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放浪のレヲ  作者: 来生直紀
1/3

Ending 山の小屋にて

 険しい山の奥地にひとつの小屋があった。  

 その小屋のなかで、ふたつの人影が座っている。


「レヲ」

「なんでしょう、マスター」


 日課である修練を終えたレヲは、マスターに呼び出された。自分よりも二回りは大きな体躯を持つマスターに向き合い、レヲは用向きを尋ねた。

 するとマスターは言った。


「おめでとうございます。これで修業はすべて終わりです」

「はい、マスター。では、次に自分はなにをすればよいのでしょう?」

「世界を見てきなさい」

「世界……ですか」

「剣の業も、精霊の力を借りる術も、おまえに技術として教えることはもうなにもありません。それ以外のことは、これから自分で学んでゆきなさい。山を下り、自分の目と耳と足を使って世界と出会うことで、それが成せるでしょう」


 レヲはすこし困惑した。

 こんなことを言われるのは初めてだったからだ。


「世界には、なにがあるのでしょうか?」 

「さまざまな国や町や自然があり、そしてたくさんの《種族》がいます。おまえのような××族だけではありません。それらと出会うことで、おまえは×××を手に入れられるかもしれません」

「わかりました、マスター。では、それはいつ終わるのでしょうか?」

「終わりはありません」


 マスターはすぐに答えた。

 それから、すこしだけ間を置いて言い足した。


「いえ……。あるいは、いつか終わりが来るかもしれません。けれど、それでもよいのです。大切なのは、続けることです」

「わかりました。それがマスターの教えなら」

「ヴラムを携えてゆきなさい。ゆめゆめ、油断をしないように」

「わかりました。マスター」


 その翌日、レヲは一日かけて旅の準備を整えた。

 さらに翌日。レヲは旅立ちの朝を迎えた。

 マスターとはそれが最後の別れだった。 


「力の導きとともに、レヲ」

「力の導きとともに、マスター」


 そしてレヲは旅に出た。

 とてもとても長い、放浪の旅に。


 あるいは、いつか急に終わってしまうかもしれない旅に。




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