↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷姫といっしょに人探し  作者: 軽井広@北欧美少女ノベル5巻が8/25から発売!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/19

体操服の少女

 例の連続殺人事件は、とうとう六件目が発生した。

 犯罪者やその身内ばかりをターゲットにした事件。

 復讐なのか、正義感なのか、動機はわからない。が、とりあえず警察が捕まえることができていないのは確かだ。


 次の日の昼休み、警察の「無能」をあげつらう記事を和弥は読んでいた。

 目の前にある学食のカレーうどんを放置して読むほど記事に興味があるわけではない。、 そもそもカレーうどんがあまりおいしくないせいだ。

 それと智樹のこともある。

 智樹は本当に殺人事件の加害者の息子なのだろうか。

 だとすれば、智樹にとってはショックなことだろう。

 失踪の十分な理由になる。

 和弥は記事を読むのをやめて、テーブルの上にある三百円のカレーうどんに口をつけようとした。


 姫宮とは朝から話していない。

 もともとクラスで関わることは少なかったが、今日は向こうが積極的に和弥を避けているようだった。

 和弥はため息をついた。

 それにしても、学食は騒がしい。

 何百人もの中学生や高校生がいたら、当然と言えば当然だが。

 

 と、そのとき、背後に誰かがいることに和弥は気づいた。

 記事を読み始めたときには誰もいなかったはずだ。

 和弥は少し寒気がした。

 誰かが和弥をじっと見ている。

 和弥は振り返った。

 後ろに立っていたのは女子だった。

 姫宮ではない。

 彼女はいたずらっぽく笑った。誰もが心を奪われそうな素敵な表情だった。

 凍りついたような顔をした和弥の肩を彼女は、ばしばしと叩いた。


「ようやくだね。でも、もっとはやく気づいてほしかったな。あたし、待ちくたびれちゃったよ」

「東雲さん……」

「どうしたの?」

「声をかけてくれればよかったのに」

「ごめんね。なにか熱心に読んでるみたいだったからさ、邪魔しちゃ悪いかなって思ってね」

「気にしなくていいのに」

「ここに座ってもいい?」

「いいけど、クラスの人たちと食べなくてもいいの?」

「たまには、平気だよ」


 東雲は猫のように目を細めて笑い、和弥の目の前の席に腰かけた。

 目立っているのは、東雲の服装だった。


「……なんで体操服なの?」

「さっきの時間が体育だったから」 

「制服に着替えようよ。見るからに寒そうだけど」

「うーん、寒いんだけどね」


 えへへ、と照れたように東雲が笑う。

 東雲が着ているのは、どう見ても夏用の体操シャツと短パンだった。冬は、普通はジャージを着るはずだった。

 和弥はピンと来た。


「制服とジャージ、もしかして誰かに隠された?」

「えっと、うん、そんな感じ」


 もう一度、東雲はえへへと笑った。

 中等部のときには、たまにあることだった。東雲の持ち物が不自然に消えて、ときどき、それがぼろぼろになって戻ってくる。

 和弥が、東雲と話すようになったのも、それがきっかけだった。

 中等部の一年生のとき、放課後の教室で、たった一人で泣いている女の子を見かけたのだ。

 それが東雲だ。

 東雲は今よりもずっと幼い見た目だったけれど、窓から射し込んでいる夕日に照らしだされていて、とても可愛く見えた。

 そのときの東雲は、下駄箱にあった靴を隠されて、帰ることができなくなっていたらしい。


「でもね、先生には相談したくないんだ」


 そのときの東雲は泣きながらそう言った。和弥はそれを聞いて、一緒に靴を探し始めた。 でも、その日は、結局、東雲の靴は見つからなかった。そのあと、二人はどうやって学校から帰ったのだろう。和弥は思い出せなかった。

 それ以来、和弥は東雲の持ち物がなくなると、一緒に探すようになった。そして、智樹がそれに加わった

 和弥は回想するのをやめて、いま、目の前にいる東雲を見た。

 なにげなく東雲の白いシャツに視線がいく。青い下着がうっすらと透けていた。慌てて目をそらした和弥の表情の変化を、東雲は見逃さなかった。


「あ、今どこ見てたのかな、神谷くん?」

「……どこも見てない」

「そんな嘘ついてもあたしにはわかっちゃうよ」


 わざとらしく、東雲は自分の胸を指で指した。

 そして、東雲はいたずらっぽく笑った。

 和弥は顔が赤くなるのを感じた。


「ええと、寒いだろうから、とりあえず、俺の上着を着る?」

「ありがと」


 和弥はブレザーの上着を脱いで東雲に渡した。東雲は受け取るとすぐに和弥の服の袖に腕を通した。

 体操着の上にブレザーを着た東雲は、不思議な感じだった。

 和弥と目が合った東雲は、えへへ、と笑った。


「温かいね。神谷くんの体温が残ってるからかな」

「あんまりそういうことを言わないほうがいいよ」

「どうして?」

「いや、何でもない」

「ふうん」


 東雲はじっと何かを見ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。