その2
「もし途中でしたらどうぞ」
「・・・着替え手伝いましょうか?」
「用が済んでたんなら、呼び止めてすみません」
まだ二回目なのに、ビルはさらりとかわされてしまった。彼女の順応力に感心しながら、ビルは洗面所を後にする。
着替えや洗面など、一通り終えたロジーナが洗面所を出ると、どこに行ったのか、ビルの姿はなかった。ふと見た彼女のベッドの両脇は、まだ熟睡中である。今なら目隠しや仮面を外せるのではないかと、ロジーナはつい考える。先ほど眼鏡を取ったビルの顔を見損ねたことを、すこし残念に思っていたところだった。イルの目隠しはずらすだけでよさそうだし、シュールの仮面も片耳を外せればあっさり取れそうだった。
起きないかどうか、ロジーナは軽く咳払いをしてみる。二人はすこし唸っただけで、ちっとも起きる気配は見られない。ロジーナは二人をよく観察してから、万一起きてしまってもあまり怒られなさそうな、イルの目隠しを狙うことにした。
ビルが帰ってきても怪しまれないように、自分のベッド側から手を伸ばす。目隠しに手が触れても、イルが起きる気配はない。ゆっくりとそれを上げようとしたその時。
バタンと、大きな音がして、ロジーナはあわてて重心を後ろに倒し、自分のベッドに座り込んだ。パタパタと音を立てて、ビルが入ってくる。
万一に備えてよかった・・・
そう、ロジーナは安堵する。もし顔がよく見えるからと、反対側に回っていては、フォローも難しかっただろう。
忙しなく歩いてきたビルは、もって来た朝食を机に置いた。それからロジーナに二人を起こすように指示する。時間はまだ午前七時。十時に出るなら、もう少し寝ていても間に合うはずだ。
「何かあったんですか?」
「対象の動きが変わったんです。すぐに出発しなければ間に合わないでしょう」
説明しながら、彼は朝食をビニール袋に詰め込んでいた。どうやら道中で食べるつもりのようだ。
話を聞いたロジーナは、あわてて二人を起こし始める。が、バタバタした音で目が覚めない二人が、そうやすやすと起きてくれるわけがない。さんざん揺らして声をかけて、それでも二人とも起きない。




