第三十二話 ひぎ! きっこうしばり!
「そこにいる男だけが、我らのターゲットであったが・・・。小娘よ。我々のことを知っているからには生かしておけん。全員死んでもらう」
そういって、黒装束たちは、めいめい、獲物を取り出した。大鎌だ。
黒装束といい、大鎌といい、死神のコスプレみたいだ。
ちなみに、こいつらは、ゲーム内で、俺(ソニヤ姫)を救い出そうと、魔王に支配された城へと忍び込んでくる教会の暗殺者集団だ。
基本、魔を刈るのを生業としているサイコパスな連中だが、ゲーム内での姫から見ると、なかなかに頼もしい連中だ。
ただ、客観的には、あまりお友達にはなりたくはない人種ではある。
なお、ゲーム内では崇高な目的、かっこいい名前とは裏腹に、あっさりと魔王に瞬殺されていた。
ほら、今、目の前で行われているみたいに。
パラディンたちの首根っこをひっつかんでは、魔王様が次々に放り投げる。
一人だけ、俺の方を見て、躊躇しているヤツがいたが、そいつに向かっても、魔王は弾丸のように走っていき、あっさりと首根っこひっつかんで放り投げる。
・・・あっという間に魔王によって、パラディンさんたちが、おねんねしている。
ワンサイドゲームだ。
ただ、日頃から、魔王に対して人死にだけはダメですよ、人死にだけはダメですよ、と言い聞かせていた成果か、誰も死んではいない。
全員ちゃんと生きているのを確認して、ちょっとホッとする。
伸びている連中をカミーナが、手際よく縛り上げていく。
なんだか、その縛り方、亀甲縛りっぽくない?
「父直伝の捕縛術です」
疑問が顔に出ていたのか、カミーナが説明してくれた。
カ、カミーナの親父さんて・・・。
ま、まぁ、いいか。
そして、私は動かないパラディンさんたちの仮面を次々に剥いでいく。
若い壮健な顔立ちをしているもの、年期を感じさせるもの、色々だった。
そして、その中に一人見知った顔が。
教会本庁のオクトーバーだ。
さっき、躊躇していたヤツだ。
そうか、こいつの任務は、やっぱり堅気じゃなかったか。
多分、魔王を、追ってたんだろうなー。
でもどうして魔王を狙ったんだ?
俺の疑問が視線から伝わったのか、魔王がこちらを向き視線があう。
「俺には襲われるような心当たりがない。人違いだろう」
なんでもないことのようにさらりと言う。
魔王様。今日も鉄面皮ですね。
「それよりもアインスよ。なぜ、貴様がこいつらの素性を知っていたのだ?」
うーん。
どうやって誤魔化そうか。
・・・。
あまり良い案が浮かばない。
仕方がない。
「乙女の秘密です」
とりあえず、首を傾けながら、人差し指を口許に当てて、いたずらっぽく言ってみた。ウインクのおまけ付きだ。
なんとか、誤魔化せた、と思う。




