その1
翌朝。昨晩怒ったことを素直に謝ったロジーナは、しかしあまりよく眠れなかった。原因は、仕事にわがままを持ち出した自分への自己嫌悪。ただのわがままだけならいいのだが、周りの人を困らせたという事実が胸に刺さる。
しょぼしょぼする目を覚まそうと、彼女は身を起こす。両脇二人はまだ寝ているようで、各々好きな格好で転がっていた。目隠しも仮面もつけたまま、器用に寝ている。イルの奥にあるソファーの様子は見えない。時計を見ると、今はまだ早朝六時。十時出発と言われたにしては、少々早すぎる時間だ。
ロジーナは靴を履いて、キャリーから洋服を取り出した。昨晩の決め事で洗面所は彼女の更衣室を兼用することに決まったのだ。朝はみんなが使うため、早く起きたならさっさと着替えてしまおうと思ったわけである。
洗面所の扉をすこし開けただけで、光が洩れてきた。
「おや、おはようございます」
朝っぱらから派手なストライプ柄のスーツに身を包んだビルが、眼鏡をかけているところだった。眠気の飛んだロジーナは、遅れてビルに挨拶する。
「お、おはようございます!」
自己嫌悪を引きずった彼女とは打って変わって、昨日の謝罪で彼女の行動や発言をすべて流してくれたビルが、満面の笑みで話を続けた。
「いやぁ、いいですねぇ・・・、きちんと挨拶の返ってくる朝!」
「え?じゃあ、いつもは・・・」
「何回言っても総無視です」
よよよと泣く真似をするビルに、ロジーナは思わず笑った。彼なりに、彼女を笑わせようとしてくれたことは、しっかりと伝わったようだ。
ふいにビルは彼女の持つ衣類に気付いた。
「ああ、もう着替えるんですか?」
「はい。邪魔にならないうちに」
ビルの気遣いに、すっかり自己嫌悪の飛んだロジーナは明るく答える。すっかり元に戻ったロジーナに安心した彼は、そのまま洗面所を出ようとする。
「あ・・・」
「はい?」
何かを言いかけたロジーナに、ビルが振り返って聞き直す。するとどうやら、彼女なりに彼に対して気を遣ってくれたらしい。




