第46話 蛇足の丁
「久しぶりだなマイ・サン」
「うげ。いつ帰国したんだよクソ親父」
木野珈琲店を出ると、まるで待ち伏せていたかのようなタイミングでいかついジープが店の前に停まった。運転席の窓から顔を出したのは俺の親父・竜崎イオタだ。
ホビーアニメの主人公の父親めいて、ラウンド髭のいかついオッサン。自称・世界一のチョコレートマニアで、会社を起ち上げてからは美味いチョコを求め世界中あちこち飛び回ってる大きなガキ。
「ついさっきな! うちに帰るんだろう? 乗れ」
「嫌だけど?」
「はっはっは! いっちょ前に反抗期か? お父さんに逆らうと後が恐いぞ? ん?」
問答無用の威圧感。有無を言わせぬ命令口調。幼い頃はこいつのワンマンパワハラがすげー苦手だった。だが、今は違う。
「悪いけど、お断り」
あっかんべー、と舌を出して、俺は歩きだす。欲望の悪鬼ゴルディオニだのシルバーメタリックなアラクネ宇宙忍者だのに比べれば、こんな奴屁でもないわ。
「ほう? いつの間にか一端の男になったみたいじゃないか」
「親はなくとも子は育つって言うだろ」
徐行運転で車を走らせながら、並走してくる親父を睨む。
「つーか、危険だからやめい」
とりま親父が日本に滞在してる間は駅前のビジネスホテルにでも泊まってすごすかな。どうせなら朝食バイキングのあるホテルがいい。
「ディノ。つまらん意地を張らず車に乗れ。久々に親子の語らいをしようじゃないか。なあ?」
「あんたと親子の語らいなんて、一度だってしたことねーんですけど?」
「実はな。父さんお前をアメリカに連れていこうと思うんだ」
「は? アメリカ? ホワイ?」
その時である。親父のジープの後部座席から、見覚えのありすぎるまばゆい紫の光が迸った。なんだか猛烈に嫌な予感がする。
「どわあ!?」
車の窓ガラスを突き破って、1本の刀が飛び出してくる。咄嗟に∀rcで防ごうとするが。
「紫の……竹刀!?」
なんで竹刀が光るんですか!? おかしいと思いませんか!?
『ブシドリング! 丁-REX! イヨオー!』
「ぎゃー!?」
紫に輝く竹刀が俺の腹に突き刺さる。しまった! ツッコミを優先してつい防御が疎かに!?
『切腹! 開腹! 超回復! ブシドーとは恐竜と見付けたり! ブシドライバー丁! 一丁あがりよ! おあがりよ!』
ティラノサウルスをモチーフにした紫の家紋に包まれ、俺の体がスーツと装甲に包まれていく。
俺の腹を掻っ捌いた光る竹刀からお約束の知識がハラワタ経由で流れ込んできた。
スーパーバンブーソード。全部で10本ある呪われた秘宝。
10本すべての竹刀を集めた者はどんな願いも叶う、って!
「能力バトルはもうコリゴリじゃボケエ!」
スーパーバンブーソード図鑑
丁-REX 紫 ティラノサウルス 竜崎ディノ/ブシドライバー丁




