45.【お見舞い】
幼なじみのワコ、登場回です。
○月〇日。
俺は、久しぶりに藤島病院に行き、レントゲン・診察を受けた。
「もう、大丈夫や。ひびは入ってへんし。いつも通り仕事してるんやろ?」
「はい。してます。」「ワコがな、毎晩、幸田の写真見て寝てるらしい。不倫願望は冗談やないみたいやで。」
「先生も冗談きついな。ほな呼ばれます、って訳にはいかんでしょ。相手おらんのですか?」
「おらんみたい。一種のブラコンやな。」「ブラコン?」「ブラザー・コンプレックスや。お前のこと兄ちゃん兄ちゃんって言って育ったサカイな。まあ、いつかは状況変わるやろ。」
診察を終えて俺は、病室に向かった。ベッドは3床あるが、コロニーの時に追加しただけ。実質クリニックなのに、いつか戻って来る息子の為、『病院』を維持している。他の医師は、息子に雇用を任せると言っている。
息子は、今大学病院の内科部長だ。俺より年下だが、ワコは、この兄貴のことも俺のことも『兄ちゃん』と呼ぶ。
本物の兄ちゃんが帰ってくれば、状況も変わるだろうが、何年先かな?
少し前の『浮気調査』の依頼人で、現場に踏み込んだ際に、夫の浮気相手と喧嘩して怪我を負って、臨時入院していた、天宮塔子は、元気な様子だった。
ワコとすれ違ったが、ワコは何故か俺を睨み付けた。
「ああ、幸田さん。わざわざお見舞いに?すみません。」「いやあ、『定期健診』のついでにね。どうですか?」
「明日の朝一で退院します。すっかり、お世話になって。」
「しばらく。心も体も休めて下さい。ご主人も欺されたんですよ。弁護士の先生の言う通り、取り敢えず、別居しましょう。」
「・・・はい。ゆっくり考えます。」
廊下に出て、暫くするとワコが寄って来た。
「離婚シイっって言っといたで、兄ちゃん。」「ああ。すまんな。憎まれ役で。」
「憎まれついでに、妾にしてや。」「お前、可愛い顔してエグイこと言うなよ。俺には妻子、やなかった、愛妻がおるやろうが。お前、針の先生にも言うたやろ。藤島先生にも心配かけて。」
玄関を出て行く時、また手鏡で後ろを確認した。
ワコが舌を出しているのを確認した。
やっぱりな。俺は、自分で言うのもヘンやが、もてる男やない。
冴えない中年探偵や。
俺は、ゆっくりとクルマをスタートさせた。
―完―
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