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58.押し売りセールス

「〇〇社のモノですがって、言うたよな?」と、俺は優しく男に声をかけた。

「え?あ、いや、そのう・・・。」男が口籠もるのに倉持が追い打ちをかけた。

「今、ピッキングしたよね。」


 ○月〇日。

 俺は、倉持と待ち構えていた。

 インターホンが鳴った。

「〇〇社のモノですが。」

 数分経って、男は、「では、お伺いします。」と言って、門扉を開け、ピッキングをして侵入した。

「〇〇社のモノですがって、言うたよな?」と、俺は優しく男に声をかけた。

「え?あ、いや、そのう・・・。」男が口籠もるのに倉持が追い打ちをかけた。

「今、ピッキングしたよね。」

「いや、開いてたよ。」倉持は、玄関天井の防犯カメラを指さした。

「下手な言い訳で取り繕える場合か!!」と俺は怒鳴った。

「はい、逮捕。現行犯ね。」道上刑事は、にっこり笑った。

 道上刑事は、阿倍野署の窃盗係だ。横ヤンこと横山元刑事の後輩に当たる。

 道上が困っているのを見かねた横ヤンが、「囮捜査」を提言したのだ。

 俺達は「浮気調査」ということにすれば、どこにでも潜り込める。

 警察が引き揚げた後、やって来た町内会長に俺は言った。

「回覧板、廻した方がいいと思いますよ。」

 午後2時。南部興信所。所長室。

 俺と倉持が帰って来ると、所長が「ええ、退職祝い貰ったって言ってたわ。ウチに誘ったたら、好きな囲碁でも打ちに行きますわ、って言ってた。」

「そうですか。少しは退職金増えますかね?」「少しは、な。ところで、幸田。あのクスリ、効くか?」「うーん、どちらかと言えば、前の方が良かったかも。」

 倉持は、クビを傾げていた。

 実は、所長と俺は、「実験」を兼ねて芦屋グループから「精力剤」のモニターという名目で提供を受けている。

 お互い、嫁はんの「勢力」に追いつくのに難儀している。「精力」でなく、「勢力」である。

「ほな、前に戻すように言うとくわ。しかし、ウチはともかく、澄ちゃんは、産めるんか?」

「先生は、その内、妊娠促進剤もええものができるやろう、って笑ってましたけど。」

 俺は、ワコが不倫したがっているのを報告しなかった。

 ワコは、本気で「兄ちゃん、ウチが替わりに産んでもええんよ。里子に出したらええやん。」などと言う。

 辻先輩が煽っているのだ。

「明日な。中津くんの手伝いに行ってくれ。花ヤンと一緒にな。」「ダークレインボー絡みですか?」「いや、浮気調査。昔の顧客に頼み込まれたらしい。ピンチヒッターやな。」

「了解しました。」

 俺らは、何でも屋の探偵や。文句は言ワヘン。好きやんネン、この仕事。

 ―完―








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