表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おばあちゃん(時々、他の家族)と孫の日常の思い出《短編集》)  作者: おうすい


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/16

ひいじいちゃんと「は行」

子どもの頃、熱を出して寝込んだことがある。


たぶん夏風邪だったと思う。


父も母も祖母も留守で、代わりに来てくれたのは、めったに会うことのない母方のひいじいちゃんだった。


母は薬のことや、りんごの置き場所なんかを慌ただしく説明すると、仕事へ出ていった。


ひいじいちゃんと、二人きりになった。


薬が効いてきたのか、苦しさはなかった。


ただ、熱のせいで頭がぼんやりしていたのだろう。


うっすら目を開けると、ひいじいちゃんが近くで竹を割いていた。


鎌のような刃物を器用に使い、黙々と竹を削っている。


何を作っているのだろうと思いながら、私はまた眠った。


しばらくして目を覚ますと、切ったりんごを差し出してくれた。


「んっ」


そう言っただけだった。


りんごを食べ終わると、今度は弓と矢を渡してくれた。


いつの間に作ったのか、さっきまで竹だったものが立派な弓矢になっていた。


熱でぼんやりしていた子どもの私には、それが魔法のように思えた。


熱も下がってきたのか、私はすっかり元気になり、さっそく弓を引いてみた。


だが、思うように飛ばない。


すると、ひいじいちゃんは首をかしげながら、


「はあ」

と言った。


もう一度やってみても飛ばない。


今度は、

「ふう」

と困ったような顔をする。


何度か繰り返し、ようやく少し飛んだ。


すると、

「へぇ」

と、うれしそうな声を出した。


うれしくなった私は、あれこれ話しかけた。


ひいじいちゃんの返事は、ほとんど「は行」で終わる。


「はあ」

「ふう」

「へぇ」

「ひっ」

「ほっ」


思い返してみても、ちゃんと会話は成立していた。


なかでも私が好きだったのは、

「ほっ」

だった。


驚いたような、何かに気づいたような、とぼけたような顔になる。


その顔がおかしくて、私は何度も話しかけた。


すると、ひいじいちゃんはそのたびに、

「ほっ」

と言ってくれた。


そうしているうちに母が帰ってきた。


ひいじいちゃんは、私の熱のことや様子を普通に話していた。


子どもの私は、それが少し不思議だった。


ぼんやりした頭で、


今度会ったら、「あ行」だけで話してもらおう。


そんなことを考えていた気がする。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ