その1
苟芒が帰ったあと、町の入り口に待機させたままのアルバートを呼ぶことにした。
遅ればせながら、天霊が滞在することに魔力の消費はない。天霊に魔力を使うのは、「召喚するとき」、「返還するとき」、「天霊の能力使用時」の三点のみだ。今回のように天霊を待機させておくだけのときは、魔力消費は微塵もない。
しかしいまさらになって気付く。
「・・・どうやって呼ぶ?」
ロジーナの質問に、イルがあんぐりと口を開ける。待機させた時点で、その後のことを考えていると思い込んでいたのだ。
「え、合言葉とかないのかよ?」
「あったとしても聞こえるわけがなかろう」
「そうですね。イル、マイナス一点です」
二人からの否定の言葉を受け、イルはむっとする。彼の考えも解らなくもないのだが、村一つはさんだ向こう側に、確かに声は届かないだろう。危険な村の中を戻るか、視覚的な合図を送るほかない。ビルはイルとシュールを見た。
「有翼二人で呼びに行きますか?」
村は危険といえど、上空を飛べば村人も手出しはできまい。そう、村にある危険とは、村人のことだ。反魔道士思想の彼らは、村が壊れるという事態が起こった以上、なにをされるかわかったものではない。そう思ったビルの提案はなかなかの名案だった。しかし。
「いやだ」
「愚問だな」
ビルの提案は、二人の感情によって一蹴される。二人で仕事に行くことはまったくないのだろうかと、ロジーナは疑問に思った。そこで彼女は思い出す。
「ちょっと待ってて」




