでしょう」
ちらり。ロジーナはイルを視界に入れる。話を聞いているのかいないのか、彼はサンダルをパタパタと上下に動かしながら、一定してイライラし続けている。これをつらいというのかは、人の判断によって変わってしまうが、平気ではないことは誰でもわかる。
「私たちはもう『蒼藍』なんです。この仕事からは逃げられません」
ビルは少し寂しそうに言う。四院専属魔道士は、例外として移院ができなかった。まあ、相当問題を起こしていれば降格もあるが、めったなことでは七重宝樹への出世しか道は無い。ロジーナはこの言葉を、「蒼藍なら、このくらい普通だ」と念を押されているのだと思った。が、次の言葉でそれが違うと知る。
「でも、あなたはまだ『蒼藍』ではありません」




