その3
飛んできたアルバートは、彼女たちの前で車を止める。彼は馬使い席から降りると、すぐに馬車の扉を開けた。荷物はきちんと入っていて、荷物番を頑張っていたことが解る。
「真面目な性格で、いい天霊ですね」
「でしょ?アルバートは一番仲のいい天霊なのよ」
「ね?」と同意を求められ、アルバートはあたふたした。真面目な彼本人は、召喚者と対等の関係と認めがたいようだ。特に返事を待つ気もなかったロジーナは、ツァンファに礼を言って還す。魔力と体力の消費に、フウと息をついたロジーナにシュールが声をかける。
「リパのわりに、意外と紋持ちだな」
紋持ちとは、紋所持数の種族平均を上回っているときに使われる表現だ。魔道士全体の平均は、四個ということになっている。ロジーナの「三個」は、前例の異常に少ないリパ族の平均「二個」に比べれば多いほうだ。
ほめなさそうな人にほめられたロジーナは、得意げに腰に手を当て、胸を張った。
「まだ一個、使ってないのがあるんだけどね」
「おや、全体平均と同等とは大したものですね」
話を盗み聞きしていたビルが、シュールの背中越しに感心する。
そんなのんきな三人の前で、イルが目隠しをつけなおした。つられてビルは眼鏡、シュールは仮面を装着する。ふと振り返ると、こんなにいたのかと驚くほどの村人が、村の外に姿を現していた。
「感謝でもされるのかしら?」
「反魔道士思想の人たちが感謝してきたら、即行で逃げなければなりませんね」
ありえない話を提言したロジーナに、ビルは空想の事態を懸念した。恐怖心といってもいい。ビルの言葉を受けて、シュールとイルは身を硬くした。
一人の女性が走ってきて、兄弟を抱きしめた。彼女は兄弟の母親に違いない。村育ちのせいで見たことのなかった魔法に驚いていた兄弟は、そこで我に返った。彼らはそのまま雑多な村人のなかに引き込まれていく。




