50.お通夜
脇田のお祖父ちゃんや。遺産相続で揉めてたとこ。俺らが行ったら、自宅で血イ流して倒れてた。救急搬送した病院で骨折もしてたと分かり、交通事故に遭ったと判断された。」「交通事故って、あんた。あそこ、道沿いちゃうよ。
○月〇日。
俺は、帰るなり、澄子を呼んだ。
「おーい。喪服出してくれ。」「え?誰か死んだん?・・・に決まってるわな。」
そう言いながら、澄子は喪服上下とネクタイとワイシャツを出して来た。
「ああ。脇田のお祖父ちゃんや。遺産相続で揉めてたとこ。俺らが行ったら、自宅で血イ流して倒れてた。救急搬送した病院で骨折もしてたと分かり、交通事故に遭ったと判断された。」「交通事故って、あんた。あそこ、道沿いちゃうよ。」
「うん。花ヤンと横ヤンが、自転車で帰ってくる脇田さんを、目撃者を見付けた。つまり、轢かれたのに、自力で帰って来たんや。」
ズボンのチャックを上げながら、俺はネクタイを受け取った。
「前に、中津さんとこの案件で、孤独死した人の話、聞いたことある。息子・娘はしょっちゅう虐待してた。熱中症で倒れた時にも、『忙しいのに呼びつけやがって』と怒ったらしい。」
「可哀想になあ。」「脇田さんは、京都大学の先生やった。小町も卒業生らしい。葬儀場で会うことになってる。倉持は出張中で間に合わんから、タクシーで行くわ。」
準備が整い、俺は、葬儀会館に行った。遺族の部屋に行くと、小町が頭から湯気出してた。
「ほとけさんの前やで。そんな相談、葬式済んでから、なんぼでも出来るやろ!」
総子は、流石にハラハラして見ている。今にも飛びかかりそうな勢いやったが、他の卒業生3人が小町を連れ出した。
「ハナ」には、「戸部チエ他卒業生一同」という大きなものが飾られていた。
総子は、俺に合図して、一緒の席に座った。
「ようある話やけどなあ。みっともないわ。せめて他人のオラヘンとこで話したらええのに。」
「お嬢も、たまには、ええこと言うな。」「たま、でっか?」「スンマヘン、社長夫人。口が滑りまして。」
軽口を言っている内、坊さん、登場。読経が始まった。
遺体はまだ解剖中や。空の棺に向かって、読経、焼香へと進んだ。
タクシーで帰る道中。総子から言い出した。
「あの子らが、いてて助かったわ。同級生。先生ナア。道端で死にたくなかったではなくて、病院に駆けつけて欲しく無かったんや。病院に運ばれてたら、助かってたかも知れんのに。」
「興信所に相談に来るのは夫婦の浮気が多いけど、先生は奥さん亡くされてから、子供らが煩く言うてくる、って相談に来てたんや。それで、所長が本庄先生に頼んで相続問題に強い弁護士さん、紹介して貰って、来月には面談の予定やったんや。」
「轢き逃げ犯は、自首してきたらしいわ。さっきメール来た。花ヤンも横ヤンも、うちの人も大阪府警、行ったわ。」
「どうする?俺らも行くか?小町に報せたいやろ?」「そやな。」
「運転手さん、悪いけど、行き先変えて。」
タクシーは、方向転換をした。
―完―
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