第二十七話 あらしのしゅうらい
「この建物はなんだ、アインス?」
「はい? あぁ、そこは、海の家ですかねー? ご飯を食べたり、休んだりするところかと」
俺と魔王の二人は、今、海水浴場を歩いている。
今日はゼクスが用事があるのと、魔王様が一般人がどんな風に海で遊んでいるのかを視察されたい、という要望があったので、俺がついていくことにした。
カミーナも護衛を志願していたが、俺の影武者として残ってもらった。
護衛は一人で十分すぎる。
しかし回りからの視線が刺さる。
男たちからは、俺の身体中へのエロい視線が。
女たちからは、俺への、嫉妬の視線が。
やばい、ここには、俺の味方がいない!
「どうしたアインス? 難しい顔をして」
「いや、なんでもないです」
とりあえず誤魔化す。
しばらくすると、魔王が、ちょっと野暮用を思い出した、とか言ってどこかへと消えてしまった。
ひー! 狼さんたちの群れに羊さんを一人で残さないでくれ!
案の定、魔王がいなくなってすぐに、俺は男どもに囲まれてしまう。
「ねー、君、超可愛いねー。今一人?」
「僕たちと一緒に遊ばない?」
チャラ男たちに、囲まれる。
これは確かにうざい。
「申し訳ありませんが、今、連れを待っておりまして」
とりあえず無難に断っておく。
ホイホイついていっても○○され、てめーら俺に気さくに話しかけてんじゃーね! と凄んでもやっぱりむりやり○○される。
どちらにしてもバッドエンド行きなので、ここは曖昧戦術だ。
見よ、この俺の処世術。
だが、チャラ男のうちの一人が俺の腕を引っ張って無理やり暗がりへと連れていこうとする。
だから、やめろ!
つい反射的に手首を返して相手の手を強引に離してしまった。
普段のカミーナとの鍛錬の成果が、こういった形で発揮されるのは、まぁ、仕方がないよね。
あ、痛ー、なんて言って、笑いながら俺の方へとにじりよってくるチャラ男。
だから、なんで、結局こういう展開になるんだよ。泣きたくなってくる。
どうやってこの場を逃げようかと、頭のなかで計算していた矢先、異変が起こった。
海岸の方から悲鳴をあげながら我先にと海水客たちが逃げ出し初めたのだ。
俺はそんな中、呆然とつっ立っていたら、そいつは、俺の目の前までやってきた。
なんてことはない、前に市場でみた、例の巨大タコだ。
ただ、前回とちょっとだけ違う。
そのタコの頭に、ちんまりとした人間が立っていること。
その、ちんまりした人間は、はっ! という気合いとともに、下に降りてきて、俺と相対した。
見た目は女の子だ。俺よりも幼いように思える。
黒髪ストレートで、和風な感じの可愛らしい風貌。
しかし着ている服がふりふりの黒ドレス。ぱっと見ゴスロリ服だな。
その女の子が俺に向かって歩いてきた。
そして、俺の目の前で、立ち止まると、指を突きつけてきた。
「お兄様に近づくこの薄汚い売女! 今日はあたしが、お前を成敗しに来てやったわ!」
え? 誰?




