46.【疑念】
○月〇日。
俺は、おかしいと思っていた。素人でも、おかしいと思うことが、何故『専門家』が分からないのか。
どうやら、浦西教授の『実効再生産指数』という呪文で魔法にかかっていたようだ。
宮田先生のお仲間は、狙われると嫌やから、『表だって』は味方の様子を見せなかった。
でも、全面的に宮田先生を信頼していた。A准教授も、B准教授もC准教授も。
宮田先生は、周囲の反対を押し切って、人工ビールス作成が可能かの実験を始めた。
自分に可能なら、オマージュ株も、最初の俯瞰株も誰かが「意図的に」使ったビールスであり、自然のビールスではないことが証明される。
それが、面白くない人間達がいた。浦西は、その筆頭だった。北海道大学で名を上げた浦西は、政府が依頼した専門家文化会の大海会長、バイタリティーコードチームを抱き込み、マスコミも巻き込んで、自分の思いがママに奸計を進めた。
自然のビールスは変異株を作って、分裂世代交代をするが、その際、体を小さくして弱毒化していく。オマージュ株が出現した時、疑念を抱く者は、宮田先生だけではなかった。自然の法則に反するからだ。
感染の予告が出来るようになったのも、如実に怪しさを見せていた。
そして、那珂国の下請けだった工作は、京都大学の宮田先生を封じ込めることで完成する筈だった。宮田先生を誘拐し、半グレの息のかかった病院の旧館で、宮田先生自身が第三俯瞰株の実験台にされた。計算外、いや、予想外だったのが、派遣バイトの介護士敷島徹だった。
本来、鼻チューブは、看護師の資格がないと挿管や交換は出来ない。
看護師にやらせると、「アシ」がつく可能性があった。半グレは、徹が、かつてチンピラと付き合いがあったことを突き止め、世間に公表しない代わりにと、作業をやらせた。
大筋の所は、EITOと警察の連携で、『悪魔のネットワーク』は『砂上の楼閣』になった。
俺は、EITOと警視庁と芦屋総帥に報告書を送ると、報告書の電子ファイルは削除した。
紙データは、澄子の店に隠す。セキュリティークリアランスだ。
倉持が迎えに来た。
俺は、用心深く興信所を出た。芦屋グループ特製のセキュリティーシステムをオンにして。
―完―
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