クエスト64【巨大ゴーレム事件】
ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。
その王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。
「国王様、どうなされましたか!」
そこに勇ましい足取りで、全身甲冑の騎士が姿を現す。
「おお、騎士団長か……実はな」
御前にて直立不動に立つ騎士団長に、王は己の抱えた苦悩を。
「いや、料理もおいしくなって、流通も安定、町も美食ブームで経済が潤っておる、平和って良いモノじゃなと思うてな」
「そうですね、騎士団の中でも最近ちょっとたるんでいる雰囲気がしていますね、由々しき事態です」
「まぁたまにはこういう空気も良いじゃろ」
「いえ、こういう時を狙って、脅威は近づいてくるんです!」
「とはいえ通常の訓練はしておるんじゃろ、なら別に」
その時、部屋の扉が開けられ、伝令の兵士がやって来た。
「大変です、街道付近に巨大なゴーレムが現れたと報告が!」
「何じゃと!?」
「ほら言ったでしょ! やっぱ油断していると危険が危ないんですよ!」
「何を勝ち誇った顔をしとるんじゃ! 兵士と騎士に出撃準備を取らせるのじゃ!」
「いえ、その前に避難勧告を! 街道を通る商隊も避難させなくては!」
「こんな時に、大臣は何処に居るのじゃ!?」
王の問いかけに、伝令の兵士が答えた。
「は、大臣は一報を聞いた後に、書類をまとめて、商人組合や冒険者組合に協力の取り付けと、今後の作戦の話し合いに向かいました」
「何じゃもう出かけておったか、じゃ慌てなくても良いのう」
「いえ、王はどっしり構えて貰うのが正しんですが、やはり少し慌てた方が良いのでは」
「そういや、しっかり報告を聞いておらんかったな、どのくらいの大きさのゴーレムなんじゃ?」
王の質問に、伝令の兵士は畏まって答えた。
「は、目測ですが全高は推定40Mはあるとの事です」
「え、40、え?」
「えーっと、この城が30Mくらいなので、城より大きいですね」
「マジか、大きくても家くらいかと思ってたのう」
「私もそのくらいかと」
「魔王じゃ、魔王軍がついに攻めて来たのじゃ! 兵士と騎士に出撃準備を取らせるのじゃ!」
「いえ、その前に災害警報を! 兵士に街を見回らせて住民達を避難させなくては!」
「こんな時に大臣は何処に居るのじゃ!?」
「は、各所に応援要請をした後、魔術師組合にて緊急対策会議を行うとの事です」
「そうか、そうじゃったもう動いておったな、それで緊急対策会議にワシは?」
王の問いに、兵士は畏まって答えた。
「王様は王座に座って悠然と構えてくれたら良いとの事です」
「う、うむ」
仕方なく王は言われた通り、玉座に座りなおした。
「そうか、大臣が動いておるのじゃったな、そういえば貴族達への通達は」
「大臣が連絡済みです」
兵士が報告する。
「ここは教会にも手伝いを」
「大臣が連絡済みです」
「隣国への伝令もしないと」
「連絡済みです」
「ワシは?」
「王座に座っていてくださいとの事です」
「ワシ必要かの?」
「何を仰るのですか! 王は王城にて玉座に座ってこそ王、空席の玉座、空の城を我らに守れと申すのですか!」
「ま、まぁ必要であるのなら良いんじゃが」
「しかし、どうしましょうか。相手は40M、ゴーレムならば岩などの鉱物で構成されているはずです、私の剣撃は巨岩をも切り裂きますが、質量が大き過ぎます、剣で切れてもかすり傷程度かと」
「うちは砲兵の類もそう居らんしのう、砲弾と火薬の備蓄は?」
「足りませんね、砲弾は岩等を用いれば何とかなりますが、火薬の貯蔵はそれほどは、うちは騎兵の機動力が売りでしたからね、今から運び出すよりは、城に近づいた際に一斉砲撃を仕掛ける方が効果的でしょう」
「そうじゃ、いつぞやの巨大になる勇者に頼んでは?」
「相手は岩の塊ですからね、同じ大きさなら確実に人よりも岩の方が重くて硬いはずです、それ以上大きくなると今度はゴーレムと勇者の自重で地面そのものが崩壊しかねません」
「なるほどのう、正面からかち合うのは分が悪いか」
「……そうですね」
「…………いや、そうなるとだいぶ勝ち目無くないかワシ等?」
「そんな事はありません! それよりも気になるのは、魔王の軍勢です。巨大ゴーレムを先行させ、こちらがそっちに集中している隙に、本陣を攻められては堪りません、大臣の作戦会議が終わるまで、城の兵力を動かすのは待った方がいいでしょ」
「ギリギリじゃのう、よしまずは城の兵力を固めておくのじゃ」
「了解しました。少なくとも街道は封鎖し、見張り役と弓兵を配備しましょう、騎士団にも出兵の準備を急がせます」
そこにさらに伝令兵がやってくる。
「大変です! ゴーレムがゆっくりと動き出したそうです!」
「何じゃと!?」
その瞬間、ドォォォンと大地が遠くで震える、そんな深い振動が城に響いた。
「本当じゃ、城が揺れておる」
「何せ城より大きいですからね、直接城を狙われては防ぎようがありません」
「ううむ、どうすればよいのじゃ」
[続く]




