55.交通事故
トラック同士だった。黄色の点滅時に、俺達の真向かいのトラックが直進してきて、右側から走ってきたトラックがノンストップで突っ込んだ。真向かい側のトラックは横転した。
クルマの破片が飛んできたが、幸い俺も倉持も無事や。
○月〇日。
俺と倉持が興信所に帰る途中、交通事故を目撃した。交差点や。
トラック同士だった。黄色の点滅時に、俺達の真向かいのトラックが直進してきて、右側から走ってきたトラックがノンストップで突っ込んだ。真向かい側のトラックは横転した。
クルマの破片が飛んできたが、幸い俺も倉持も無事や。
倉持は、すぐに110番した。
横から突っ込んで来たトラックのドライバーが、頭から血を流しながら、やって来た。
「お前ら、見たか?」「見ましたよ。」「黙っとけ。」「はあ?」「事故は無かったんや。」
「はあ?」「お前、はあ?しか言えんのか?」「はあ?」
ドライバーは、俺達のナンバープレートを見てから、自分のトラックをバックさせようとした。だが、エンジンがかからない。かかっても、後続車があるから簡単には出られない。
俺は、横転した車が爆発する可能性を考えたが、こちらも渋滞で簡単にバック出来ない。
白バイがやって来た。
さっき脅した男は、自分は青信号になったから前進しようとしたら、邪魔なクルマが侵入してきたと言い出した。
俺は、ドラレコと繋がる録画機からメモリーを出して、白バイ警官に差し出した。
「なんや、幸田さんかいな。便利な世の中になったな。署でコピーしたら返すわな。事務所でええかな?」「はい。」
興信所で書類仕事していると、さっきの白バイ警官がやって来た。
定年前の白髪頭。ヘルメット取ったら、ただのお爺ちゃんや。
「ご苦労さんです。」と、所長は挨拶した。
「往生際が悪いワナア。あのドライバー、わしより年上やで。仕事優先。生活かかってる。それは分かるよー。でも、交通事故やんか。ドラレコの録画でも、はっきり分かる。信号機も映像の隅に映ってるしなあ。ほな。」
「前田さん。」「あ?」「もうじき定年ですな。ご苦労さんです。」所長は、更に頭を下げた。
前田巡査が出て行くと、「ほな。幸田、倉持。疲れたやろ。今日は帰ってええで。ドラレコがあるから、聞きに来ないと思うけど、聞きに来る場合もあるからな、よろしくな。」
午後4時半。
倉持に送って貰った俺は、事故のことを澄子に話した。
今日は、店は休みや。一時的に違いないが、米を買えなかったからや。「米が一袋もない」とマスコミは報道した。
単なる品切れや。転売ヤーも躍り出たやろうけど、備蓄米は幾らでもある。全国的な傾向で、災害時に路頭に迷う人がいないように、自治体で米その他の備蓄を持ち、シェルターに保存してるんや。何も知らんと思って、マスコミは、国民を舐めすぎや。
「平成の米騒動」というのがあった。1993年のことや。記録的な冷夏が原因やと言われている。 「大正の米騒動」と呼ばれる1918年の米騒動に対して、「平成の米騒動」とも呼ばれた。それで、「令和の米騒動」やと抜かしよる真凄み。
今“米が買えない”理由は、簡単に言うと『供給と需要のバランス』や。
この前も、台風が発生した途端にルート決めてわあわあ言うてた。台風はなあ、来てみんと分からんのや。知らんのか?学生時代、居眠りばっかりしとったんか。
地震騒ぎの時に「水の買いだめ」したように、皆が「米の買いだめしたからや。
吉本知事が、「米の流通が逼迫しているのなら、備蓄米の放出すべき」と国に言ったら、農水大臣は、「需要供給や価格に大きな影響が出る」と言って断ったそうや。農水大臣は嫌いやけど、今は「端境期」でもある。もう少し待てば、「新米」が出回るんや。
「米騒動が起きた」んやない。「米騒動起きてくれ」という真凄みの「煽り」や。水でも米でも備蓄は要る、覚悟も要る。でも、わしらは、真凄みの使用人やない。
ある人に寄れば、「高齢者の代替わり」で、一気に真凄みの「煽り運転」は出来なくなる。
免許返納は、お前らの方や!!
俺は、いつの間にか、日記を書いている内、うたた寝をしていた。
澄子が、そっとタオルケットをかけてくれた。
「澄子。ええ女房や。好きやで。」と寝ぼけたふりして寝言の演技をした。
澄子は、俺を襲わず、そっと離れた。
いつの間にか、眠っていた。
起きた時は、もう朝やった。
ええニオイで起きた。卵焼きや。俺は、誰もいない部屋で、そっと呟いた。
「澄子。ええ女房や。好きやで。」
―完―
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