83.搾取
「冷遇されていたんですか?」
○月〇日。
「先輩、何読んでるんですか?」
興信所で、暇つぶしに電子書籍を読んでいたら、倉持が声をかけてきた。
「『モノカキ惨状日吉の日常』。」
「ああ、空堀商店街事件の。」
「熱烈なファンが集まって、電子書籍化されたんや。鎌田さん、サイトに大分恨み持ってたらしい。」
「冷遇されていたんですか?」
「うん。サイトから定期的に自分のアカウントの情報やサイトの情報を送って来ていたが、ある時気がついた。やたら、〇〇さんが□□さんを賛美しました、みたいな『お知らせ』が来る。そのサイトでは、文章を読むごとにスポンサーの広告が入る。読んだ形跡に応じて広告料がサイトに入る。自分のポイントがなかなか増えない原因は、これが大きいんじゃないか、と思った。フォロワー、つまり応援者が少なくないのに、読んだ後のポイントが少ない。何でみんな、フォロワーになったのに、読んでくれないのか?と思っていたが、自分の作品をどう扱っていたのか?と考えて、自分が逐一読むことで広告料が増えて、上位のユーザーだけが配当を受けているんじゃないか、と。自分を賛美した情報は来るものの、他のユーザーに「賛美のお知らせ」しているのか?と。カモやな。」
「読むだけで、広告が出るんですか?」
「うん。そして、里パージとかいうポイントに加算されるのは上位のユーザーが優先になっていく。換金制度は、上位のユーザーの為だけにある。全体の広告ポイント稼ぎで出来た金の分配ポイントやから。分配ポイントがないから、鎌田さんは、一生換金できん。何ポイント以上とかいう条件をクリアできんからな。特別お金に困っていなくても、依怙贔屓であって、公平やない。」
「そんなこんなで、あの事件ですか。可哀想に。」
「この作品は、作者自身の日記みたいなもんや。信憑性がある。不平を言っても取り合ってくれへんから、作品の登場人物に告発させた。フィクションやから、誰も突っ込まれへん。でも、コアなファン、つまり、数少ない『賛美する人』は分かってて、同情していたらしい。親会社が老舗でも、倒産する『根っこ』はあった。電波オークションする前の、あのテレビ局みたいにな。鎌田さんは、政権やマスコミに不満があった。そやから、小説でもエッセイでも批判していた。『憂き目を見る』わなあ、反体制は。」
「それで、何でそれを?」
「ああ。今度の依頼。会社での『えこひいき』が原因らしい。本庄先生が傍証、集めてくれって。被疑者に同情集める情報やな。」「情状酌量ですね。」
俺達がしゃべっていると、花ヤンと横ヤンが帰って来た。
「ほな、担当、決めようか。」
俺たちは、明日からの聞き込みの為の分担会議をした。
―完―
このエピソードは、「モノカキ惨状日吉の日常」のお話とリンクしています。




