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なんで私⁉ 野球知識皆無のJKが戦国時代で野球を広め、信長の恋女房になってしまう件  作者: ハムえっぐ
最終章【長谷川真昼最期の日、本能寺炎上編】

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エピローグ

『よくやった小娘』


 何も見えない景色の中で、センイチの声が直接脳裏に響いてくる。


「どういたしまして。どお? 最後まで英霊ボール大戦勝ち抜いた感想は?」


『多くの勝利も、手痛い敗北も、儂にとってかけがえのない思い出になったわ』


「センイチらしい感想だね」


 大勢の死を見てきた私にとっての戦国の世は、辛くなることのほうが多かったかな?

 でもみんな、一つしかない命を全身全霊で魂を輝かせて生きていった人たちばかり。


 みんなの死を無駄にしたくない、なんておこがましいセリフを吐くつもりはない。

 それでも、私は彼らが駆け抜けていった人生を決して忘れない。

 決して、絶対に、永遠に、私が短い人生を全力で走り抜けるために。


『そろそろ時間か。さらばじゃ。長谷川真昼よ』


「うん。地獄で獄卒率いて待っててね。私もいつかそこに行くから。……って! センイチから初めて名前呼ばれた気がしたんだけど!」


『ちゅうか、なんで儂が地獄にいるの確定なんじゃ! せっかくラストはお涙頂戴で締めようっちゅうのに!』


 センイチの声も、私の声も、徐々に笑い声へと変わっていく。


「あはは。湿っぽいのは無理だって。だって、私とセンイチだもん」


『じゃな。小娘はいつまで経っても小娘じゃったわ』


「じゃあね、センイチ」


 私は声の聞こえる方角に軽く手を振る。


『ああ。達者でな』


 最後に聞いたセンイチの声は、初めて聞く柔らかくて温かく、優しくて闘志を漲らせてくる音色だった。


 ***


「……ひる」


 ん~むにゃむにゃ。とても懐かしい声が聞こえてくるけど、なんで気持ちよく寝てる私の邪魔をするのかな?

 もう合戦に行く必要もないんだから、ゆっくり寝かせてよ……zzz。


「起きろ! 馬鹿妹!」


 ポカリ!


「あいったー!」


 頭頂部に猛烈な痛みを感じ、私は目が覚めた。


「ん? ここは……」


 学校の廊下じゃん。青空を映すガラス窓の群れが、ここが戦国の世じゃないのを瞬時に理解できた。


 そっか、戻ってきたんだ。令和に。私の時代に。

 あれ? でも目の前で、秀吉さんが制服着てぷんすか怒ってるぞ?

 また分裂しちゃったの、私? このままだと授業料2倍になってお父さんが倒れるんじゃね?

 まあ、それはともかく。


「秀吉さぁぁぁぁぁぁぁぁぁん! ちゃんと別れ言えなかったから会えてよかったよぉぉぉぉぉ!」


 両手を広げて抱きつく私に、再び拳骨が飛んできたのは言うまでもない。


「寝ぼけてんのか! 誰が秀吉じゃこらぁ!」


 とまあ、そんな一悶着があったものの、私は帰還して最初に再会したのはお姉ちゃんだったのでした。


「うう……いたた。そうそう、お姉ちゃん。今っていつ? 私、どんくらい寝てたの? お姉ちゃんに会ったの、ざっと100年ぶりなんだけど」


「寝てただけで100年の魔女気分かい。……今朝一緒に登校して、放課後にこうやって会ってるんだが?」


 お姉ちゃんがスマホで日付と時刻を見せてくれる。

 ちなみに、スマホの待ち受け画面はお姉ちゃんの好きなアイドルグループが映ってる。

 ……センターがお市ちゃんに似てるのは気のせいにしておこ。

 おごとくちゃんに似てるのもいたような?

 ま、まあ、この世に3人は似てる顔がいるって言うもんね。

 気のせい、気のせい。


 何はともかく、あの日、戦国の世に飛ばされた直後に戻ったんだ……私。


「ちなみに、あんたが私に言った秀吉で検索するとこれ。どこが私に似てるのかなあ?」


 お姉ちゃんがスマホをいじって再び私に見せてくる。

 皺くちゃのおじいちゃんが紺色の帽子被って、白い着物姿で手に扇子持ってて背景に屏風が映ってる絵だ。

 ん? 人間ぽく描かれてるけど目元の特徴……これって。


「豊臣秀吉……猿じゃん!」


 どう見てもあの猿だよ。小一郎とか秀長を名乗ってずっと私を支えてくれて、私と秀吉さんが融合して帰還する直前に秀吉を引き継ぐと宣言した、あの猿だよ。


「まあ、あだ名が猿だったっていうしね」


 お姉ちゃんは私の反応で、秀吉と読んだ理由はこれじゃないと勝手に納得してくれたようだ。

 よかったよかった。

 本当は秀吉さんは帰蝶様で、実は私でもあったなんて説明したら、最悪コブラツイストされかねなかったぜえ。


「そうそう、あんたがついさっき結成した帰宅部だけど……」


 ん? 何を言う気だ、お姉ちゃん。

 そうそう、とつけてからの話に碌なことないのに。


「解散させたから」


 さらっと、とんでもないことを言ってきやがったよ。

 お姉ちゃんめ、妹の努力を一瞬で水の泡にしやがって。


「はあ⁉ どうして? ホワイ? なんで? 意味がわかんない!」


 私が廊下で絶叫してると、教員室の扉が開いて胡散臭そうなおっさんが近寄ってきた。


「ホッホッホ。実はなあ、長谷川妹はんには別の部に入ってもらいたいんや。長谷川姉はんのたっての希望やで」


 扇子で口元を隠す仕草含めて前久様に似てるなあ。

 こんな先生いたっけ?


「別の部って?」


「それよ! 名古屋のボーイズのエースが、なぜか公立のここに来ちゃったの! ほら、行くよ」


 お姉ちゃんが私の手を掴んで走り出す。


「ちょっ⁉ ボーイズ? エースって単語……まさか」


 私とお姉ちゃんの去っていく背中を見ながら、先生は誰にも聞こえない声で囁く。


「……精々楽しませてくれなはれ、真昼はん……それと」


 ルンルンスキップしながら、先生は教員室に戻っていった。 

 この者の脳裏に過るのは本能寺の瓦礫を見て膝をつき、全英霊ボールが消失したことに号泣した記憶。

 徳川に亡命して五徳姫と陰謀を着々と進行させた記憶。

 北ノ庄城跡地で市姫の遺した術式を発見した記憶。

 近衛前久派の公家たちが追放され、黒幕のあのお方が権力を握ったが、羽柴秀長主催の茶会直後に急死した記憶。

 その2ヶ月後、羽柴が豊臣姓を賜り、豊臣の庇護下で悠々自適に過ごした記憶を浮かべながら。


 ——そして私は。


 マウンドでワインドアップから、誰もいないホームに投球する人を見つけ、心臓がドクンとなった。


 野球部員たちは捕球を諦めたようだ。

 凄い球だけど、あれじゃ宝の持ち腐れで使うことができないって顔をしている。


 しょうがないなあ、付き合ってあげますか。


 私は落ちていたキャッチャーミットをはめてホームでしゃがむ。


 マウンドから大きく腕を振りかぶって、全身をバネにして投げてくる白球が私の構えるミットに吸い込まれていく。


 バシーン!


「ストライーク! このまま優勝、日本一目指そっか」


 マウンドへ返球すると、彼は帽子のつばを摘んで邪悪な笑みを見せてきやがる。


「うつけが。優勝日本一はプロになってからだ。高校は甲子園制覇よ」


「そういやセンイチたちから、そんな話を聞いたことあるような?」


「恋女房として、メジャーで401勝するまで付き合ってもらう。……いや、サイ・ヤングの511勝超えまでな!」


 バシーン!


 もう1球受けながら、彼はさらっと野球の神が108の英霊ボールをばら撒いた意図と真逆のことを言い出し、私は吹き出した。


「ずっと私と?」


「当たり前だ」


 どっちもドラフト1位で指名されたらどうすんだろ?

 ……もしや高校卒業後、新球団立ち上げたりしないだろうな?


「2人とも見せつけてくれるねえ。ったく、ゴキゲンだぜぇ。でも不純異性交遊は、高校卒業まで許さないからね」


 ショートの位置で、満足そうに見ていたお姉ちゃんの声を耳にして、私たちは顔を真っ赤にしてしまう。

 そして私と彼は、声を重ねてこう宣言するのだ。


「「高校野球、プレイボールだ!」」


 ——なんで私⁉ 野球知識皆無のJKが戦国時代で野球を広め、信長の恋女房になってしまう件 完

 

完結!


読んでくれた方、あざっす。

ここから読んでまだの方、おなしゃす!

最後なので筆者が影響受けた野球漫画ベスト3を発表します!


3位 男どアホウ甲子園


いくでぇ、豆たん! はいな、あんさん!

投手と捕手の恋女房の掛け合いはこれでいいんだよ。

野球は綺麗事じゃない、暴力と政治が渦巻くこともきちんと拾った貴重な作品!


2位 ラストイニング


たくっ、ゴキゲンだぜぇ。

元詐欺師にして野球賭博のハンデ師が保釈金代わりに弱小野球部率いて甲子園を目指す!

ちなみに作中のポッポは大◯親分だけど、こいつもかなり意識してたしエピローグで登場させたかったぜぇ……さすがにアウトだからやめた。


1位 ドカベン


さっとなっかちゃーん!

捕手は壁じゃない、司令塔だということを広く浸透させた野球漫画の金字塔!

気は優しいのに配球えげつないこいつ、本当に気は優しいのか?


それでは、どこかでまた会いましょう!

あっ、評価よろしくです。

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