第七十九話 きょうこうのごたいじょう
それから間もなく、正式に西方の国々は魔王軍に降伏した。
何ヵ国かは、拒否したらしいが、あっという間に、城壁を魔法人形と死人兵に取り囲まれ、武装解除させられ、現地の将軍なんかのクーデターで、結局、降伏したらしい。
「アンジェさん。本当にこれで良かったんですか?」
私は、目の前で裸で縛られている教皇を見つめた。
先程、私に夜這いをかけてきたので、事前にリッチーのヘイシルさんにお願いしておいたトラップを発動し、こうしてうまく生け捕りにできた。
もう少ししたら、保護者が迎えに来るだろう。
「しかたなかったのよー! 今の教会の教えと、西方でのしきたりだと、私の望みは叶えられないから! だから、だから、私は帝国に降伏するしかなかったのよ!」
アンジェが慟哭するように叫ぶ。
しかし、裸で荒縄に縛られている姿で、はぁはぁ、荒い息を吐きながら絶叫しないで欲しい。
まるで、私が悪党みたいじゃないか。
・・・そうなのだ。
調べてみると、結局、アンジェ教皇が、魔王軍への降伏に傾いたがために、あれよあれよと自治派が後退し、降伏派が台頭したらしい。
「へー、そうなんですか」
「そこは、その望みとはなんですか? と聞くところじゃないの、ソニヤ?」
ちょっと恍惚そうな笑みを浮かべながらアンジェが聞いてくる。
え? 別に興味はないんだけど。
しかも、アンジェのその頬を赤らめた顔を見れば、どうせろくでもないことだとわかるし。
しかし、リッチーさん。捕縛した荒縄の形が、亀甲縛りっぽくない?
魔法の荒縄だとは聞いていたが。
「で、でも、ソニヤの頼みなら仕方ないわね。すべてしゃべるわ。どうせしゃべってもしゃべらなくても、そ、そこの鞭やろうそくで、私をめちゃくちゃにするんでしょ! しかも、そこに置いてあるバイ◯でも責めるんでしょ! さ、さぁ! 早くして!」
なんで、私がそんなことをしなくてはならないのか。
というか、そのあたりの持ち物は、貴女やリッチーさんが以前に置いていったものじゃないか、という言葉を飲み込む。
変なあえぎ声を始めたので、いたたまれなくなり、別の部屋へと移動する。
ふー、やれやれ。
「ソニヤ姫、よろしいですか?」
しばらくするとカミーナが、来客を告げた。やっとオクトーバーが到着したらしい。
「オクトーバー様。では、アンジェ様をどうかお願いいたします」
オクトーバーは、無言で頷くと奥の部屋へと、大きな箱を持って入っていった。
「離して! 離しなさいよ! 私にはやるべき事があるの! やるべき、もごもご・・・」
最後は口に何かを入れられたのか、静かになった。
がちゃり。
ドアが開き、棺桶みたいな箱をずるずると引っ張りながらオクトーバーが、死人のような顔をして出てきた。
「教皇は・・・、教皇はあなたとの逢い引き、それだけが心の支えなのです・・・」
そういって、目を伏せながら出ていった。
え・・・、そんなことを言われて、私に何をしろと。
虚しさだけが心に残った。




